【カクヨムコン参加作品】🏰こんなんじゃない! 王子様との婚約は? 宮殿はどこにあるの? 異世界に転移すると思ったらとんでもない所に来ちゃった。か、帰して、お家に帰して。

オカン🐷

第1話 奥多摩に集合

「こんな時間にどこへ行くの?」

「うっせえんだよ、くそばばあ」

「ちょっと、何て口の利き方。ちょっと待ちなさいリカ」


 梨花はスニーカーに足を突っ込んでかけ出した。

 公園の角を曲がると後を振り向いて、母親が追いかけて来ないことを確認し、スニーカーを履き直した。


 奥多摩行きの電車は梨花と同じ歳くらいの少女たちで溢れかえっていた。

 目的地は同じだった。

 

 ともかく電車に乗れた。安心したら急にお腹が減ってきた。

 晩ご飯食べてくれば良かった。テーブルの上には梨花の好物の唐揚げが載っていたのだ。


「リカー、何しけたツラしてるのさ」

「あっ、ユーリ、同じ電車だったんだ」

「これを逃したらイベントに間に合わないって何回も言ったよね」

「そうだったっけ」

「おまえのそういうところ嫌い」

「ごめん」

「そうやってすぐに謝るところも苛つくんだよ」


 ユーリはそれきり口をきいてくれなかった。

 気詰まりな空気が流れる。

 何とかしてユーリの機嫌をとらなくちゃ。


「この電車の女の子たち、みんな奥多摩行くんだよね」

「そうだよ、あたしが集合かければこんなもんよ」


 フフンと鼻で笑った。ユーリの機嫌が直ったみたい。

 奥多摩の駅に着くと、女の子たちが一斉に下りた。

 小さなホームが溢れかえりそう。


 湖を目指して歩く集団。

 辿りついた湖でやることは決まっていた。

 すでに先に来た人が実行していた。


 すると、拡声器を通す男性の声が聞こえてきた。


「君たち、死んでも転移も転生も出来ない。湖に入るのを止めて、お家に帰りなさい」


「ねえ、ユーリ、あの拡声器の人チョーイケメン」

「そんなんどうだっていいじゃん。それともここまで来て怖じ気づいた?」

「そんなことないけど」

「じゃあ、早く行こうよ」

 

 ユーリがリカの手を引っ張って湖の畔に向かった。

 

 ほんとのところ怖い、すごく怖い。

 やっぱり止めたい。

 止めるなんて言ったら、ユーリの鬼の顔が目に浮かぶ。

 

 ユーリの力強い手に誘われて、リカは湖に身を沈めた。



 

 


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