第3話 食糧の確保(5/26)
「なるべく急いで!」
「わかったわ!」
「おう!」
僕たちは食糧を得るべく購買にダッシュした。
もう昼のピークは終わっているが、まだ買える食べ物はたくさんあった。
パンやおにぎり、飲み物を買えるだけ買ってそれぞれのカバンに詰めた。
もちろんペットボトルの水も多めに買っておく。
とりあえず時間節約のため僕が纏めてお金を払った。
購買のおばちゃんは外から聞こえる悲鳴など、かなり不安そうな様子であったが、放棄する事なく自分の仕事をしてくれた。
初動が速かったのでかなりの水と食糧を買う事が出来た。
3人で節約すれば1週間ぐらいは持つだろう。
僕はこの後、教頭の指示通りにするか独自の行動を取るかどうかを迷った。
圧倒的に情報が足りない。
「そうだ! 二人とも、すぐに家族に連絡をしてみて! もしかすると今後連絡が取れなくなるかもしれない! それとスマホのニュースを確認しよう!」
僕たちは購買近くで立ち止まってスマホを操作する。
やはり電話は通じない!
回線がパンクしているようだ。
僕は家族用のチャットアプリで連絡をしてみる。
『今のところ僕は無事だよ。今は高校にいる。とりあえず学校の避難指示に従うよ』
返事が来るまで、3人でブラウザを立ち上げてニュースサイトを眺める。
「えっ! 日本各地で謎の通り魔事件多発だって!」
「それだけじゃない! 英語サイトにも似たようなニュースがあるぞ!」
僕も自分で見つけたニュースを開いて見てみた。
どうやら世界中で午前中から同じ様な事件が起こっているらしい。
テレビが見れたらきっとテロップでも流れているんだろう。
「よし、一旦は教室に戻ろう。だけど最悪はこの食糧を持って僕達だけでここを脱出しよう!」
僕は二人に静かに話しかけ、階段を駆け上がって3階にある教室に戻った。
ーーーーー
教室にはクラスメイトたちが怯えた様子でグループ単位で固まり合っていた。
「ねえ。職員室に行ったんでしょ! どうだった?」
クラスカースト上位の金髪ギャルである
「教頭の指示はとりあえず教室に待機だ。体育館に集合するかもと言っていたな」
皆が注目する中、
みんなはそれを聞いて
不安そうだし、泣いている子もいる。
すっかり忘れていたが僕はクラスカーストでは最底辺だ。
僕はそんな感じだけど
前に僕と付き合っているのかと面白半分に聞かれていたりしたが、その時にはっきりとただの幼馴染と言い切っていた。
それを教室の花瓶の水を変えていた時に隠れて聞いていたのは秘密だ。
僕はこんな時なのにそれを思い出して少し悲しくなった……
気を取り直して窓から校庭を眺める。
校門のところで襲われていた体育の先生が倒れている。
それに数人の生徒もあちこち血塗れで倒れているようだ。
ここからではよく見えないけど校舎の入り口付近で、教職員と外から入ろうとしている人達で何人かが揉み合っている様だった。
その中から何人かの教師が倒れている人達の救助に向かう。
これは僕が思うに完全に悪手だ。
まずは門を閉めて流入を防ぎ、暫定感染者の隔離や排除をすべきだろう。
校舎に立て籠もるなら侵入出来ない様なバリケードも必要だ。
幸いこの高校は駅から結構離れた小高い位置にある。
初動が良ければほとんどの生徒が助かるかもしれない。
だけど僕には何の権限も無いんだ……
そう考えているうちに家族チャットの返事が来た。
『パパ(10:36)今朝から通り魔騒ぎが多発している。もしかすると全世界的なバイオハザードかも知れない。これからママを連れて玲奈を車で回収してくる。悪いがそちらまで手が回りそうに無い。お前はなんとか家に自力で戻って欲しい。俺たちはしばらく家から動かない予定だ。必ず無事で帰るんだぞ!』
えっ? これは返信じゃない。
午前中にパパが送ったメッセージが遅れてこちらに届いただけだ!
これはネット環境も相当悪くなっているみたいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます