第144話 監禁(2/2)
「お前の名前は? 小綺麗でどこも汚れていないし、一体どこから来たんだ?」
小太りで生え際が後退した中年の偉そうな男性が僕に尋ねてくる。
側には護衛なのか、僕をここまで案内して閉じ込めた背の高い男性がいる。
もう一人、男性がいるので都合三人だ。
今は防犯シャッター越しに話し掛けられている状況だ。
「えっと、あなたは?」
「ああ、ワシはここを取り纏めている大津という者だ」
「そうですか。僕は荒井冴賢と言います。家族と南から旅をしていて、今日この市街に来たんです。ここは避難所なんでしょうか?」
「南からか……避難所と言えば避難所とも言えるな。それで何しにここに来た?」
「えっと、ここに来る前に小学校にいる子供達と会って、高校生五人が行方不明となっている事を聞いて、人がいそうなここに探しに来たんです。さっき声がここまで聞こえたんですが、すぐそこに居ますよね?」
「……知らんな」
「えっ! でも声が聞こえてましたよ?」
モールの廊下は誰もいないせいか声がかなり響くんだ。
僕は耳が良いので丸聞こえだったのに……
「ともかく、ワシは知らん。それで、お前の家族とやらは今どこにいるんだ?」
「……車で来たので、道路上に一時待機してもらっています」
「何っ! 車だと。燃料はどうしたんだ?」
「えっと、何とか確保しておいた物を使っています」
「まだ動けるのか?」
「それは……燃料は予備があるので、それなりには……」
みんなが乗るキャンピングカーの燃料は僕が出る時に補給済みなので、あれからずっと暖房の為にアイドリングを続けていたとしても、まだまだ何十キロも走れるだろう。
もちろん、無くなってもアイテムボックスから補充も出来る。
水と違って燃料系はアイテムボックスでは有限であり、数量は999999だった。
ありがたい事に単位はリットルではなくバレルだという事が分かっている。
1バレルは大体160リットルぐらいらしいので、キャンピングカーなどの燃料の心配は当分はしなくても良いだろうと思う。
これも全て白蛇さんのお陰だ。
車の事を執拗に聞いてきているので、多分だけど燃料が欲しいんだろうか?
パンデミックから8ヶ月以上、ガソリンや軽油も今は生産は出来ないと思うので、ガソリンスタンドなどの燃料が無くなったら後は放置車から抜き取るしかないけど、それさえももう限界なのかも知れない。
「お前の家族は何人だ?」
「僕の家族ですか? えっと、パパ達と……六人です」
パパ、ママ、妹の玲奈は荒井家としての家族だし、明日奈さん、莉子さん、秀彦君も一緒に暮らしているから家族枠だと思う。
他にも光司君や美久ちゃん明人君など家族同然の人達もいるけど、それを数えるときりが無さそうなので、一旦家族枠としてはこの六人で良いだろう。
「そうか。お前の家族に会って、是非燃料を分けてもらいたい!」
「それは……状況によるかと思いますが……」
「とりあえずお前は人質だな。おい! コイツはここに閉じ込めておけ、後で家族のいる場所を聞き出すんだ!」
「はい。大津様」
大津と呼ばれている男は僕を閉じ込める指示をすると、護衛の男と一緒に何処かへ戻って行った。
ーーーーー
どうやら僕はここに閉じ込められてしまった様だ。
サーチで見ると、モールの上階のいくつかに別れて人が生活しているみたい。
恐らく一階はバリケードと、僕を閉じ込めているような使われていない店舗で、二階への侵入口をさらに封鎖して、上階を居住区としているんだろう。
映画だと入口の何処かでゾンビに侵入された場合、そこからもう全てのエリアが蹂躙されて追い込まれ、最後に車で逃げ出すのは良くあるケースと言う感じだ。
それを考えると、ここの様に始めから侵入された場合を考えて、入口とは別に上階への侵入口を封鎖しておくのは悪くない考えだとは思う。
まあでも、さっきのやり取りからすると、ここはロクなところじゃ無さそうだ。
僕の目的は行方不明の高校生達を連れ戻す事。
あの人達は燃料欲しさに僕をここへ閉じ込めたつもりらしいけど、このままじっとしてあげる義理も無い。
さっさとここを出て目的を遂げる事にしよう。
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