第127話 制圧される集落(1/16)
1月半ば、救助活動に向かった僕達にパパから焦った様子で
これは二年参りに白蛇さんの祠にお参りに訪れた際に、新たに発現してもらった能力で、離れていても僕と会話が出来るんだ。
(冴賢! 聞こえるか?)
(聞こえるよ、パパ。何かあった?)
(緊急事態だ! 自衛隊ヘリが編隊を組んでホワイトフォートに降りてきている! 直ぐに戻って来てくれ!)
(わ、分かったよ!)
大変だ、何が目的なのかはわからないけど直ぐに戻らないと!
パパや僕達救助隊以外の人は戦う術を、武器すら持っていないんだ。
相手は戦闘のプロだし、武器があってもパパ一人じゃ何も出来ないだろう。
「皆さん! これから急いで引き返します! 前回よりも大勢で自衛隊機がホワイトフォートに来たみたいなんです!」
救助隊の皆が驚きながらも頷いて同意してくれる。
明日奈さん、莉子さんからも
ーーーーー
30分後、僕達は目立たないように地上に降りてホワイトフォート内に戻った。
既に制圧されてしまったのか、集落内のいたるところに武器を持った自衛官や見たことも無い民兵の様な者がいる様子だ。
救助隊の皆でパパの家に徒歩で行くと、家の前に小銃を持った十数名ほどの自衛官達が居て入室を止められた。
「僕はこの家の人間です。中に入らせて下さい」
「今は防衛副大臣が会談中ですので入室は出来ません!」
「てめえ等、大将に何してる!」
僕と自衛官の問答を見て頭に血が上った虎太郎さんが自衛官を押し返した。
他の自衛官達が一斉に僕達に向けて銃を構える。
一触即発の緊張感の中で家のドアが開き、中からこの前自衛隊と視察に訪れた政府の男性、栗山さんが出て来て入室を促された。
「手荒な事は止めて下さいと言っておいたでしょう。冴賢君だけ中にお入り下さい。むしろあなたを待っていたんですから」
栗山さんが自衛官達に文句を言いながら僕に家に入るよう促してくる。
僕は一緒に来た仲間にそのまま待つようにゼスチャーで伝え、栗山さんと家の中に入った。
ーーーーー
「来たか」
パパが僕を見て呟く。
「副大臣、彼が荒井さんの御子息の冴賢君です。こちら現内閣の
栗山さんが、パパと相対している恰幅の良い人物に僕を紹介し、同時に僕にも紹介してくれる。
僕は防衛副大臣だという
「荒井冴賢です」
防衛副大臣の脇には二名のSPと思われる護衛も連れている様だ。
ママと玲奈は台所の方で二名の自衛官に付き添われている、と言うか見張られている様だ。
でも僕はその片方の女性自衛官に見覚えがあった。
「あなたは……あの時の?」
真理がいた避難所で、武装グループに倒されてるところを治療して助けた自衛官の女性だ。
女性自衛官は発言を許されていないのか、僕の認識を裏付けるように微かに頷く。
「さあ、冴賢君も座って下さい。副大臣からあなたにもお話があります」
僕が頷いて席に着くと、副大臣が話し掛けてくる。
「君が荒井冴賢君か。そこにいる栗山君や複数の自衛官からも報告があったが、不思議な力が使えるそうじゃないか? 是非、その力を我々日本政府の為に発揮してもらいたい! ここは高い防壁で囲まれていてかなりの安全性がある。ここに我々政府の人間や自衛隊を駐留させれば、この未曾有の国難にも対処が出来るだろう。これからは我々と一緒に頑張ろうじゃないか!」
「……」
この人は一体何を言っているんだろう。
このパンデミックによって世界中の相当数の人間は死滅し、日本も既に国の体を成していないだろう。
一般の民衆を見捨て、政府の要人や高級官僚とその家族は真っ先に保護されたんだろうけど、一般民衆がいなければ政府や軍隊だけがいても意味がない。
そしてここが安全そうだから自分達が乗っ取ろうという訳か。
僕達が必死に築き上げてきたこのホワイトフォートを……
(マスター!)
僕が副大臣に口を開こうとした時、アイジスから思念での連絡があった。
(アイジス、どうしたの?)
(サーチ情報から侵入者の敵対的な行為を検知しました。現在、ホワイトフォート内の複数の場所で暴行・略奪行為が行なわれています)
暴行や略奪だって! 大変だ!
「パパ!」
僕は直ぐにパパに警鐘を鳴らす。
アイジスからの報告を
「副大臣、栗山! これは一体どういう事だ? お前達が連れてきた奴らが一般人に暴行や略奪を働いているぞ! 冴賢! 住民を守れ! 最悪は殺しても構わない!」
「うん!」
「ま、待って下さい! な、何かの間違いじゃ!」
「そうだ! 数人が暴走してしまっただけだろう?」
僕は彼らの言い訳を無視して
このホワイトフォートは僕達が守って見せる!
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