闇魔法士の聖女
るいす
第1話 異世界召喚
私、倉井佳代子は医者だ。しかも年中忙しいとされる救急救命医師だ。そんな私が宿直でたった今、死の間際をさまよっていた青年の命を救ったところだ。コーヒーでも飲んで落ち着こうかと思っていると地面に何やら不可思議な模様が浮かんだ。
私はそれに吸い込まれていった。
気づけば私は吸い込まれていった地面と同じ模様、しかし、全く違う地面に座り込んでいた。
「よくぞいらっしゃいました。聖女様。我が国は謎の疫病で苦しんでおりまして、どうかあなた様の聖魔法で国を救っていただけないでしょうか」
「すみません。専門外です」
私の周りを取り囲んでいる騎士姿の人も、私にお願いしてきた王らしき人物も、その近くで立派な服を着た貴族たらんとした人たちも全員口をあんぐり開けて固まっている。
しかし、考えても見てほしい。救急救命医師が疫病の特効薬など作るだろうか。とても才能にあふれた人物ならもしかしたらあるかもしれないが、それはないだろう。それに魔法という言葉、私の国にはなかったものなのだから使えるはずがない。そんな思考をしていると部屋の中に1人の女性が入ってきた。
「はぁ~い。リクセンベルク王国の国王様。あなたは契約違反で私の弟子を使って異世界召喚を行いましたね。この契約書にしたがって弟子は私のもとへ帰還。そして、王妃様を差し出してもらいますよ」
「待ってくれ。これは国を救うための最後の手段だったのだ。それに妻はその流行り病で亡くなってしまった。私には其方に差し出すものはない」
その言葉と同時に騎士たちが女性に対して剣を向けた。
「それならこの子をもらっていくわ。この子、闇魔法に適正があるようだし私が育ててあげちゃう」
そういうと何らかの力で私の体は持ち上げられ、一瞬にして部屋から姿を消した。
そして気づけば森の中、私をさらった女性と2人きりになってしまった。
「さて、召喚されたあなたはこの世界になぜ呼ばれたのかしら?」
「気づいたらあそこにいました」
私は端的に答える。
「え?神にあったり、何か能力をもらったりは?」
「してません」
女性は手を額に当て「あちゃ~、はずれか~」と声に出した。
流石にいきなり外れ扱いされたことにむっとした。
「それなら元の世界に返してもらえませんか」
ん?元の世界?
「ああ、ここがあなたのいたところとは別の世界なことには気づいているのね」
そう言った女性の瞳の色は先ほどまで青色だったのだが今は金色に輝いている。
「ふむ。あなたに闇魔法と契約魔法の指南をしてあげる。そのあとは一般的な街まで送るから好きに生きなさい。あなたには何の使命も架されていないようだから」
ということで私は異世界召喚された。
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