第180話 魂の世界
目が覚めた僕は、ゆっくりと立ち上がって辺りを見回した。
見渡す限りの真っ白い世界。
「ここは……パパ達が死んでしまって、あれから僕は気を失って……」
「やっと起きたのね」
声がした方を向くと、いつの間にか傍に白蛇さんがいた。
「白蛇さん! って事はここは魂の世界なんでしょうか?」
「そうよ。まずは自分の身体をご覧なさい」
そう言われて僕が自分を見ると、肩が大きく抉れていて腕が千切れそうになっている。
でも不思議と動かすには問題ない様だ。
「こ、これは……」
「そう。あなたは暴食の魔王の
「そうですか……パパや守備隊の人達が命を犠牲にして逃してくれたのに……もう、皆の役に立てないなんて……」
「ふふっ。自分の事よりも皆を助けられなくなったのがショックみたいね。大丈夫よ、私が上位神様からこれをもらってきたから」
白蛇さんがそう言うと、僕に向かって何かを投げてきた。
「うおっと! ……こ、これは?」
「それは〈
えっ、神様に! でも、それはちょっと……
「えっと……すみませんが、僕は人間でいたいんですけど……」
「ふふふ。わかっているわ。それを飲んでも今直ぐに神になるわけじゃなくて、神気を扱える様になるだけなの。神気を纏えば魂は徐々に修復されてゆくわ」
「そうなんですか……でも、そんな貴重な物を僕なんかが貰っても良いんでしょうか?」
「いいのよ。その代わり、あなたにやってもらいたい事があるから」
「僕にですか?」
「そうよ。一つは暴食の魔王となった東堂達也を滅すること。いくら見放したと言っても、自然ならざる力によって人類が滅ぼされる事は望まないわ」
「はい。それは頼まれなくてもやるつもりでした」
「そうよね。そして、もう一つはその世界に入り込んだ三柱の邪神を滅ぼす事よ」
「えっ! 邪神ですか?」
「そうよ。前に言っていた調査の結果だけど、どうやら異界から追い出された邪悪な神が知識を授け、その地にウィルスを蔓延させるように仕向けたみたいなのよ。要は逆恨みね。東堂達也の魔王化もその邪神達の仕業なのよ」
「そ、そうだったんですか……」
「どの道人類は間違った方向に進んでいたので、いずれ来るワールドリセットは免れなかったとは思うけど、邪神のせいでそれが早まったのは確かね……全てが片づいたら、生き残った者達には私達から何かしらの償いをしなければと思っているわ」
「はい……でも邪神とはいえ神様を僕なんかが倒せるんでしょうか?」
「普通は無理ね。でも神気を扱えるようになれば別なの。言ってみれば半神という存在になるのよ。それに加えて強力な武器である神器があれば神を滅することも出来るはずよ。神界もかなり手が不足しているし私は制約があるから、今はあなたに頼むしかないのよ」
「でも僕の神器であるアイジスは、物を格納したり改変したりするだけしか出来ませんよ?」
「それは使い方の一つでしか無いわ。まあでも、丁度良い助っ人を呼んであるの。今から呼ぶわね」
……
少し待つと、小さい動物の様な生き物が眼の前に現れた。
ネズミの様なネコの様なリスの様な、地球上にはいない動物だ。
「やあ! 僕は名も無き神。ナナッシーとでも呼んでほしい」
小動物が二本足で立って話しかけてくる。
なんだかご当地キャラみたいな名前だし、大丈夫なんだろうか……
「は、はい。僕は荒井冴賢と言います、よろしくおねがいします……」
「彼は……ナナッシーさんは神気を扱うプロフェッショナルなのよ。神器についても詳しいわ。どの道、神気が魂に完全に馴染むまで一月ほどはかかるから、その間は彼に神界で修行してもらいなさい」
「い、一ヶ月もですか?……それだと僕の仲間達が……」
「大丈夫。彼らはあなたが居なくても困難に立ち向かおうとしているわ。仲間達を信じなさい。それから今回の犠牲者の魂は私の方で救済したから。あなたのパパも含めてね……その人達からの願いもあって、あの時小学校にいた魔王と連れの者達は極寒の地に飛ばしたから、仲間達も当分は安全のはずよ」
良かった!
パパ達の魂はありがたい事に白蛇さんに救われていたみたいだ。
それと達也たちも遠くに飛ばしてくれたんだ……
白蛇さんがここまでしてくれんだ。
僕だって皆を信じなければ。
「白蛇さん! 本当に、本当にありがとうございます! 僕も仲間達を信じたいと思います! ナナッシーさんも修行の方、どうかよろしくお願いします!」
「ふふっ。それでいいのよ」
「うんうん。いいよ〜すっごく強くしてあげるから」
そしてこの後、神界に移動して僕の修行が始まるのだった。
(ふふっ。私の使徒をお願いしますね……上位神様)
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