処刑ルートの偽聖女に転生したようです。
めろろん
クライバート領編
第1話 佐伯天馬40歳独身です
今思えば、高校生までは普通の生活を送っていたと思う。
人の良い両親。
友達も多くは無いが居た。
男子校……だったせいで彼女はいなかったけど。
うん、男子校だったからさ。
出会いが少ないからさ。
仕方ないよね?
ただ。
高3の時に両親は事故で亡くなった。
俺が未成年だった為、保険金は一時受けとりで、親戚が代わりに受け取った。
子供だった事もあるし、両親を亡くしてお金の事なんて考えたくもなかったし。
ましてや、今後のことなんて考えている余裕もなかった。
49日を終えた頃にはやっと先のことを考えられるようになってきていた。
親戚はみんな家から遠かったこともあり、高校3年生だった俺はこのまま卒業まで学校に通う為に1人で家に住むことにした。
だが、そんな時。母さんの妹の旦那さん。
すなわち義理の叔父が家にやってきた。
「天馬……これは卒業までの生活費だ。家賃は面倒を見てやる。だけど、卒業したら自分で働いてくれな。叔父さんもそこまで余裕はないからな。」
「え……残り4ヶ月で40万。1ヶ月10万ってこと?保険金とかは??」
「保険金?そんなのあるわけないだろ!」
「え、どうして??」
「義兄さんの事を悪く言いたくないが、連帯保証人になって借金まみれだったよ。足りない分は叔父さんがなんとかするから。天馬は辛抱してくれな。」
高校生で40万。
一瞬だけ、大金に思えた。
だけど、この49日間で水光熱費や雑費を考えると俺でさえ1ヶ月10万では厳しい事はわかった。
奨学金制度があるとはいえ、現実を見せつけられた俺は大学受験を諦めた。
そして、叔父さんの事も信用出来なく、親の残してくれた保険金を奪い取られたと思い、疎遠になった。
そして、即金欲しさゆえに入社した会社は漆黒の闇の如く、長時間労働...休日なし...残業代なし。
勤怠改竄当たり前のブラック企業だった。
働いてもお金は少ししか貯まらず...
辞めるにやめられず。
30代の頃、疎遠になっていた叔父さんの訃報を聞いた。
どうやら、両親の保証人になっていた借金は想像を遥かに超えていたらしく、しかも両親が死んだ事を聞いて借金を押し付けられたようだった。
叔父さんの死因は過労。
俺の代わりに働いて返してくれていたようだった。
俺は今更、親戚の家に顔を出す事も出来ず。
貯めたお金だけは全て香典で残された親族に渡す事にした。
それもあって40歳になるまで、ブラック企業から抜け出す事はできなかった。
必死に働いて。
彼女いない歴=年齢
童貞を貫いた40年間。
それはある日、突然終わりを告げた。
「店長……顔色悪いですよ?閉店したんで、あとは任せて帰ってください!」
「あ...すまない。体調が悪いから悪いけど帰らせてもらうわ」
「いつも無理してるんですから!たまには私たちでがんばりますよ!そのかわり、残業は許してくださいねっ!」
学生のアルバイト達が良い子達ばかりでサイクルしていたから、この環境でも耐えられた。
良い子達だから。ブラックの側面を感じさせたくなくて頑張った。
だけど、その日はやけに身体が重く。
呼吸も浅かった。
そして。
何も無い部屋に帰ってきてベッドに倒れ込むと、急激な胸の痛みに襲われた。
「あ……やばい」
俺の瞼は閉じられて、暗闇の中に吸い込まれて行った。
あ〜死んだのか……
まぁ未練はないや。
……
暗闇の中を駆け巡る感覚に襲われ、1つの光が漏れている場所に向かっているのがわかった。
「これが……天国への入口なのか?」
その光の中へ吸い込まれると、頭がガクッとなり、目を開けると、大勢の人々がこっちを見ていた。
なんだ??
ここはどこだ?
こいつらは誰だ??
「良くも騙したな!偽聖女めっ!!」
「聖女を語るとは神への冒涜!死ね!」
「「「しね!しね!しね!しね!しね!!」」」
なんだこれは!?
痛みを感じた胸に目を向けると、衣服がはだけた胸は膨らんでる??おっぱい??
膨らみは兵士によって棒で押し潰され、シルバーの髪の毛が垂れ下がっていた。
俺の髪の毛か?
なんで??
これは……転生??
まさかな??
「これより偽聖女エリスの処刑を行う!」
「え??なんで??」
「それは貴様がよく分かっているだろ!民衆を騙し私利私欲に走った偽物め!!」
大剣に映された俺は……
女??
TS転生ってやつ??
てか、この状況って!!
訳の分からぬまま、その大剣は俺の首を目掛けて振られた。
そして、再び暗闇に吸い込まれた。
は??
転生して即死??
俺の人生って……
だが、激しい頭痛に襲われた。
うっ……
な...なんだ??
「エリスお嬢様。おはようございます。」
えっ?誰??
って、エリスって!!
さっきの記憶で呼ばれてた女だよな。
俺は処刑される運命なのか??
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