恐怖心からの優しさ

 少し進んだところでわたしのあしは、自転車をこぐのをやめた。というか、怖くてこげない…のだ。

 

 

 わたしが急にこぐのをやめたから功太が

「おい、もうサボりかぁ」

 と笑いながらわたしの方を見たんだけど、わたしの顔を見るなりすぐに感づいた功太。

 

「え、もしかしてかづ…まだ高いところ苦手だったりする?」

 と心配そうに聞いてきてくれた。

 

 なのでわたしは、

「…うん」

 と頷いた。

 

「あー、だから遊園地楽しみ?とか聞いてきてたのかー。かづー、不安だったんならムリして遊園地にしなくてもよかったのに」

 となにやら勘違いをされた。

 

 …そ、それは功太を心配していただけだったんだけど…でも、今はわたしが心配されている。

 

 後ろを向いて功太は、戻ろうとしてくれたけど、もう次の人が来ていたので戻ることができなかった。

 

 すると功太がいきなり

「仕方ねーなぁ。」

 と言いながらわたしの肩を抱き寄せた。

 

 ドキッとした。

 

「えっ…?」

 戸惑うわたしに

 

「こうしてくっついてりゃ少し不安も落ち着くだろ」

 と功太は、わたしを安心させてくれた。

 

 これなら怖くない…かも。

 でも、ドキドキもとまらないよ?

 

 功太にこのドキドキがバレないか心配になるほどドキドキしていた。

 

 でも…

 

 功太の優しさに包まれながら少し高いところが慣れてきたわたしは、

「もう大丈夫かも!今度はわたしがこぐよ」

 とこぎ出したが…

 

「おまえ…あと一メートルもないじゃんかよっ」

 て功太が笑いながらわたしを優しくこついた。

 

 

 

 自転車を降りるとなっちゃんが、

「なんかいい感じだったじゃんっ」

 てニッコリした。

 

 あぁ、なっちゃんや。

 あなたこそ舜くんといい感じだったじゃありませんか!

 

 もう、この際二人はさっさとお付き合いしてしまいなさいよ。

 そして、功太は…功太は…

 

 その…功太は、わたしが振り向かせてみせるんだから‼︎

 と脳内宣言してみたものの…

 

 世の中は、そんなに簡単じゃないことくらいこんなわたしでもわかるのだ。

 

 

 どなたか人の心を簡単に変える魔法のお薬持っていませんか?と心で呟いたその時…

「ティッシュどうぞ〜」

 と目の前にティッシュが現れた。

 

 

 …

 

 とりあえずニッコリして、

「あー、ありがとうございます」

 といただいた。

 

 ほんとは、魔法のお薬が欲しかったけど…ま、ポケットティッシュはあって損はないよね?とポケットティッシュをバックにしまった。

 

 続く。

 

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