第135話 旅の準備(1/30、1/31)

僕達はその後、二日間掛けて出発の準備を行なった。


僕はまずアイテムボックスから物資格納用の倉庫として、コンテナをいくつか取り出して集約倉庫の近くに配置し、日持ちする物資をそこに格納していった。

これは僕が出て行った後でも住民が飢えることが無いようにする為だ。


パパやママ、明日奈さんや莉子さんにも相談しながら、主食としてのお米、小麦粉、パスタ、蕎麦、うどんなどの各種の穀物類、麺類や、料理用の各種の油や砂糖、塩、酢、醤油、味噌、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、各種のスパイスなどの調味料、カレーやシチューの素、缶詰加工された肉、魚、鶏卵、フルーツ類、各種のレトルト食品、カップ麺、袋麺、定番の煎餅やスナック菓子、飴類、各種のジュースや酒類の飲料など、およそ考え付く限りの食べ物等を入れておく。


僕達はホワイトフォート改め坂部市を追放という形になるんだけど、それは乗っ取りを企んだ坂部勢力と日本政府が手を組んだ結果であって住民に罪は無い。

少なくとも僕はそう思っている。


当面の物資さえあれば、バリケードは健在だし生活インフラもある程度整っており、自衛隊や民兵などの武力もあるので、ここに残して行く住民が直ぐに死んでしまう事は無いだろうと思う。


その後、川上京子先生に相談しながら医薬品類、小谷静香さんに相談しながら服飾品や生活用品をコンテナを分けながら格納する。


そして僕とパパは色々な事を話し合って決めて行くのであった。





ーーーーー





出発前日の昼頃、再度集められた皆にパパからいくつか発表があった。


「また集まってもらってすまない! 今日は、現状と今後の方針を共有したくて集まってもらった。細井悠里さんと小谷静香さんには、一緒に来るメンバーにも後で伝えて欲しい」


悠里さんと小谷さんが頷く。


「まず、冴賢の方でここに残しておく物資をコンテナに配置して、俺の方から坂部サイドに連絡を行なった。向こうは大量の物資に大喜びだったが、早くも俺達がそれを独占していたと言う噂を流し始めているらしい。まあ明日にはここを出るのでそれはどうでも良いだろう。次に同行者についてだ」


そしてパパが懐から紙を出し、僕達と同行するメンバーを発表した。


・真理と家族を含む集落の元からの住民205人のうち31人

・荒井家および親しい少人数グループ(パパ、ママ、玲奈、僕、明日奈さん、莉子さん、秀彦君、光司君、美久ちゃん、早苗ちゃん達5名、明人君達9名、虎太郎さん、鈴花ちゃん、平坂家4名)29人の全員

・壊滅した真理の元避難所の人達(第一〜第八班)101人のうち15人

・小谷静香さん達武装グループから救出した女性達(第九班)の21人のうち11人

・細井悠里さん達の高校生と先生の48人の全員

・バリケード内にいて合流した住民と外から救出した避難民の274人のうち6人


当たり前だけど坂部避難民グループからは誰も来ない。

僕達と新天地を目指してくれるのは全部で140人だ。


これは選挙でパパに投票してくれた人数の半分以下だけど、やはり命を掛けて危険な壁の外には出たくないのだろう。


悠里さんのところの高校生達は全員が同行を希望した。

これは僕達の戦う力を見たというのもあるけど、小谷さんのグループからは半数しか来ないし、真理がいた避難所の人達はもっと少ない割合なので、高校生達がまだ若く冒険心にあふれているからだと思う。


逆に集落の元からの住民は、パパと親しい守備隊が主体で中高年の方が多かったから同行者は少な目だけど、驚いたのは真理も含めた武田さん一家が同行を申し出た事だ。


今日の昼前になってパパに直接言ってきたみたい。

武田さんや真理達が一体どういう心境なのか僕にはわからなかった。





ーーーーー





パパの話は続く。


「目的地は佐渡ヶ島を目指そうと思う。ここからもそれ程遠くなく、離島で東京よりも面積が広く元々の人口も五、六万人ぐらいだから、仮に住民全てがゾンビ化していても時間を掛ければ殲滅できるはずだ。もし何らかの理由で佐渡ヶ島に渡れない場合は、東京方面を避けて日本海側を南下して四国か九州を目指す事になるだろう。そこで今度こそ日本ではなく独立領としての新生ホワイトフォートを立ち上げたいと思う! この独立の理念に同調出来ない者は、例え弱者であっても切り捨てていくからそこは理解して欲しいと思う」


理念が異なるも弱者であった坂部勢力を受け入れた為に、今回の様な事体になってしまったんだ。

皆もその辺は理解してくれていると思う。


パパが皆を見回しながらさらに続きを話す。


「近いと言ったが、佐渡ヶ島までも危険な道のりとなるだろう。そしてこれからは冴賢達だけに甘えるのでは無く俺達も戦わなければならない。その為ここを出て北上して一旦、福島県の何処かで戦闘訓練を行ない、それから新潟を目指して西進して海を渡ろうと思う。その為にという訳では無いが、今回自衛隊から少しだけ引き抜いた人材がいる。入ってくれ!」


え! いつの間にそんな引き抜きを?

と僕は思ったんだけど現れた人物を見て納得した。


ママに促されて、女性自衛官と男性自衛官の二人が入って来る。


佐々木智代ささきともよです。私は以前東京の避難所で冴賢君に助けられ、怪我を治療していただいた事があります。日本政府ではこの先の未来は無いと思い、無理を言って参加させていただきました。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」

一条浩人いちじょうひろとです。僕は佐々木さんから話しを持ちかけられて参加を決意しました。どうか、よろしくお願いします」


「二人は出発までは荒井家で匿う事になっている。正式な退職手続きが出来る状況じゃないからな。こんなご時世だからそこは事情を汲んであげて欲しい」


それは真理の避難所で助けた女性自衛官と、先日の騒ぎでパパの家に居て敵対しなかった自衛官の男性だった。



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