a comfortable space

アレノアザミ

a comfortable space

霧がはれ蜘蛛と蝶とがつがわれて人類はもう絶滅している


そのひとは五月みたいな温度だった 芝生に光るゴーフルの缶


望み通りずっと真夜中にしてやった10年前はやってたガスト


そしてまたひとつの星が冷えていく目の奥にある硝子が痛む


グラタンを箸でお皿に取り分ける時にだけ発生する神話


ごみ箱を消した数だけ東京はへびつかい座になっていってる


クランクをもう曲がれない近未来もっと素敵なはずだったのに


人類の営みに倦むホテルにて新たな元素は発見された


夢のようにみだらな衛星軌道上 わたしの場所はそこにだけある


「日食に興味がないの」「わかる」わかるけど一応 うえを見てみる


きのうまできみはわたしのものだったカモノハシにも処女膜がある


三月に電気毛布を片づけて想像イマジンなんか じゅうぶんにした


ここにいて 祈りにも似たひとり言。すごいレンズをヨドバシで買う


きみにした左手の話はきっとガニメデあたりをさまよっている


すみずみがダークマターで満たされて(西荻窪には全部あるのに……)


地下鉄を降りて地上に出てみたら星になれない人たちがいた


なみなみとコーヒーを注ぎ、またひとつ街にブラックホールを穿つ


月のようなところに行けるロケットをきっとホンダが作ってくれる


おぞましきあの熱を思い出しながらやっていくんだ。俺もあなたも


鍵をさし右に回せば閉じる左に回せば開く 遥けき宇宙

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