第20話 感染者との戦闘(6/3)
昨日は佐々岡さんの足の具合や、男達との遭遇戦で精神も疲弊していたので、朝まで休む事になった。
翌朝早く起きた僕はアイテムボックスからお米5kgを取り出し、この家にあった土鍋とペットボトルの水でご飯を炊き上げた。
炊いている間、僕は自分を鍛えようと考えて各種の筋トレ、バールの素振りなどを行った。
残った米はアイテムボックスにしまい、ご飯を冷ましながら、焼きのり、塩、梅干し、焼鮭の瓶詰めをアイテムボックスから取り出す。
手を手首までよく洗い、少し冷ましたご飯でラップ越しにおにぎりを作る。
ラップは悪いけどこの家にあった物を拝借した。
形を整えつつ梅干しか焼鮭の瓶詰めを具として握り、全体的に塩をふって焼きのりで包む。
出来たおにぎりは朝食べる用と、アルミホイルに包んでお弁当用に分ける。
僕は二人に朝食が出来た事を知らせに行った。
ーーーーー
二人を呼びに行った僕は桑田さん、佐々岡さんと挨拶を交わして朝食が出来ている事を伝えた。
「桑田さん、お、おはよう。佐々岡さんも。朝食、出来てるから」
「う、うん。荒井君、おはよう!」
「おはよう……」
桑田さんとは昨夜心が少し触れ合ったせいか気恥ずかしく、挨拶もどこかぎこちなくなってしまった……気を悪くしていなければ良いけど。
「わあ〜おにぎりだ! 荒井君ありがとう!」
「美味しそう! ありがとう……」
桑田さんのこの元気さを見る限り大丈夫そうだ。
佐々岡さんも僕が男達と戦って護れた事で、また少し信頼してもらっているような気がする。
「もう一食分も同じおにぎりになってしまうけど用意したよ。僕がリュックに持っておくね」
「やった! こんな美味しいおにぎりがもう一回食べられるんだ!」
食べながらお弁当がある事を伝えると桑田さんが笑顔で喜んでくれる。
その喜ぶ笑顔を見て凄く嬉しくなった。
僕は自分はなんて単純なんだろうと思った。
ついこの間まで真理と達也に裏切られたショックで相当落ち込んでいたけど、桑田さんと一緒にいると、そんな事など忘れてしまっている自分に気付いた。
確かにあの二人には見捨てられたけど、必要としてくれる人は他にもいるんだ。
僕を必要として頼ってくれ、裏切らずに一緒に進んでくれる人達を大切にしよう。
まずはこの二人を在るべき場所へ贈り届け、そして僕も家族の元へ。
僕は決意を新たにするのだった。
ーーーーー
再び出発して佐々岡さんの自宅を目指す。
日数的に通常の家だと物資が足りずに何処かに避難している可能性が高いけど、避難先の書き置きなんかが残されているかも知れない。
僕はサーチを駆使しながら感染者を避けて移動する。
ポツポツ見える青い点にも警戒しながら進む。
またこちらを襲ってくる輩かも知れないからだ。
進む途中、どうしても動こうとしない感染者の小集団に遭遇した。
どうやらかなり年配の感染者達らしく動きが相当鈍い。
迂回方向には別の感染者がパラパラ点在してるので、ここは推し通る事にした。
僕一人ならともかく女子を二人連れて、全ての感染者に見つからずに長距離を移動するのは不可能だ。
いずれ感染者は倒さないと生きていけないだろう。
生きるためなんだ!
僕は自分に強く言い聞かせ、バールを掲げつつ桑田さん達に告げる。
「あの感染者達を倒さないと先に進めないみたいだ。僕がこれで倒してくるから、ここで待ってて」
「うん……気を付けてね」
「……」
僕はサーチで周りに近付いて来る他の感染者がいない事を確認して、バールを構えて突撃した。
狙うのは頭部だ。
どのようなウィルスだろうと身体を動かしているのは頭部だろう。
映画でも弱点は100%頭というか脳だったはず。
とはいえたぶん人間の頭部はかなり硬いと思う。
上から叩くだけだと映画のように簡単にへこんだりはしないだろう。
となれば目のあたりから突きで脳を破壊するのが良いかも。
僕は高速で1体目の前に出ると眼窩にバールの尖端部分を突き刺した。
少し力を入れすぎたのかバールが頭蓋を貫通する。
それを受けた感染者は予想通り糸が切れた様に倒れた。
既に死んでいるからか出血はあまり無い様子だ。
僕が一体目の余韻に浸っていると、他の感染者が僕に気付き体の向きを変え手を伸ばしてくる。
さっきから普段より時間の流れがゆっくりに感じる。
不思議な感覚だ。
あの男達と戦った時にも同じ様な感覚があった。
もしかしたらこれも白蛇さんがくれた力なんだろうか?
慌てずに二体目も同じ様に突き刺す。
そして三体目の突進は回避して四体目も倒し、三体目は倒れて起き上がろうともがいているところに止めをさした。
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