幕問#1 謁見
異形殲滅作戦で一部隊の全滅、及び作戦の失敗を報告するのにとんでもなくやるせない気持ちになっていた
「失敗した…完全に油断していた…」
「ネクス隊長は悪くないですよ!相手が『叡智』様の想定より上をいく強さっていうイレギュラーが起きたんですから!」
「違うんだ、アノー。私が派遣された理由はそのイレギュラーが起きたとしても対処できるようにするため。そのために『
『叡智』様はとても賢い方だ。なおかつ慎重で、あらゆる失敗を見越した上で作戦の中から最適解を確実に選択できる。それを失敗した私は、とんでもない大馬鹿者だ。それこそ、『
「…いや、段位の剥奪はどうでもいい。だが、二度目の失敗は許されない…」
「着きましたよ!謁見の間です!」
色々考え事をしていると、謁見の間までもう来ていた。いつみても、何度見てもこの荘厳な扉には気圧されてしまう
「…っ…よし…」
私は気を引き締めてから、ドアの向こうにいる人物へとお願いをする
「『
そういうと荘厳な扉が、重い音を鳴らしてゆっくりと開かれた
「…」
玉座に男が座っている
「アロガン様。お目にかかれて光栄です」
「…よい、表を上げよ」
重い声で、陛下はそういう
「此度はどうであったか。ネクス。」
私は意を決して、嘘偽りなく報告する
「…申し訳ございません。結果から申しますと、作戦は失敗してしまいました」
「なんだと!?」
皇帝側近の兵士が声を荒げる
「…損害は?」
「第二部隊の半数が死亡、奇襲部隊全滅、一部隊の消息不明…多大な損害を出してしまったいました。申し訳ございません」
「貴様…!」
皇帝側近の兵士が私に武器を突きつける
「陛下から『
「本当に、申し訳ございません」
「謝罪で済むものでもな…陛下?」
「静まれ」
陛下がその側近の兵士へ片手をあげ、低く、重い声でそういう
「ですが陛下…!」
「静まれと言ったはずだ。誰が貴様にここでの発言を許可したのだ?」
陛下が近衛騎士に向かいそういう
「も、申し訳ございません!」
凄まじい圧だった。この場一体の全員が動けなくなるくらいの、それくらいの。
「…話の続きを聞こう。ネクス。お主、だいぶ消耗しているが、森の中で一体何があったのだ?」
「…戦闘系の異形と出会いました。それも完璧に異形を制御している、非常に強い者に」
「ふむ…『十天権』は使ったか?」
「いえ、使用しておりません。万が一逃げられた時のために、あまり手の内をひけらかさない方がいいと判断しました」
「うむ…良き判断だ。生きて帰ってこれたこと、褒めてやろう」
なんと器の大きい方なのだろう。まさか剥奪や叱責どころか、賛美の言葉を送っていただけるなんて
「お前は若い。失敗するのも致し方ないことだろう。配慮が足りていなかった『叡智』の責任でもある。そう気負うな。」
「…もったいなきお言葉、感謝いたします」
心の中ではわかっているのだ。『叡智』様に責任はない。今回の失敗に関しては、私の実力不足が原因なのだと。
「それに今回はそんなに多い数もいない部隊だ。そして隊長格を1人しか積んでいなかった。若いお主だけでは、イレギュラーに対応できぬことも仕方あるまい」
「いえ、私の実力不足が招いた結果です。これからもっと、精進する所存です。」
陛下に誉めていただけたのは光栄だ。失敗した私のことも許してくれている。だがそれ以上に、私は自分の実力に関して不甲斐なさを抱いていた
「次、失敗すれば首を刎ねる、それくらいの気概で行こうと思います。」
「…良い心がけだが、あまり無茶はするな。私とて、お主のような強者を失うのは惜しい。失敗しようが、私にとっては小さなものだ。今回のことも、な。安心せよ。叱責することなど、無礼を働かぬ限りそうすることはない。だが…お主がそう思うのなら、引き続き精進せよ。報告は以上か?」
「以上です」
「うむ。下がって良いぞ。」
「失礼しました」
ドアが閉まった途端に、私は緊張の糸が切れた。
「…凄まじい存在感だった。あれが、ただの人間に出せる存在感なのか…?…いや、それを疑問に思っても仕方ないな。」
心も見透かせない。陛下が言っていたことが本心かどうかも分からない。何も、掴めない。だが、絶対的な存在感はあった
「…修錬場に行こう。団長に、教えてもらわなければ…」
そして私は、『
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「…作戦は失敗か…」
私は憂いていた。『叡智』が導き出した完璧な作戦のもと、私は指揮を取り、森に住む異形どもを殲滅させんとしていたのだが。それが失敗に終わった。
「やはり、ネクスだけでは足りなかったか…」
元々、ネクス1人で大丈夫なのだろうかと疑問は抱いていた。だが、変に戦力を追加して、帝国側の防衛機構が崩壊するのを恐れた私は、『叡智』を信じることにしたのだが…その結果、甚大な損害を出した挙句に、失敗。と言う最悪な結末になっていた
「…近頃、帝国には災害が起きるという話がきている…それが何を指しているのかは知らんが、それまでは下手に動くことはできんな…」
少なくとも、異形を殲滅するのはまだまだ先の話になりそうだった。
「…帝国には私がいる。災害が起きようが、止めはできるだろう…だが、それは自然現象の話。流石に異形をどうこうできるという自信はない…」
最悪のケースも想定しておかなければならぬな。そう言うことを思いながら、私はこれからについて、考えるのであった
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