第41話 謝罪と口止め(7/29)
「時間をいただいてすみません。皆さんにはご迷惑をお掛けしました」
僕はリーダーや大人の人に頭を下げる。
「それはいいんだが……彼らは殺されるまでの事をしたんだろうか? それと君のその力は……」
リーダーの男性が皆を代表して遠慮しながらだけど聞いてくる。
「はい。彼らは僕を殺すためにわざと駐車場の感染者を誘導しました。僕はとある理由で敵対者は容赦出来ないんです。僕の力については答えることが出来ません」
「そうか……」
「心配しなくても僕は直ぐに避難所を出て行きます。そういう契約だったので。帰りの道でも残った全員が無事に帰れる事を保証しますよ」
「……分かったよ。ありがとう」
「それと皆さんにお願いがあって、僕の事は当分は家族であっても黙っておいて欲しいんです。これを守ってくれるなら一人一つずつ欲しいものを、今すぐに差し上げます」
リーダーの人も含めてビックリする大人達。
逆に言うと約束してくれない人は始末すると言うニュアンスを含んでいる。
本当は無害な人達にそんな事はしないけど大人なら妥協してくれるはずだ。
「俺は約束しよう……そのう、タバコを貰えるか? 銘柄は何でもいい……」
「分かりました。はい、どうぞ」
僕はアイテムボックスから適当な銘柄のタバコを5カートンほど取り出して、一番最初に手を挙げた人に手渡した。
「!」
本当に貰えるとは思っていなかった大人達は驚愕した様子だった。
ーーーーー
あの後は結局全員の欲しいものを聞き、全て用意して渡すことが出来た。
ある人は食べ物、ある人は道具、ある人は持病の薬など希望の物を手渡す。
医薬品を望んだ人には少し多めに用意して渡すと、物凄く喜ばれて絶対に口外しないと約束してくれた。
生き残った高校生は指の治療を希望したけど、治療は出来ない事を話すと全員が義指を希望したので、消毒液、包帯、抗生物質などの医薬品と、義指を検索して手渡した。
体格の良い男子は失血で意識を失っていたのでそのまま置いておく事にした。
僕に敵対した彼を連れて帰ろうと言う人は誰もいなかった。
僕達は調達した大量の物資を戦利品にして、避難所に向けて出発するのだった。
ーーーーー
「そうか、高校生に犠牲が出たか……」
「はい。彼らも良く頑張ってくれたのですが……」
帰り道、感染者は僕が遠距離からサイコバレットで始末出来るので、荷物は積んでいるけど行きよりも早く帰ることができた。
今は帰還した全員が揃って、避難所のリーダーに結果を報告しているところだ。
物資調達のリーダーが、約束通り僕の力の事や僕が殺した事は言わずに報告してくれていた。
「しかし、皆良く頑張ってくれた! これだけの物資があれば2ヶ月は持ちそうだ。数日はゆっくり休んでくれ!」
避難所のリーダーの言葉で解散となった。
ーーーーー
僕は居住区に戻りながら考えていた。
光司君と美久ちゃんを、このままこの避難所に置いて大丈夫かと。
この避難所の戦力はハッキリいって微妙だ。
リーダーは勿論いい人だけど、この先ずっとここを維持できるとは思えない。
役所系の避難所は、いずれは公的な支援が訪れると思って運営していると思うけど、僕は簡単にはそうならない事を知っているからだ。
パンデミックは地球全体が汚染されている以上、基本的には収まらない。
それどころか避難所の崩壊がワンセットまである。
物資に限りがある以上いずれ必ずそうなるだろう。
二人を置いておくにしても拳銃などを保持している警察か、自衛隊などの武力があるところでないと安心出来ない。
僕は二人が望むなら、連れてここを出ようかとの決心をするのだった。
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