第154話 温泉に入ろう(2/3)
「ここが新しく作ったお風呂になります。手前の教室にはリフレッシュルームもあるので、お風呂上がりにマッサージ機とかも楽しめますよ」
僕は最後に一階に作ったお風呂に皆を案内した。
全員が温泉宿のお風呂の様な入り口に驚いている。
「凄い!」
「いつの間に……」
「まさかお風呂を作っちゃうなんて!」
「やっぱりホテルじゃないか!」
「凄えな……」
「最初なんで、一度中に入って説明しますね。さあ皆さんどうぞ、男性陣が女湯に入れるのは、これが最初で最後でしょうね」
僕は少し冗談交じりで説明を続ける。
「入って左右に靴置きと脱衣所がありますので、どちらでも好きな方を使って下さい。このお風呂は小学校グループ以外の女性にも利用してもらうつもりで大き目に作成しましたので、皆さん全員で利用して下さいね」
「やった!」
「楽しみね!」
莉子さんと明日奈さん達の旧ホワイトフォート勢も顔を見合わせて楽しそうだ。
僕は続いて説明する。
「脱衣所には扇風機や体重計も用意しましたので使って下さい。まあ用意してくれたのはアイジスなんですけどね。中はシャワー設備が10個あって、ボディソープやシャンプー、リンスなども揃えています。中身が無くなったり他の製品が良かったら遠慮なく言って下さいね。後は浴槽ですが、20人ぐらいは入れると思います。そして、お湯は……温泉の掛け流しになります!」
「「「「温泉!」」」」
「温泉かよ!」
「温泉だって!」
皆が驚愕して口々に叫ぶ。
誰も小学校で温泉に入れるなんて思わないもんね。
「これもアイジスが源泉の位置を割り出して、リソースを繋げてくれたので実現出来ました!」
「アイジスありがとね!」
「アイジスちゃん、ありがとう!」
莉子さんと明日奈さんがアイジスにお礼を告げる。
(どういたしまして。それと初めて会話する方々、私はアイジスと申します。どうぞよろしくお願いいたします)
アイジスが答え、小学校グループの皆にも挨拶する。
「えっ!」
「何、今の声!」
「声がしたわ!」
「頭の中で声がしたよ!」
「何だ!」
その後、アイジスに驚く小学校グループの皆に、アイジスの存在を説明するのだった。
ーーーーー
小学校グループの皆の洋服は結構ボロボロだったので、お風呂に入る前にアイジスに頼んで適当な寝間着と下着、替えの洋服等をアイテムボックスから出してもらうと、子供達は真新しい服に大喜びした。
デリケートな中高生女子達の分は、明日奈さんと莉子さんが要望を聞いてくれて、洋服や下着類、その他の女子用品を検索して渡してくれた。
僕はその間は二人のどちらかと手を繋いでじっとしているしかないので、他の人の視線が少しだけ痛かった。
とりあえず今日はお風呂に入って気持ちよく寝てもらう事にしよう。
アイテムボックスから人数分のバスタオル、ハンドタオルを出して皆に手渡した。
……
僕達男性陣もお風呂へと入る。
幼児組は男女とも女湯で面倒をみてくれるので、小中高校生の男子達だ。
男湯は女湯の半分の大きさしかないので、順番に体を洗って湯船に入る。
僕も小学生達の洗髪などを手伝ってから湯舟に入った。
「は〜。温泉、気持ちいい〜」
温泉の湯が気持ち良くて思わず声が漏れる。
「本当だな」
「まさか学校で温泉に入れるとは思わないですよね」
先に入っていた虎太郎さんと光司君が笑顔で答える。
虎太郎さんは体が大きいので上半身が結構出てしまっている。
凄い筋肉だ。
「本当にびっくりだよね!」
「凄いです!」
雄二さんと透君も湯に浸かりながら話に参加する。
「これも超能力なんですか? 今までとは違うみたいですけど」
光司君が質問してきて、中高生組は僕に注目した。
「ううん。これはアイテムボックスの、というかアイジスの能力なんだ。アイテムボックスに格納されている資材を創造・改変だったかな? して別の物に作り変える事が出来るんだよ。僕の精神力を消耗するんで無限にという訳にはいかないみたいだけどね」
「でも、凄い能力ですよ。もしかしたら、使う資材も誰もいないビルとか、家とかを拝借しちゃえば消耗が抑えられるかも知れませんね」
確かに何かベースにある物があった方がゼロから作るより良いだろう。
流石に光司君はそういうところにも良く気がつく。
「確かにそうかも。廃物利用というか、今度から街で不要そうな建物があったら貰っちゃおうかな!」
その後、僕達はわいわい騒ぎながらお風呂を楽しむのだった。
ーーーーー
(生駒麗華)
私は幼児達の身体を洗い終わって、一緒にお風呂の湯に浸かる。
ああ気持ち良い。
今、私達が入っているのは温泉だ。
このお湯の匂いや手触りから見ても間違いないと思う。
本当に不思議。
つい昨日までは囚われの身で雄二も死にかけていて絶望的な状況だったはず。
その前も、何とか皆で頑張って生きながらえているだけで、未来なんか全く見えない感じだった。
救世主。
私には荒井冴賢君は、変な宗教ではないけれど、この荒廃したパンデミックの世に現れた救世主の様に思えた。
不思議な力で雄二や真子ちゃんを治してくれて、監禁されていたモールからも救い出してくれて生活環境の改善まで行なってくれた。
一番の懸念材料だった食料の心配も今後はする必要が無い。
地獄に仏と言うか、なんという幸運だろうと思う……
「どうしたの麗華。ぼーっとしちゃってさ!」
「有紗……うん。この状況が少し不思議だったんで考えてたの。お腹いっぱい食事が出来て、温泉にまで入れるなんて」
「そうねー。まあ冴賢君に助けてもらってラッキーだったのよ、私達!」
そんな風に素直に言える有紗が少し羨ましい。
冴賢君という名前を聞いて、明日奈ちゃんと莉子ちゃんがこちらを微笑ましそうに見ていた。
「あ、そういえば、二人とも冴賢君と付き合ってるんでしょ?」
有沙が明日奈ちゃんと莉子ちゃんに尋ねる。
「はい、そうです。ずっと一緒にいようって言ってくれたので……」
「私もそうよ。それと、私と弟の秀彦の命の恩人だしね!」
二人はそう言って、少しだけ冴賢君との馴れ初めを語ってくれたの。
それは雄二との関係が進まない私が羨ましくなる話だった。
「でも重婚って法律違反じゃなかったっけ?」
また有紗が余計な事を言う。
「う〜ん。でももう日本の法律を気にする必要は無いので……」
「そうそう、私達が納得していればいいのよ。私と明日奈ちゃんは親友だし!」
「……」
私達が話をしているのを聞いて綾音さんが度々こちらを気にしている様子だ。
何か思うところがあるのかしら?
「じゃあさ! 思いきって私達も雄二に告白しちゃわない? 麗華!」
「えっ! やっぱり有紗も雄二の事、好きだったの? というか私が雄二の事好きだって知ってたの?」
「うん……そりゃ分かるよ……でも親友の麗華に悪いかなって思ってたから……我慢してた。でも一人に限定しなくて良いんなら、私達も二人でシェアしちゃえば良くない?」
「それは、そうかもだけど……怖いよ」
私は雄二の気持ちを聞いたことが無いし振られるのが凄く怖い。
私だけ振られて有紗だけが選ばれる可能性だってある……
「大丈夫だって、雄二が麗華を嫌いなはず無いよ! 雄二だって男なんだから嬉しく無いはず無いって!」
「う、うん……」
あ、しまった。
長湯して子ども達がのぼせそう。
でも、これからの未来の為に私も勇気を振り絞ってみようと思う。
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