第38話 卑劣なトレイン(7/29)
目的のスーパーまでは徒歩だと一時間ぐらいかかるらしい。
運搬班はリアカーを何台か引いているので、もう少し進みは遅くなってしまうかも知れない。
運搬班に合わせて隊列が伸び過ぎない様に皆が注意して進む。
僕はサーチを駆使して少し先行して感染者に対応したり、横から現れる感染者に対応したりで縦横無尽な活躍をしていた。
既にある程度の強さは見せているんだ。
僕が何もせずに人が死んでゆくより良いだろう。
超能力を開放して見せてしまうと、僕は化け物呼ばわりされて忌避される存在になってしまうかも知れないので、非常時以外は使わないと決めている。
そして誰も脱落せずに目的のスーパーまでたどり着く事が出来た。
今回の作戦のリーダーの合図で皆が集合する。
次の合図で釣出班が駐車場に行き、大声やら大きな音を出し始めた。
見た感じ、うまく数十体はいる感染者の注意を引けたようだ。
続いてスーパー内の釣出班が扉を開ける。
店内からも続々と感染者が音に釣られて出て来てる。
戦闘班は可能な限り釣り出している感染者を各個撃破する。
事前の打ち合わせ通り僕はスーパーから出て来る感染者の対応を行なった。
ーーーーー
粗方の感染者が釣り出されたので、運搬班と護衛の戦闘班がリアカー数台を入口付近に停めてスーパーに入って行く。
ここが正念場だ。
運搬班が仕事を終えるまで、釣出班と戦闘班が踏ん張らなければならない。
戦闘班はスーパー内の護衛もあるため数は半分だ。
僕は継続してスーパーから釣り出された感染者の対応を行っていた。
ゾンビ映画では、感染者は生前の記憶から人の多い場所に集まるという事だったけど、スーパーに来ている感染者は流石に数が多い。
途中で護衛の戦闘班の高校生が来てスーパー内への救援を要請したので、さらに戦闘班が少なくなって残った人が苦戦を強いられる事になった。
僕はサーチを駆使しながら戦闘班に犠牲が出ないようカバーして立ち回っていた。
だけどその時僕の背後から凄い数の感染者が集まって来ているのが分かった。
「馬鹿! そっちに行くな! 戦闘班が全滅するぞ!」
リーダーの叫び声が辺りに響く。
釣出班の高校生達がスーパーの外ではなく、戦闘班を巻き込む様な感じで誘導しているのだ。
これを狙っていたのか! 僕は直ぐに理解した。
これはMMOゲームで言うモンスタートレインだ。
※多人数参加型のオンラインゲーム
ゲーム内でモンスターを退治せずに大量に引き付けて、電車の様に列となったモンスターを他のプレイヤーになすり付けて殺そうとする迷惑行為。
確かに今の状況で感染者をモンスターだとするとトレインが成立するけど、現実でやった場合は立派な殺人行為だ。
しかも僕だけではなく他の戦闘班の人まで巻き込むとは。
戦闘班の人達だって家族が無事を祈りながら帰りを待っているんだ。
このままだと僕と共闘している戦闘班の人は確実に死ぬ事になるだろう。
所詮は他人事だけど、この人達の家族に悲しい思いをさせたくない。
僕は怒りを込めながら超能力
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます