新世界大戦

ツンドラ

第0話

――――――誰かが『漫画やゲームの世界が現実になる』と言った。


――――――誰かが『世界はAIによって支配されてしまう』と言った。


 どちらの言葉が現実になったのかは分からない、或いはどちらも現実になったのかも。

 ただ少なくとも、人類はここ最近で大きく変容を遂げた。

 それが良いものなのか悪いものなのかは、今となって意味の無い問いかけだっただろう。


 世界など、人類は常に変化をしていくものなのだから――――――


『さあ、始まりました!第69回新世界大戦決勝戦!相対するは今大会を圧倒的な戦績で駆け抜けてきた【血竜姫スカーレット】イテラ・メル=オーリア!そして――――――‼』


 雲一つない青空に包まれた神殿の中、二人の女性が衝突する。

 片や黒髪に巨大な鎌、身体中を覆う鱗に二対の角、対する銀髪の女性は一振りの大剣と背中に二対の天使の羽。

 凡そ人間の姿とは思えない二人は流れるアナウンスを余所に大地を蹴ると、黒髪の女性は振り下ろされる大剣を躱しながら踊るように鎌を振るい、対する銀髪の女性は鎌を打ち払いながら大きく飛び、上空から黒髪の女性を叩き下ろす。

 その威力は、徐々に削られていく足場と砕かれていく柱から分かるだろう。

 戦況が動いたのは、銀髪の女性の周囲から無数の羽が撃ち出された時だった。


『――――――‼』


 黒髪の女性の身体が、数十メートルは有ろうかという巨大な竜に代わる。

 迫る羽を尾の一薙ぎで打ち払い、直後飛び上がった竜が極大の光線を放ち、女性もそれを躱すように崩れ落ちる大地を蹴り、高速で飛び上がる。

 空を焼き焦がす竜と光の天使、その異様は何も知らない者が見たなら、世界の終わりとすら勘違いするだろう。

 既に先の一撃によって地面は無い。

 女性は迫る攻撃を打ち払いながら大剣で斬り返し、直後一筋の光の槍が竜の片翼に風穴を開け、同時に大きく開かれた咢が天使の片翼を喰いちぎる。

 堕ちたのはほぼ同時。


 二人の遥か下には、巨大な大地が広がっていた。


「終わりだよ、イテラ」

「あら、まだまだ、ここからが本番よ。暁――――――」

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