尽くしたがりな幼馴染ならどこまでしてくれるのか試してみた

本町かまくら

本編


 俺の幼馴染、美波はなんでもしてくれる。


「ちょっと肩凝ったな」


「マッサージしようか?」


「いいのか?」


「もちろん、ゆーくんのためなら」


 むしろ自ら名乗り上げてくるほどで、奉仕精神の塊みたいな奴だ。


 もはや俺の専属メイドである。


「あ、そこそこ」


「これくらいの強さでいい?」


 美波が俺の背中に跨って、背中をぐいぐいと押す。


「完璧。さすがは美波だな」


「えへへ~」


 へにょりと口を緩ます美波。


 美波は俺の要求に応えることが好きなのだ。


「(ほんと、なんでもしてくれるよなぁ)」


 幼い頃からそうなのだ。


「よいしょ、よいしょ……」


 ゆるっとした茶色の髪が揺れる。


「ゆーくん気持ちいい?」


「めっちゃ気持ちいいよ」


「ふふっ、嬉しいなぁ」


 非力な美波だが精いっぱいやってくれており、それがちょうどいい塩梅になっていた。


 これこれ。


「よいしょ、よい……きゃっ!」


 手を滑らせ、俺の背中に美波の体が密着する。


「うほっ!!」


 背中に伝わる、柔らかな感触。


 こ、これは……OPPAI⁈


「いたた~……ご、ごめんねゆーくん」


「き、気にすんなよ」


 ちょっと待て⁈


 こいつ、いつの間にこんなに成長してたんだ⁈


 デカい、しかもいい匂いするしなんかヤバい。


 そういえばこいつ……よく見なくてもめちゃくちゃ可愛くないか⁈


「じゃあ、マッサージ続けるね」


「お、おう。よろしく」


 急に目覚めた性の衝動。


 今までなんとも思っていなかった美波を急に意識するようになってしまった。


「(なんか急に今の状況がドキドキしてきたぞ⁈ 何か色々密着してるし…)」


「あれ? なんかゆーくん、お耳真っ赤だよ?」


「そ、そんなことないわ! で、デフォルトで赤いんだよ俺は!」


「そ、そうだっけ? ゆーくんも変わっていくんだねぇ」


「お、おうよ。成長期だかんな」


「だねぇ」


 おっとりとした美波の口調にすらもはやときめいてしまう。


「寒くなってきたね」


「だな。風邪ひかないようにしないとな……」


 何気ない会話がこんなにも楽しい。


 これが恋って奴なのか⁈ ←(初恋)


「私にできることあったら言ってね。ゆーくんのためならなんでもしちゃうから」


「お、おう」


 いつものなんでも発言が妙にドキリとする。


 なんでも……。


 く、クソ……えっちなことがしたい!!!


 急に美波とえっちなことがしたくなってきた!!!


 ……いや待てよ、美波はほんとに何でもしてくれる奴だ。


 今まで俺の頼みを断ったことが一度もない。


 ……もしかして、えっちなことお願いしたらしてくれるのでは?


「(い、いや、何言ってんだ俺は! そんなことして、嫌がられたら……)」


 ちらりと美波の顔を見る。


 美波は何でも許してくれちゃいそうな顔で、鼻歌を口ずさんでいた。


「(……いや、これはイケるのでは⁈ ゴクリ)」


「な、なぁ美波。は、ハグしないか?」


「は、ハグ⁈ ……別にいいけど」


「い、いいのか⁈」


「小っちゃい頃はよくしてたし、全然いいよ!」


「じゃ、じゃあ……」


 美波と向かい合い、美波の背中に手を回す。


「(な、なんかすっげぇやわらけぇ! どこ触ってもふにふにだし、生暖かくてなんか幸せだ……)」


「ゆーくんは寂しがり屋なんだねぇ。ふふっ、可愛い」


「お、おう」


 しばらくハグし、自然と離れる。


「まだお願い、聞いてくれるか?」


「うんっ、いいよ!」


「じゃ、じゃあ……ちゅーしようぜ」


「ちゅ、ちゅー⁈」


 顔を真っ赤にする美波。


 あわあわと唇を震わせている。


「(さすがに無理、か。ハグとは全然程度が違うしな……)」


「……い、いいよ?」


「え、いいの⁈」


「……ゆ、ゆーくんなら。で、でもほっぺだよ! ……ほっぺで我慢できる?」


「十分です!!」


「じゃ、じゃあ……目瞑って?」


「お、おう」


 目を瞑って、美波の気配を感じ取る。


 ゆっくりと体を俺の方に摺り寄せ、ちゅっと優しく美波の唇が頬に触れた。


「ど、どう?」


「さ、最高です!!」


「そ、そっか。ならよかった……えへへ」


 恥じらいを誤魔化すように頬を掻く。


「(な、なんかすっげぇ嬉しそうなんですけど⁈ これ、まだまだいけるんじゃないか⁈)」


 美波がちらりと時計に目をやる。


「あっ、もうこんな時間だ。そろそろ帰ってお風呂入らないと……」


「ちょっと待て美波」


「どうしたの?」


「……実は俺、少し腕が痛くて」


「そ、そうなの⁈ それは大変だ! きゅ、救急車⁈ 今すぐ救急車呼ばないとっ!」


「安心しろそれは大丈夫だ。た、たぶん……明日? には直るから」


 流石に苦し紛れの言い訳すぎるか……。


「そ、そう? ゆーくんが言うならいいけど」


 幼馴染がアホでよかった。


「それで、体を洗うのが大変なんだ。だから……背中、流してくれないか?」


 俺の言葉に目を丸くさせる美波。


 さすがに踏み込み過ぎたかもしれない。

 

 冗談でしたって言って、何もなかったことにしないと……。


「…………うん、いいよ。恥ずかしいけど、ゆーくんのためなら」


「ま、マジですかっ⁈」


「う、うん。しょうがないもんね、体洗うの大変なんだし」


 ――というわけで。


「大丈夫? 痛くない?」


「あぁ、むしろ最高だ」


「変な反応しないでよぉ~」


 美波に体を洗ってもらっていた。

 

 美波はバスタオルを一枚体に巻き付けただけ。


 破壊力が半端ない。


「なんかゆーくんとお風呂に入るの久しぶりだなぁ」


「だな。もう高校生だしな」


「だねぇ」


 エロすぎる体になった幼馴染と一緒に入浴したらとんでもないからな。


 まぁ今してるんだけど。


「(お風呂もいけるなら、この調子でもっといけるんじゃないか⁈)」


「えへ、えへへへ」


「ゆ、ゆーくん? 笑い方が変だよ?」


「す、すまん! 何でもない」


 危ない危ない。

 

 想像するだけで思わずにやけてしまった。

 

 この際だからどんどんいってみよう。


 体をしっかりと洗ってもらい、風呂から上がる。

 

 尽くしたがりな幼馴染にドライヤーをしてもらい、気分は最高調だ。


「じゃあ私はそろそろ帰ろうかな」


「――それなんだが、今日は一緒に寝ないか?」


「へ、へ⁈ い、一緒に寝る⁈」


「あぁ。最近寝つきが悪くて。美波がいてくれたら、大丈夫だと思うんだ」


「で、でもそれはさすがに……」


 やはり一緒に寝ることにかなりの抵抗があるらしい。


 そりゃそうだ。


 男女が同じ布団で寝るというのは小学生の頃とは意味が変わってくる。


 ただ俺は知っている。


 美波は押しにめっぽう弱いことを。


「お願いだ、美波。俺は美波と寝たいんだ」


「っ⁈ ゆ、ゆーくん……そ、そこまで言うなら」


「美波……!」


 いけた。


「じゃあ支度してまた来るね」


「あぁ!」


 十分後。


「じゃあ……寝よっか」


「うん!」


 顔を真っ赤にした美波が枕を持って部屋に来た。

 

 どこか落ち着きがない様子だ。


「どうした美波。もじもじして」


「い、いや! べ、別に……」


「そうか。もう遅いし、そろそろ寝るか」


「う、うん! そうだね。じゃあ、お邪魔するね」


 美波が俺のベッドに乗り、布団に入る。

 

 その後に続いて俺も入った。


「狭くないか?」


「大丈夫だよ!」


「そりゃよかった」


 この幼馴染。結局俺の要求に全部答えてくれた。


 本当に何でもしてくれるみたいだ。


 それも恥じらいながら。逆にそこがいい。


「な、なんだか照れちゃうね! 一緒に寝るなんて久しぶりだし」


「だ、だな! もう俺たち、立派な高校生だもんな」


「ゆーくんは私に甘えてくるけどね?」


「そ、それは……美波が俺を甘やかすから」


「じゃあこれからは厳しくしちゃおうかな?」


「といいつつも、俺に甘々なのが美波なんだよ」


「えへへっ、ばれた?」


「幼馴染にはバレバレだよ」


 美波との会話が心地いい。

 

 でも俺は、どうしても美波を抱きしめたかった。


 触れる腕が、足が、好きの気持ちを抑えられないでいる。


「なぁ美波?」


「なぁに?」


「……抱きしめてもいいか?」


「ま、また?」


「うん。今すっごく美波を抱きしめたいんだ」


「……全く、ゆーくんったら。いいよ」


 美波が俺の方を向き、向かい合って美波を抱きしめた。


 幸せの感触。


 全身が蕩けるような幸福感に満たされていく。


「ゆーくんは甘えん坊さんだなぁ」


「しょうがないだろ? 美波が可愛すぎるんだから」


「っ⁈ か、かわいいとか、そ、そんなぁ……」


 美波の体が熱くなる。


 ちょこんと見える耳は真っ赤で、ますます可愛くなってきた。


「なぁ、キスしてもいいか?」


「き、キス⁈ それもさっき……」


「今度は唇同士で」


「く、唇で⁈」


「あぁ、したいんだ」


「ゆ、ゆーくん……」


 欲望のリミッターが解除された俺はもう止まらない。

 

 視線を右往左往させる美波だったが、やがて俺の方を見て小さく頷いた。


「は、初めてだから、優しくね……?」


「もちろんだ」


 赤ちゃんの頬を撫でるように唇を触れさせる。

 

 より一層顔を真っ赤にさせる美波だったが、ふにゃりと顔を蕩けさせた。


「えへへっ、しちゃったね」


 プツン。


 頭の中で俺の理性が切れる音が聞こえた。


「美波!」


「ひゃいっ⁈」


「俺……美波が好きだ。だから付き合って欲しい!」


「え、えぇ⁈」


 あまりに突然のことに目を丸くさせる美波。


「ゆ、ゆーくんが私のことを……す、好きなの?」


「好きだ。大好きだ」


「大好き……そ、そっか。えへへ、そうなんだ」


「……どうだろうか」


 ごくりと唾を飲み、美波を見つめる。


「……私も好きだよ、ゆーくん。だから、私をゆーくんの恋人にしてくれる?」


「もちろんだ!」


「嬉しい、嬉しいなぁ私。やっとゆーくんの恋人になれて」


「俺も嬉しいよ、美波」


 見つめ合い、そしてもう一度キスをした。


 今度はさっきよりもより深く唇を交わした。




 結論。


 尽くしたがりな幼馴染は、本当になんでもしてくれる。



                 完

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尽くしたがりな幼馴染ならどこまでしてくれるのか試してみた 本町かまくら @mutukiiiti14

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