第117話 戻らない仲間(12/6)
僕達はパパの許可を貰い、明日奈さんの弟である明人君、赤羽諒君、虎太郎さんと僕で明人君達の仲間を迎えに行く事になった。
二人の彼女である石崎柚葉さんと川村翠さんの女性陣は危険なのでお留守番だ。
ホワイトフォート内で吉報を待っていてもらおう。
もう12月に入りこの辺りはたまに雪もチラつくほど寒いので、絨毯ではなく車での移動となる。
帰りに人数が増える事も考えて、いつもの観光バスで行く事にした。
速度が速くなった
僕は婦人警官の米倉の一件もあって中には入れないので、事前の打ち合わせ通りに警察署の入口が見える近くのビルで待機した。
ーーーーー
……あれから四時間以上ぐらい経った。
明人君と赤羽君が仲間を説得し、午後二時頃までには警察署を出る手はずだったんだけど、時間を過ぎてもまだ現れる気配がない。
何かあったんだろうか……
サーチで検索してみても、三人が中にいるのは間違いないようだ。
どうしようかと思案していた矢先、サーチ範囲に異常な現象を捉えた。
巨大な赤い塊が見える!
それはまだサーチ範囲ギリギリの2kmぐらい先だけどかなり密集した数の赤い集団、恐らく感染者の大群がこちらにやってきているんだ!
まだ全体は見えないけどあの密集具合からは数万体はいるように思える。
このままだとあと二、三時間もあればここに到達するだろう。
そして最悪な事に、その中に紫色の点がいくつかある事も確認出来た。
変異体がいる! しかも複数体!
僕がいる時に……これは偶然なのか、それとも単に増えて来ているのか?
しかも変異体は感染者の大群を先導するかの様に動いている感じがした。
これはまずい!
すぐにみんなを連れて引き揚げないと!
ホワイトフォートなら固定した壁があるから安全だけど、この警察署の様な建物だとあの大群にバリケードなど吹き飛ばされ、飲み込まれてしまうも知れない。
おそらくあの感染者の大群は既にいくつかの避難所を飲み込んだんだろう。
そしてこれからも全てをなぎ倒し、さらに大きく膨らんでいくのかも知れない。
今の僕でもこの数を倒し切るのは絶対に無理だ。
変異体も複数いるみたいだし、ここは逃げるしかない……
ーーーーー
もう体裁を気にする状況では無くなった僕は、警察署の入口までダッシュして中の人に呼び掛ける。
「僕を中に入れて下さい! ここに感染者の、ゾンビの大群が近付いています! 速くここから逃げないと避難所は全滅です!」
「き、君は手配書にあった少年! ゾンビの大群というのは本当か?」
「はい! あっちの方角からです。あと二時間もしないでここに来てしまうかも知れません!」
「……一旦、中に入って来てくれ。武装解除はしてもらうぞ」
「わかりました」
僕はハシゴを登って中に入り、身体を検査された後に手錠を掛けられた。
まあこんな物はいつでも外せるから良いか。
「午前中に僕の仲間の三人がここに来たはずです。今、何処にいますか?」
僕はしゃべりながらサーチで方向を特定していた。
この位置は……
「あっ! おい!」
「待てっ!」
僕は手錠をアイテムボックスに入れて外すと、警察官達の制止も聞かず
ーーーーー
数十秒後、僕は留置場の前にいた。
ここは以前、僕も入れられた事がある場所だ。
「虎太郎さん、明人君、赤羽君! 無事で良かった!」
「大将! 待ってたぜ!」
「「冴賢さん!」」
「どうして留置場に?」
「それが僕達が名前を言ったら、前回ここを出る時の騒ぎで僕の名前もチェックされていたみたいで、ここに入れられてしまったんです……」
「ああ、スレッジハンマーで暴れてやろうかと思ったぜ! 大将、これ外してくれよ。俺だけ手錠を掛けられたんだ。ふざけやがって!」
明人君が説明し、虎太郎さんは手錠を掛けられて怒っているみたい。
恐らく警察官も大柄な虎太郎さんに暴れられるのが怖かったんだろう。
僕は手を向けて虎太郎さんの手錠をアイテムボックスに格納して外し、サイコブレードで留置場の格子を斬り裂いて、破片も格納して出られる様にした。
そして、こうしている間にも感染者の大群が近付いてきていた。
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