第2話 エリス・クライバート
メイド……さん?
目の前にはメイド服の20歳くらいの女の子。
自分の手は……白く小さい。
子供になったのか??
それよりも、挨拶してくれたんだから返さなきゃ...
「おはようございます」
「えっ?あっ!おはようございます。」
「えっと……?」
「どうか致しましたか?」
「うっ……」
頭痛とともに、エリスとしての記憶?
それが蘇ってきた。
「エリスお嬢様!大丈夫ですか?」
たしか……このメイドさんは先週から来てくれていた……アーニャさんだったよな?
「アーニャさん、大丈夫です。」
「えっ!!??」
この驚き。
無理もないだろう。
記憶に浮かび上がって来たものは、ワガママ三昧。
メイドを人として思わず、夜中であっても平気でメイドをこき使うエリスの記憶。
メイドの名前なんて呼んだこともないし、アーニャさんは最近来た人だから名前を覚えていただけ。
まさに、エリスは社畜であり、アーニャさんたちメイドは前世の俺のような待遇を受けていた訳だ。
いや、人権無視なら前世の俺より酷いだろう...
今までクビにしてきたメイドさん達も家族に仕送りをする為にがんばって、エリスに嫌がらせされたあげくに捨てられる……
あの時、見た処刑って……
未来の
うん……物凄く信憑性がありすぎる!
考え事をしていると、アーニャさんは俺の額に濡れタオルを付けてくれていた。
その手は震えている。
きっと恐る恐るやってるんだろうね。
「アーニャさん、ありがとう。もう大丈夫だよ」
「そ、そんな。私なんかにさんは必要ありません。メイドなのですから!」
「メイドさん...それもそっか。いつもありがとう」
額を抑えているアーニャの手を握ってお礼を伝えると、明らかに動揺していた。
このままだと……処刑ルートになってしまう。
もとより、俺にはエリスのような残忍な事は出来ないけど。
未来にあがらうか!
そして、今度こそ!!
俺は幸せになる。
そして、この立場でブラック体質をホワイトにしよう!
「あの……お嬢様?どこか具合でも悪いですか?」
「ううん。大丈夫よ?」
言葉遣いは10歳になるまでに染み付いた物だと思うけど、女の子口調になっているし、余程じゃない限り゛俺゛なんて言わないだろうけど、気をつけなきゃ。
ワガママ三昧の原因……
そっか...
小さい頃に母親を病気で亡くして、父親は王都で働いているから、寂しさからワガママになっていったんだっけ?
メイドに乱暴しても父親は心配するどころか、新しいメイドを送り込んでくる。
忙しさにかまけて、お金と物を与えてたら良いって思ってる人だ。
そして、エリスには激甘!
帰ってきたら、必ず一緒に寝るし。
寝てる時に頬を剃られて髭がジョリジョリして不快感があったのを思い出した……
エリスは父親の前では良い子を演じてたし。
ワンチャン、メイドの言う事じゃなく、エリスの言う事を信じてたから乱暴事件も信じていなかったのかもしれない。
はぁ……
そう考えると、国もブラック体質なんだ……
でも、まずは自分の処刑ルートを回避しなきゃ!!
「アーニャありがとう。」
思い出した事で汗だくの俺?いや、あたし?
エリスが突然、俺なんて言ったらまずいわね。
かといって、中身が40歳のおじさんが、今までのエリスのようにあたし...なんて言いたくない。
それは流石にドン引きしちゃうよね。
ここは安全策でボク……
うん!ボクっ娘になろう!!
ボクの額を拭いてくれてたアーニャにお礼を言った。
「あっ、お着替えの準備が整ってます。」
「うん」
立ち上がるとアーニャはパジャマの紐を解き出した。
「自分で着替えれるから大丈夫!」
「えっ?」
これはエリスのワガママではなく、貴族は基本的にメイドに着替えさせてもらう事が普通だ。
「そんな訳には……」
「それなら、着替えを手伝ってもらってもいい?畳んだりとかね?」
「えっ...はい。」
流石に20歳くらいで、アルバイトの学生と同い年くらいの女の子に着替えさせてもらうのは気が引ける...
てか、恥ずかしいでしょ。
しかもアーニャは女の子だし...
まぁ、ボクもこっそりお股を触って確かめたら、40年間共に過したぶら下がった物は無かった...
上着を脱ぐとペッタンコな胸は前世と変わらない。
うん……まだ10歳だしね?
未来の光景ではちゃんと膨らんでたし……
「え?」
「お嬢様どうかしました?」
「いや……」
なにこれ。
フンドシみたいなパンツ?
可愛くない……
いや、前世の欲望??
ほとんど魔法の稽古以外で外に出ることの無かったから、気付くのが遅れたけど。
この世界って遅れてる。
ヘアゴムはあるのに、パンツにゴムを使わないなんて。
40年童貞だった前世の思い描いていたこと。
その1つ。
女性は可愛い下着を付けている。
全然ダメじゃん!!
前世でやってみたかった事。
アーニャのスカートを捲ってみた!!
「えっ、お嬢様??」
布をあてがって腰から紐で結んだだけ?
40年目の奇跡。
アーニャの膨らんだ胸を鷲掴み!!
あ〜柔らかい……
「ブラジャーは?」
「ブラジャー?なんですかそれは??」
「えい!!」
「ちょっと……お嬢様……」
背中ボタンを外すと、胸は布を巻いただけ……
処刑ルート回避?
もちろん最重要事項なんだけど。
そのまえに、40年間思い描いていた女の子の下着が可愛くないなんて許されないっ!!
「アーニャ!街に買い物に行きますわよ!」
「えっ……部屋から出られるのですか?」
「うん!」
「魔法の訓練以外でお嬢様が外出するなんて...」
大人なみに魔法を使えた事でエリスは助長していた。
でもそれはエリスにとっても楽しくて。
ゆくゆくは聖女にまでなれると言われていた程……
あの夢は更に信憑性をまして行くのだった。
「アーニャいくわよ!」
「あっ、はい!」
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