第124話 白蛇さんへのお参り(12/31〜1/1、テレパシー)
今日は年末の最終日12月31日だ。
ここホワイトフォートも年明けの1月3日までは皆が休暇となる。
店舗の商品などは各家庭に事前にかなり多めに配布しておき、どうしても物資が必要な場合は、ある程度の物資を備蓄しているパパの家まで物資を取りに来てもらう対応にした。
食堂も同様にお休みとなるので独身男性達には申し訳ないけど、休暇期間中は自炊してもらうか、レトルト食品やカップラーメンなどで我慢してもらおうと思う。
パパ、ママ、僕は、昼から夕方にかけて街の中央広場でそばを茹で、事前告知を見て訪れた希望者に年越しそばを振る舞い、明日奈さんと莉子さんで、おせち料理の詰め合わせセットや、切り餅、鏡餅、正月飾りなども配布していった。
玲奈や秀彦君も配るのを手伝ってくれたんだ。
年越しそばを食べたお年寄りの方達は、平和だった去年を思い出してなのか目に光る物が見える。
こんな世の中になってしまったけど日本の伝統的な風習などは、これからも守ってゆきたいと思う。
ーーーーー
ホワイトフォートのバリケード内には神社が無いので、新年は有志で白蛇さんの祠にお参りをする事になっている。
僕は皆に先駆けて深夜に一人で白蛇さんの祠に行き二年参りを行った。
目を瞑って手を合わせ、白蛇さんに感謝の祈りを捧げる。
「白蛇さん。いつもありがとうございます。お陰様で僕達は平和に暮らしています。これも全て白蛇さんのお陰です。願わくば、これからも僕達をお守り下さい……」
僕が祈りから頭を上げて目を開くと、そこは真っ白い空間だった。
これはまさか!
「ふふっ。久しぶりね」
「白蛇さん! いつも凄く感謝しています!」
「もちろん知っているわよ。毎日、感謝の祈りをもらっているわ!」
「はい!」
「今日は急遽伝える事があって、あなたが起きている時に無理に魂を召喚してここに呼んだのよ。いきなり呼んで悪かったわね」
「いいえ! 僕ならいつでも呼んで下さい」
「ありがとう。早速なのだけど、おかしな事に神がいなくなったはずのその地から神の鼓動を感じたのよ。そして、それに呼応する様に特殊な変異体と思しき個体も発生しているわ。それもあなたの居る日本にね。なぜか私の神眼でもはっきりと見えないから詳しくはわからないけど、その特殊な変異体は他と違って明確な意志を持っているみたい。今日はあなたにそれを警告に来たのよ」
「正体不明の神様……特殊な変異体……日本にですか。えっと僕はどうすれば良いんでしょうか……」
「神とは直接戦う事はないけど、特殊な変異体と出会ったら戦うしかないわね。私には制約があって、もうその地には当分の間は完全な神体では戻れないの。もし仮に戻れたとしても神が直接的に地上に手を降すのは禁じられているし、他の神もそれは同じはずよ」
「そうですか……」
「そう落ち込まないで。あなたは私の使徒なのよ、見捨てはしないわ。それにその神の正体さえ判ればこちらで打てる手もあるの。今、他の神に詳しく調べてもらっているところだから何かわかったらまた教えるわ」
「はい。ありがとうございます! あと、僕からもアイテムボックスで聞きたいのですが、消費した数量が増えている事があるんです。これは何故なんでしょうか?」
「ふふふ。もうそろそろいいわよね。実はあなたに与えたアイテムボックスは、本来はアイテムボックスという能力じゃなくて、私が創った時空間を操る神器の能力なのよ」
「神器ですか!」
「そう。その能力でその地の物ならいくらでも格納しておけるし、中の物をコピーして増やしたり、中に入っている物を使って全く別の物を創造する事や、物質の改変も出来るわ。流石に神の様に無制限にとまでは行かないけれどね」
「そうなんですか。でも僕は自分で増やそうとした覚えは無いんですけど……」
「あなたに与えた神器には意志や知能もあって、主であるあなたのサポートを裏で隠れてずっとしているのよ。人間にわかり易く言うと超高性能なAIみたいな感じね。だから消費が激しかった物の数を自動的に増やしたのだと思うわ。あなたがサーチと呼んでいる能力も実はその神器の能力なのよ」
「え? サーチって神器の能力だったんですか!」
「それはそうよ。流石に膨大な数を感知して正確な位置を割り出したりする能力は人間には無いわ。座標の計算とかも面倒だし、もし出来たとしても直ぐに発狂して廃人になるわよ」
「なるほど。言われてみれば僕は全然疲れたりは、していませんでした……それに人名で検索も出来たりするみたいですし。考えてみれば確かに人間では無理そうですね」
「神器はその地のあらゆる情報、人間にわかり易く言うと
「そうですね。サーチ距離が伸びたりはしています。あと僕の超能力と連動したりりとかも」
「神器はあなたの魂と一部が結合してあって、あなたの超能力を代行したり補助したりする事も出来る。そして、あなたには絶対に忠実で死ぬまで決して離れることは無いわ。そういう意味ではあなたの一部になっているのよ。他に何か知りたい事があれば自分で話し掛けてみると良いわ」
「えっ! 神器って喋れるんですか?」
「ええ、そうよ。あなたも声を聞いたことがあるんじゃない?」
「言われてみれば最初の頃アナウンスの声を聞いたような気が……」
「まあ面倒な物の創造とか改変とかは神器に任せた方が良いわね。あなたが気付くまで自分から存在を明かす事は禁じていたのだけど、その存在を認識した今、
「はい。そうします」
「もしかしたら今後はその神器の力が重要になってくる可能性も見えているわ。そうね、ついでだから、今からあなたの能力をまた一つ発現させてあげる。
これは凄い! この力があれば仲間とはぐれても直ぐに連絡がとれる!
「ありがとうございます! これでもっと危険を減らせそうです!」
「ふふっ。これだけ人間を超越した力を持っても、あなたの魂は綺麗なままよ。これからも頑張りなさい。さあ戻るのです!」
ーーーーー
……そして気付くと僕は白蛇さんの祠の前に立っていた。
(えっと、アイテムボックスの神器さん。いますか?)
僕は心の中で神器に話し掛けてみる。
これで
(はい。マスター)
返答があった!
(あの、今まで僕を補助してくれてたみたいで、ありがとうございました)
(いいえ、マスターのお役に立つ事が私の唯一の存在理由です。私に敬称や敬語は不要です)
(う、うん。分かったよ。君の事はこれからなんて呼んだらいい?)
(マスターの好きな様にお呼び下さい)
(名前が無いのか、それじゃあアイテムボックスの神器だから……ちょっと混ざる感じで〈アイジス〉でどうかな?)
(私に固有の名前を授けて下さり、ありがとうございます。以後、積極的にサポートさせていただきますので御用があればいつでもお呼び下さい)
(うん。またね!)
どうやら名前は気に入ってくれた様だ。
ありがとうアイジス。
僕は、心強い仲間がまた一人増えた気分だった。
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