119. 孤児院料理店運営計画

 孤児院の説得も終わり、侯爵様から正式なお許しをいただいて孤児院のみんなが働く食堂改め料理店を考える。


 営業時間は院長先生にも言ったけど、昼のランチタイムのみの営業。

 慣れてきたら少しだけティータイムの営業を取り入れてもいいかもしれない。

 あとは、朝食の時間帯の営業とかも。

 お得だとわかれば宿で食事を食べられない人たちが集まってくるかも。


 メニューはいくつかのセットメニューを用意するだけにする。

 当面は三種類くらいのメニューで回す。

 ただし、メニューは日替わり。

 一週間で一部はかぶってもいいけど、毎日一種類ずつは毎週一回しか出さない限定メニューを用意する。


 量は基本的に大盛り。

 この世界の人たちって基本的に健啖家なのだ。

 男性も女性もそう。

 お年寄りだってよく食べる。

 子供もたくさん食べる。

 よって、提供する食事は最初から大盛りを設定し、自己申告で量を減らせることにする。

 量を減らしたら少しだけ食事代を割り引く。


「……というところまで考えてあります。ブレッドさんとダーシーさんはどう思いますか?」


 ブレッドさんというのはエルサさんのお父さんでこのお店の元オーナー。

 これからは料理長として子供たちに料理を指導してもらう。

 ダーシーさんはエルサさんのお母さん。

 元はこのふたりでこのお店を経営していたのだ。


「……ふむ。よく考えられているな。メニューが限定されているっていうのはいい。毎日教えるにしてもレパートリーには限りがある。それに、メニューが少なければ提供する側もある程度作り置きが出来るから、すぐに料理を持って行けるな」


「本当に。忙しい昼の時間じゃありがたいサービスかもね。でも、基本大盛りっていうのは大丈夫なのかい? 食材費がかかるんじゃ」


「そこは毎日100食なら100食限定で販売するんです。セットごとに限定数を決めて販売し、売り切れたらそこで終了。こうすることで無駄な仕入れを抑えることが出来ます。それに、仕入れなくちゃいけない食材の量や仕込みをする数だって決まりますからロスは少なくなります」


「なるほど、普通は売り切れが出ないようにするが、ここではあえて売り切れてもいいようにするか。あくまで孤児院の子供たちが料理店を経営体験しているということを売りに出すわけだな?」


「そうなります。少しずるい言い方かもしれませんが、子供たちが社会体験として料理店を経営しているなら売り切れなどが出ても許されると思います。利益を多く出すのではなく、あくまで孤児院の運営の一部ですから」


「本当によく考えているね。確かにこれなら子供たちだけでも回せそうだ。それで、オープンはいつ頃を目指すんだい?」


「出来れば二週間後くらいを目安にしたいです。それまでに食材の目利きや仕込み方、配膳の方法などを教えてください」


「はっはっは! なかなか無茶を言う! だが、子供たちのやる気次第では無理じゃないな!」


「ああ! 教えるのがいまから楽しみだよ! エルサは小さい頃からあまり乗り気じゃなかったしねぇ……」


 エルサさん……。

 とりあえず、足場は固まった。

 あとは食材を仕入れて実際に調理してもらうだけだ。

 あと、食材だけど、あれも見つかったんだよね。

 上手く生かしてもらうようにお願いしよう。

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