第184話 キャンピングカーへの襲撃(佐々木智代)(5/20、5/21)

私の名前は佐々木ささき智代ともよ


子供の頃から正義感が強く人の役に立ちたかった私は、将来は警察官か自衛官になりたいと思っていた。


歳の離れた兄が自衛官になっていた事もあり、私は進路を防衛大学にして卒業後は自衛官となった。


そして任官後三年目にパンデミックが発生した。


自衛隊は要人の救出をメインに近隣住民の救助や拠点の安全確保などを行っていたけど、パンデミック発生後二か月ぐらいして日本各地で不法な武装グループが発生し、国民への略奪が行われている事実を司令部が把握した。


自衛隊の今までの国民保護の在り方に不満を抱いていた私は、兄の反対を押し切り、司令部が募集した避難民の保護要員に参加して東京の避難所に向かう事になった。


そして私が担当した避難所が多数の武装グループに襲われ、必死に抵抗した私たちも数に負けて倒れる事になり、住民が虐殺、凌辱されていった。


同僚の自衛官も殺され、私は絶望して死を覚悟した。


だけどその時、突如として空からまばゆいほどの青白い光が差し込んで来て、全ての悪を切り裂いていった。


それが後で名前を知る荒井冴賢君だった。


彼はその圧倒的な力で100人もの武装した者達を単独で倒し、その鬼神の様な戦いに恐れをなした残りの武装グループの者達は、悲鳴を上げながら逃げて行った。


そして彼はまだ生きている避難民の治療や食事提供まで行って、その恩恵は私も受ける事が出来たのだ。


その後、無事に自衛隊の拠点に帰った私は幹部自衛官である兄の計らいにより、比較的安全な要人警護につくことになり、防衛副大臣について監査対象の集落に着くと、驚くことにそこでまた冴賢君と会う事が出来た。


私はあの圧倒的な力を持つ冴賢君が日本政府の力になってくれるのであれば、世界はまだ何とかなるのかと希望を持ったけど、日本政府は愚かな事に彼らの築き上げた集落の乗っ取りを行い、最終的には冴賢君を含む荒井家の追放を決めてしまったのだった。


政府に失望した私は、今まで世話になった兄には申し訳ないけど退職を決め、冴賢君の力を間近に見た同僚の一条さんを誘って冴賢君の父に同行を申し出て、なんとか認められることが出来た。





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その後はリーダーの荒井さんの指示の元、私と同じ元自衛官の一条さんと共に皆の銃器訓練を行ってホワイトフォートに貢献していた。


だが突如として小学校に襲撃してきたウィルス感染者の変異体たちから撤退する事になり、みなで過酷な山道を通ってようやく新潟市の手前の市まで来ることが出来たのだ。


念の為、その市街に入るまでに夜を明かして朝になり、新しく乗り換えて物資を積んだキャンピングカーの車列は国道49号線沿いの市街に入った。


「はあっ!」

「やっ!」

「どおりゃあ!」

「しっ!」


十数体の感染者の群れを平坂姉妹、怪我から少し回復してきた虎太郎君、悠里さん達に処理してもらう。


虎太郎君は長さ1mの大型ハンマー、悠里さんは長弓とカーボン製の矢を冴賢君のアイテムボックスから出して武器としていた。


一旦殲滅したかに見えた感染者だったが、休む間もなく続々と感染者がやってくる。


「これじゃあキリが無いわね……発砲の許可を!」

「……分かりました。でも、最小限でお願いします」


「「了解!」」


バックアップとして控えていた私と一条さんで、副リーダーの光司君の許可を得た後、左右に分かれて小銃での援護射撃を行う。


(ズダダダダダダッ!)

(ダダダダッダダダダ!)


生存者がいれば遠くからでも銃声が聞こえたかもしれないが、この際仕方が無いだろう。


何とか皆で感染者を殲滅し沈黙した感染者を道路脇に積み上げた私達は、またキャンピングカーで国道を進んで行く。


何回か感染者や障害物対応をした後、その日は阿賀野川を越えて新潟市に入った国道で夜を過ごし、朝になりまたキャンピングカーを乗り換えて進む。


なんとかその日中に栗ノ木川を渡る橋を越え、新潟港に近づいていた。


(パンパン!)

(パパン!)


「銃撃よ!! 皆、体勢を低くして!」


1号車の正面に銃撃を受け、ブレーキで停止した後、皆に体制を低くする様に指示して床で小銃を構えた。


「綾音さん、トランシーバーで全車に襲撃を受けている連絡を!」

「承知しました!」


フロントガラスは破損していないので、どうやら威嚇射撃みたいだけど、一体何者が襲ってきたのだろうか。

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