#14 これからのこと

私たちはレツハさんに連れられて、自分たちの家まで案内されていた。道中、ヘインとレツハさんは凄い言い合ってたりしてたけど…


「なんであん時俺だけ置いてったんだよ!まだ理由聞けてねぇぞ!」

「どの時のことだ。お前のことは毎度何かしらある度に必ず”囮”として置いてってるからな、どの時のことか多すぎて検討もつかないな。」

「お前なぁ!わざわざ”囮”って、強調すんじゃねえよ!ってかひでえやつだなお前!ざけんな!」


こんな感じで、家に着くまでずーっと言い合っていた。どんだけ仲がいいのやら…


「この2人は…すみませんね。メイプルちゃん。迷惑かけちゃって…」

「そんな。迷惑だなんて思ってませんよ。静かなのよりこんな感じで騒いでる方が、私は楽しいです」

「ふふ、ちょっと騒がしすぎる気もしますが、確かに、静かなのよりはこっちの方が断然いいですね」


メディさんも、すみませんね。と謝ってはいたものの、2人に呆れながら、でもどこかたのしそうにしていた。


「大体なぁ───!」

「お前が───」


前方に目をやると、まーだ言い争っている2人がいた。よく尽きないな…


「いい加減にしなさい!2人の時はいいですけど!今回はメイプルちゃんもいるんですから控えてくださいっ!!」


あまりにも2人が延々と言い合いをしているせいか、ついにメディさんが怒った。


「そ、そうだったな。悪かった。けど悪いのは…」

「レツハさん?」

「すみませんでした…」


メディさんがにっこり笑ったが、圧の篭ったとても恐怖を煽るような感じがした。怖すぎる…そんなこんなしていると、どうやら家に着いたらしい


「家って言っても小さい仮住居だからな。そんなに大きいものでもないが、うちの集落ン中では結構良質なところに案内したつもりだ。ここなら好きに使ってくれても構わないぜ」

「壊したりしてもいいのか、気前がいいな」

「普通に考えてダメだろうが!」

「だからやめてくださーい!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2人の漫才はメディさんによる割り込みで終わり、私たちは案内された家の中へと入っていった


「さて、一旦お前たちとこれからのことを話さないとな。」

「これからのこと⋯?」

「あぁ、俺たちの集落ではひとりひとりそれぞれ役割が違ってるんだよ。職業⋯みたいなもんか。それを決めないといけねぇんだ。」


なるほど。意外とシステムはしっかりしているようだ。ただ役職と言っても、一体どういうのなのだろうか。


「役割って言っても、そんなに難しいことじゃねぇ。安心してくれよ!⋯ああでも、難しい役職もあるか。まあ気にすんな。」

「⋯それに、話さないといけないこともある。メイプル、お前も着いてこい。重要な話だ。」

「⋯?うん、分かったよ」


前々から疑問なことなのだが、なんでまだ会って何ヶ月かなのにこんな重要な話とかを聞かされてるのだろうか。後で聞いてみるとしよう⋯


「人間たちみたいに暮らしは充実してねえからな。全部自給自足でやらないといけねぇ。狩りとかもしないといけないからな。」

「意外とここでの生活大変そうですね」

「生きるにはやるしかないか⋯」


メディさんも言ってる通り、 全て自給自足となると、結構大変そうな気がした。そして説明は一通り終えたようで、レツハさんは


「こんな感じかな。言っても決まりは特には無い。無法地帯って訳でもないが、特に法が決まってる訳でもない。よく分からないことがあったら、俺の所にきて聞いてくれ。そこら辺に案内人もいるはずだからな。そいつに遠慮なく聞いてもいいぜ。じゃ、俺は戻る」


と言って、外に出ようとした瞬間


「待て」


とヘインが一言言ってレツハさんのことを停めた。


「なんだよ。俺もしねえといけねぇことがあるんだが⋯」

「すぐ終わる事だ。それにとんでもなく重要な話たからな。聞いてくれないと困る。」


重要な話、というのはさっき言っていたことだろう。レツハさんは訝しげな表情をしながらこっちに戻ってきた。


「重要な話って、なにか話すことあるか?」

「あぁ、もちろん。何を隠そう人間たちのことについてだからな。」

「⋯へぇ?お前が人間の話をもちかけてくるたァ珍しいじゃねえか。」


人間たちの話題になると、突然レツハさんが真剣な表情へと変化した。


「俺たちの集落が襲われたからな。ここの居場所がバレて襲われるのも時間の問題だ。だからそれまでに対策を立てておかないといけない」


ここからは話が長かったから省略するが、要約すると、ひとつめに地の利を利用して罠をしかけたりすること。ふたつめは、戦える異形を増やすこと。このふたつを重点的に行うといった話だった。戦闘に使える系統の異形じゃない人達はどうすればいいのか。という質問も


「異形の身体能力の都合上、体術がしっかりしてればある程度は戦えるようになるから問題は無い」


とのことだった。


「俺からはこんなところだな。事前に対策しておくのも大事な事だ。それにメディ、お前たちならわかるだろうが、人間たちにも強いやつらがいる。確か『十天守護者オクトヘヴンス』っていうんだっけか?」

「そうですね⋯その『十天守護者オクトヘヴンス』に勝てるような人達が必要です」

「そうだ。次に襲撃があるのなら、『十天守護者そいつら』が攻めてきてもおかしくはない。現に『十天守護者オクトヘヴンス』NO.10相当の実力者が隊長という名目でこっちに来ていたからな。」

「だからそれまでに異形側で実力者を作らないといけない。だからこの集落にいる異形たちを最活用して実力者を作る⋯ってわけか。なるほどな」


レツハさんは深刻そうな顔をしながら、こう答えた


「よし、わかった。何人か手配しよう。それでいいか?」

「十分だ。感謝する」

「感謝されることでもないぜ。俺たち自身にも関係のあることだからな。」


こういうのを見てると、やっぱ仲良いなぁと思う。…正直とても羨ましい。


「話は以上だ。付き合わせてすまんな。もう戻ってもいいぞ。…メイプルは俺について来い。」

「りょーかい」

「メディはここにいてくれ。早速、メイプルのことを強くしてくる。」

「わかりました〜…優しくしてあげてくださいね。」


ヘインは微笑んで、あぁ、と答える。


「いくぞ。メイプル」


私は、うん、と答えて、そこを後にするのだった。

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