第8話 白蛇さん(5/31)
気が付くと白蛇さんと僕だけが真っ白い空間にいた。
僕は感染者に襲われていたはずだ。
ここは何処だろう?
もしかして死んだ後の世界なのかな。
僕は立ち上がってなんとなく白蛇さんに呼び掛ける。
「白蛇さん?」
「なあに?」
僕の呼び掛けに白蛇さんが答えたので超ビックリした!
「しゃ、しゃべれるの!?」
「ええ。私はこの地の神だから」
白蛇さんが赤くて長い舌を時折チロッと出しながら答える。
「えっ、神様なんですか!」
僕はそれを聞いて慌てて
「そう
「えっと、
「いいえ。もう戻ってくるつもりはないの……もうこの世界にはうんざりしたから。この世界は欲にまみれた人間が増えすぎたのよ。皆が助け合いの心を忘れ、素晴らしい命の大切さを感じず争い合い、自分さえ良ければと平気で他者を傷つける。そして遂に世界にとんでもないウィルスがバラ撒かれた。この地はもう汚染されて今までのような繁栄は訪れないでしょう。だから私はもうこの世界を捨てここを去る事にしたわ」
「そうですか……この世界は、日本はどうなってしまうのでしょうか?」
神がこの世界を捨て去ると聞いて僕は青い顔で質問する。
「神がいないに状態になるわね。そして世界中に拡散されたウィルスによるパンデミック。恐らくこの世界では多くの生物が死ぬでしょう。罪ある者も罪なき者もね。そしていつかは自然に浄化されて全てが無に還るのよ」
「そんな……神様の力でなんとかならないのでしょうか?」
僕はダメ元で聞いてみる。
「私がここを去る事はもう決定事項なの。今は最後に少しだけこの世界の様子を見に来ただけ。だけど偶然出会ったあなたは力の無い状態に
「えっと……僕はゾンビ、ウィルスの感染者に殺されたと思ったんですけど……」
「いいえ、あなたは死んでいないわ。襲われた時に時間を止めて一時的にここに移動したの。ここは時間が止まっている魂の世界なのよ」
「時間が! 凄い……えっと、その力があれば僕は皆を救えるのでしょうか?」
「神でもなければそれは無理ね。あまり多くを望んではいけないわ。あなたに出来るのは自分と自分の仲間たちを護って共に生きる事よ。いずれこの世界が無に還る時までね。もし大いなる再生の時まで正しい人間として存続出来れば、子孫が次代の人間として組み入れられる可能性もあるわ。頑張りなさい」
「分かりました。ありがとうございます。精一杯頑張ります!」
「それと、これからあなたに与える力は一度には発現しないわ。そうしないと身体も精神も壊れてしまうから。あたなに必要な時に合わせて発現するでしょう。ふふっ。でも先にあなたが一番欲しがりそうな力をあげる事にしましょう!」
白蛇さんはそう言うと僕に真っ黒な渦巻のような物を投げてきた。
僕はそれを危なっかしくキャッチした。
「うおっと! こ、これは何でしょう!?」
「それはね。あなたの頭の中にある言葉に置き換えると〈アイテムボックス〉という物よ(厳密に言うと少し異なるわね、まあいずれ気付くでしょう)」
「えええっ! アイテムボックス!」
その言葉に僕は驚愕して身体中が震えた! ファンタジー小説で良く出てくるあれだ! 確かに僕が一番欲しい力だ! さすが神様、何でもお見通しなのだろうか。
「ふふっ。そんなに喜んでもらえて良かったわ。その中には色々な品が最初から使い切れないぐらいに入っているから、生き延びる為に遠慮なく使いなさい。力を与えた者にすぐに死なれたら、私が神界で凄く恥ずかしい思いをするのよ」
「はい。本当にありがとうございます! こんな素敵な力、夢のようです!」
「それと怪我も服も全て治してあげましょう。ついでに少し性能もアップね。いずれは自分で治療も出来るようになるわ」
白蛇さんがそう言うと僕の怪我が全て瞬時に治り、服や靴まで新品となった。
「何から何までありがとうございます」
「ふふふ。いいのよ。最後に言っておくわ。あなたを裏切ったり理不尽に攻撃してくる者には相応の罰を与えなさい。あなたに神罰の代行者の地位を与えておきましょう。これがあれば例えこの世界の全生物を殺し尽くしたとしても、あの世で罪に問われる事はないわ」
「そ、そんな事はしません……が、分かりました。あの、白蛇様あなた様のお名前を教えていただけないでしょうか?」
「私には様なんてつけなくて良いわ。でも私の真の名前はあなた達では理解も発音もできないから……そのまま白蛇と呼びなさい。さあ、そろそろ元の世界に戻るのです!」
そして僕の中に何かが入ってくる感覚があり、意識がそこで途切れた……
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