第29話 別たれる道(6/6)
僕たちはこの前の区役所の時のように検査を受けた後、少し事情聴取をされた後に婦人警官の人に避難者が集う区画へと案内された。
「ここに避難者の方が暮らしています。弟さん、いらっしゃると良いんですけど……」
「ご案内ありがとうございました」
「ありがとうございます……」
僕は桑田さんの弟さんの顔を知らないので、手分けして探すことは出来ない。
二人で各部屋を周りつつ確認して行く。
「あれ! 明日奈ちゃん!」
「純一さん! 明人! 明人を見ませんでしたか?」
どうやら桑田さんの知り合いの様だ。
しかもお互いを名前で呼び合うくらい親しいみたい。
「お、落ち着いて。明日奈ちゃん! 明人君ならこの警察署にいるよ!」
「え! 本当ですか! 何処ですか?」
「一番端の部屋だよ。こっちだ」
純一という人が桑田さんの手を引いて小走りで進んでゆく。
僕も遅れないように着いていった。
まだ僕を紹介してくれていないんだけど、この状況だと仕方がないかな。
しかし弟さんが無事で見つかって良かった!
「明人っ!」
「えっ! 姉さん!」
桑田さんはどうやら弟さんを発見したらしく、お互い涙を流しながら再会出来た喜びで抱き締め合っている。
その場には同じ中学生と思われる男女数人も避難しているようだった。
同じ中学から脱出して来たのかも知れない。
積もる話もあるだろうし、僕は感動の再会の邪魔をしないよう部屋の外で待機していた。
ーーーーー
「君は? 明日奈ちゃんと一緒にいたみたいだけど」
桑田さんを待っている間、僕は純一という人に話し掛けられた。
「僕は
「そうなのか。俺は
「いえ、その、
今の会話で繋がりが見えてきた。
純一さんは桑田さんの幼馴染の兄なのだろう。
あの幼馴染の人は無法者達を撃退した時に別れたままだけど……
「そうか、分かったよ。でも、明日奈ちゃんを送り届けてくれてありがとうな! 後は俺が面倒見るよ、俺たちは家族みたいなものだから。そのリュックも明日奈ちゃんのかい?」
「……あ、はい。そうです……」
「なら、貰ってゆくよ」
純一さんは僕から受け取ったリュックを持って、桑田さんと弟さんに合流した。
弟さんは自分のリュックを見て凄く喜び、純一さんにお礼を言っている様だ。
リュックをここまで運んだのは僕なんだけど……
桑田さんは、純一さんが僕が持っていたはずのリュックを持って来たのを見て、僕に気付いて小さく手を振ってくれた。
恐らく弟さんと会えた喜びでまだまだ一杯なのだろう。
少し疎外感を覚えた僕は、その部屋を後にした。
ーーーーー
佐々岡さんと桑田さんを在るべき場所に送り届けた僕は、達成感からどっと疲れが出たのか、空いている場所で少し休んでいるうちに寝てしまった様だ。
誰かが気を使ってくれたのか僕に毛布が掛けられてた。
もう夜になっている、桑田さんは何処だろうか?
順一さんは家族の様なものだから俺に任せてくれと言っていたが、一応本人にも今後の予定を聞いておくべきだろう。
もし桑田さんが望むなら僕の家族と合流して助け合って行くのも良いかも。
僕には白蛇さんから授かった力があるのできっとみんなの役に立てるだろう。
これまで通り桑田さんを護っていけると思うと少し嬉しさがこみ上げる。
僕の顔は赤くなっていないだろうか心配だ。
僕は桑田さんはどこなんだろうかと思いつつサーチを使ってみた。
するとサーチが桑田さんらしき青い点を点滅して示した。
僕はサーチにこんな機能が! と少し驚いた。
桑田さんの位置は、避難者の区画から少し離れた薄暗い倉庫の様なところだ。
よく見ると誰かと一緒のようだ。
声を掛けようと近付いた僕はドキリと心臓が跳ね上がった。
桑田さんが純一さんに抱き締められていたからだ!
薄暗い中でニヤリとする純一さんと目があったような気がした。
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