新しい制服

 なっちゃんとこーたは、きっと両思いなんじゃないかなって思う。

 

 …

 

 そのことを考えるといつも胸がチクッとする。

 

 わたしだって、見た目はそっくりなのにな…。

 

 こーた…。

 なっちゃんじゃなくてわたしをみてよ…

 

 …

 

 

 そんなわたしは、一人恋の一方通行中だ。

 

 

 

 

 わたしの隣で、ふんふんと鼻歌を歌いながらなっちゃんは、中学の制服を着て入学式に向けての再確認中。

 

 …そんな、着なくても寸法測ってつくったんだから大丈夫でしょ?と思うのはわたしだけ?

 

「なっちゃん、入学楽しみ?」

 とわたしが漫画を置いて聞くと、

「そりゃ、新しい出会いがあるかもしれないから楽しみだよー」

 とニッコリした。

 

 …え?

 新しい出会い⁉︎

 

 こーたと両思いなのに⁉︎

 

 え?

 それとも…、双子のわたしなんかよりもっといい友達との出会い⁉︎

 ってこと…⁉︎

 

 …

 

 えと…。

 わたしってば…、バカらしい。

 

 なんて質問してるんだろう。

 

 はぁ…

 

 そうだよね、なっちゃんは双子だからわたしといつも一緒にいてくれてたけど、ほんとはもっと他の子と仲良くしたかったよね…。

 

 わたしがぼっちにならないようになっちゃんは、いつもわたしのそばにいてくれてたんだ。

 

 

 少しなっちゃん離れしなきゃだな…。

 

 

 そしてついに入学式

 

 なっちゃんは、事前に制服を試着していたから準備がスムーズだった。

 

 でも…でもわたしは…アタフタアタフタ…

 

 支度を終えて先に外で待ってるよーとなっちゃんの声が聞こえた。

 

 はーいと返事をしてわたしも早く出なきゃ…って思ったんだけど、そとから…

 

「おー、いいじゃーん」

 と功太の声が聞こえた。

 

「こーたも似合ってるよ」

 となっちゃんの声もした。

 

 …あーあ。

 そうだよね…。そうなるよね…。

 

 黄色い声が心にチクチクと刺さりまくる。

 

 ゔっ…

 聞きたくないのにきこえてくる…

 

 でもさ…、なっちゃんよりもわたしが先に功太に制服姿みて欲しかったな…。

 

 少ししょんぼりしながら、

「二人ともお待たせ」

 というと、なっちゃんがわたしをみて、

「いいね〜、じゃ行こっか!」

 と声をかけてくれた。

 

 功太は………功太は、わたしの姿をじっと見たかと思うと、

「相変わらずおせ〜よ」

 といった。

 そしてまたなっちゃんが、

「じゃ、行こっ!」

 といい歩き出した。

 

 二人の後ろ姿をみて改めて思う。

 

 …お似合いだなぁって。

 

「ほら、おいてくよ〜」

 明るくなっちゃんが振り向いてわたしに笑いかけてくれた。

 

 功太は、振り向きもしないで手で早くこーいってジェスチャーをした。

 

 振り向きもしてくれないんだ…。

 なっちゃんみたいにいいじゃんって言って欲しかったな…。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る