#3 安堵と尋問
外の音が鳴り止むまでは、メディさんはとても不安そうにしていた
「...大丈夫ですか?」
「心配なさらなくても、私は平気ですよ」
全然平気そうには見えないけど...
とはいえそれを指摘したら地雷を踏み抜きそうなのでやめておくことにした
「...!」
すると突然、外で鳴っていた音が止んだ
より一層、メディさんの顔が不安に染まった
「...お願い...無事でいて...」
「きっと無事です。信じましょう」
さっき会ったばっかはずなのに、私はこの集団に何ヶ月もいるのかというレベルの感覚でいた。そして、ドアがガチャ、と音を立てて開いた
「お前ら無事か?怪我人がいなけりゃいいんだが...」
「!!ヘインさん!」
メディさんがドアの向こう側に居た人物の姿が見えた瞬間に飛びつきにいった。
ドアの向こう側にいたのは、血塗れのヘインだった。返り血を浴びているからか、とんでもなくグロテスクに見えた。
「うぉっ、っおいメディ、血が着くだろ。一旦離れろ」
「...そうですね...って、もう着いちゃいました。えへへ♪」
「お前なぁ...はぁ...」
メディさんはとても嬉しそうに、ヘインは驚き、呆れながらも少し嬉しそうに口許を緩ませていた。
「どんだけ心配してたんだお前は。俺はいつも無事に帰ってきてるだろ」
「そうだとしても、心配なものは心配なんですから仕方ないじゃないですか。私が異形を発現した理由、知らないとは言わせませんよ?」
どうやらこの2人は、以前からの、それに随分と前からの知り合いであるそうに見える。
「お前も無事だったか。えーと...メイプル...?」
「ああ、はい、大丈夫でしたよ。メディさんがここまで案内してくれましたから」
「そりゃよかった。」
ヘインは無表情でそう言うが、安心していることが雰囲気で見て取れた。
「なにはともあれ、本当に無事でよかったです...ありがとうございます」
「はっ、何感謝してるんだ。これくらい朝飯前だっての。何度だって守ってやるさ。これは俺にとっての...罪滅ぼしでもあるしな。」
どうやら、いや、やっぱりと言うべきだろうか。異形って言うものが発現した時点であらかた予想は着くが、ヘインも例外ではなく、深い闇を抱えているようだった
「さぁ、こいつから色々情報を聞き出すぞ。暴れる心配はない。コイツの目の前で散々恐怖を見せてきたからな。」
「うわぁ...」
散々恐怖を見せてきた。間違いなく嘘ではないだろう。なにせその血塗れな容姿が、どれだけ惨いことをしたかを物語っている。私は少し、この捉えられた兵士に対して同情した。
「さ、ぐーすか寝てないでさっさと起きろ。質問の時間だ。」
「...ぐっ!?はっ、俺は一体...!?き、貴様は『スパイク』!」
「さっきやっただろうが。繰り返すな。」
「ぐおっ!」
...今の兵士はなんも悪くない気がする。だけど、『スパイク』って、 ヘインのことなのだろうか。
「ここはお前たちが探し求めてた大量に異形のいる場所だ。良かったな、最期にここに来れて」
「な、何を言って...まさか、ここにいる全員が、『異形』だとでも言うのか...!?」
兵士は顔を青ざめ、私たちの方を凝視してきた
「あぁ、そうだ。ここにいる全員、皆俺と同族だ。まぁ、俺みたいに手を赤で染めたことは無いヤツらだけどな。」
兵士は青ざめた表情から、すぐさま威圧的な、憤りの表情を見せた。
「貴様ら...こんなことをしてタダで済むとでも思っているのか!?」
「いや私たちは何もしてませんし...刑罰を言い渡すのならヘインさんだけにしてください」
「おいメディ裏切るんじゃねぇ」
なんでこの人たちは敵の目の前で漫才を繰り広げているのだろうか...
「...さぁ、お前の質問時間は終わりだ。今度は俺らがお前に質問する。」
「バカを言うな!異形共の質問などにそう易々と答えるほど私は落ちぶれていない!」
「1つ質問を答えることを拒絶する度にお前の四肢をもぐ。いいな?」
ヘインがそう言うと、兵士の顔が恐怖に染まった。えげつないことするなこの人。
「1つ、お前らは誰からここのことを教わった?」
「私は知らない!本当だ!陛下から命を受け、ここまで来た!ここにあるということが報告書に載ってあったのだ!」
兵士は必死に弁明する。可哀想だなほんとに...でも逃がしたら、ここがバレるから、逃がす訳には行かない。つまり、この兵士の運命は決まったも同然だった。それを見据えて、私はなおのこと、この兵士のことを気の毒に思った。
「へぇ...その報告書には、誰が教えたとかは書いてなかったのか?」
「何も書いてなかった!私はただ、報告書に記された場所を目指してここまで来た!ほんとにあるとは思わなかった!」
「ふーん...」
少なくとも、この兵士が言っていることは嘘ではなさそうだった。必死なのも演技...の可能性も捨てきれないが、多分マジなのだろう。これで演技なのなら、兵士より諜報員の方が向いている
「じゃあ、その報告書とかいうの、どこにあるか教えてくれないか?」
「私のこの腰の部分に巻かれてある紙があるだろう...それが報告書だ」
「...これか、じゃあ、見せてもらおうかな。」
ヘインは報告書を広げ、しばらくしてつまらなさそうな顔をした。
「...なーんだ。お前のさっきの反応、全部マジだったのか。...つまんねーの」
「...捕虜に面白さを求めるな...」
兵士は顔を顰め、とても屈辱的な顔をした
「...よし、お前は殺さないで生かしといてやるよ。」
「...なんだと?」
兵士は驚いた表情でヘインを見た。そりゃ驚くだろう。私もヘインが言ったことには耳を疑った。
「なに、俺たち異形はなにも無差別に殺している訳じゃあない。ほんとは人間と分かりあいたいのさ。」
「...嘘をつくな」
「こんなくだらないことで嘘をつくほど俺は面白い人間じゃねぇよ。それに、俺は人間全員に対して恨みを持ってるわけじゃない。」
もっともお前らみたいに同族を殺すようなやつらは嫌いだが。と、ヘインは言った。
「お前は牢獄に捕らえさせてもらう。まようは捕虜だ。生活のことなら安心しな。優しい優しいメディさんが管理してくれるさ。」
「ちょっと!?いきなりこっちに投げないでくれません!?」
「いいじゃねえか、俺はコイツの管理ができるほど暇じゃない。に対して、お前は暇だろ?」
メディさんは、確かにそうですけど...と言って、少し面倒くさそうな顔をしていた
「まあそういう事だ。良かったな。命があって。」
「く...陛下...どうかお許しください」
「忠誠心が素晴らしいこった。さあ、行くぞ。お前の新しい家へ案内してやるよ。」
そして兵士はヘインに連れられ、牢獄へと連れていかれたのであった
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