劣等感まみれの俺が一歩を踏み出して人生変えた話

さくた

プロローグ 並川アキという高校生

並川なみかわアキ、高校1年。


といっても今は1年の3月で、もうすぐ2年生になるところだが。


俺は自分のことがあまり好きではない。

自分のことを好きか嫌いか、という問いには、嫌い、と、答えてしまうだろう。


顔はイケメンではない、かといって特段悪いわけでもない。


自分の容姿を値踏みするなら、

客観的に見て中の中、かなり甘めに見積もって中の上、といったところだろうか。

別に悪くはないけど、特段良くもない。


中学の頃に1度違うクラスの女子に告白されたことがあったが、

あまり容姿がタイプではなかったため付き合うまでには至らず、交際経験は未だない。


そもそも女子とのコミュニケーションが苦手で、

今よりも無邪気で元気だった小学生の時以来、

まともに女の子と喋れたためしが無い。

女子と仲良くなりたいという男子高校生なら誰しもが持ってる(?)願望はもちろん俺にだってあるのだが。


中学は、女子と仲良くしている男子を冷やかすという文化があったため(スクールカースト上位のヤンキー軍団は除く)、女子とのコミュニケーションの機会がほとんどなかった。

それが今の今まで尾を引いているわけだ。


今もそうだが、俺は人の目をかなり気にする方だし、1人ぼっちになりたくないから、そうなりうるキッカケを作らないように、ということを第一に生きてきた。

その結果が16年間彼女なし、である。


当たり前だが、女子とのコミュニケーション能力がない男はモテない。

男は容姿が飛び抜けて良くないかぎり、

女の子から歩み寄られることはほとんどないのではないか。

容姿が悪いわけでは無いが、飛び抜けて良くもない俺は、例に漏れずそうである。


女の子と親しい関係になるのは至難の業なのだ。

正直今のところ高校生活で彼女ができる目処が立っていない。


運動神経は並。

苦手なわけではないし、むしろ運動は好きな方だが、人より特段優れているわけでもない。


一応、中学から始めたサッカーを高校でも続けている。

地区大会でせいぜい良くて2回戦負けの、いわゆる弱小校だが。


部員のモチベーションはあまり高くない。

弱小校はなるべくして弱小校になるんだなと思う。

取り組む姿勢が適当だと強くならないに決まっているのだ。

俺はやるからには上を目指していきたいと考えるタイプだが、正直周りが適当だとその意識を保つのは難しい。


辞めたとて何か他になりたいことがあるわけでもないし、単純にサッカー自体は好きなので今もこの部活に所属しているが、自分の全てをサッカーに捧げていたといっても過言ではない中学時代とのギャップは正直感じる。


何かに打ち込むことや、物事に熱中している状態が俺はすごく好きで、できることなら常にそうありたいと思っているが、

そういう対象が今のところ見当たらず、毎日「果たして俺はこのままでいいのだろうか」と悶々としている。


持て余しているエネルギーをぶつける場所がない、というような状態である。


勉強に関しては、偏差値50程度のなんちゃって進学校の中で、学年15番〜30番以内あたりをうろついている。

全国的な偏差値は50代前半、得意な国語や英語で60代前後。


母親の教育もあって、小学生の頃から宿題もサボらずにそこそこしっかりこなすタイプだたため、全国的にみても中の上、くらいの偏差値を保てている。


ちなみに、自分の人間としての能力値の中で1番高いのは学力であると自負している。


今通っている高校はド田舎の公立高校なのだが、第一志望の私立高校に落ちた後に、

「自宅から通える且つ自分の学力で確実に合格できて偏差値が低すぎない高校」というなんとなくの基準で選んだ。


1年の時は5クラス中1クラスだけ成績優秀者が集まるクラスが作られるのだが、俺はその中に入っているため、学内では「頭が良い人」という扱いをされることが多い。


ただ、自分の中では、ただ真面目に16年積み重ねてきた結果が成績という形で出ているだけで、自分自身のことを頭が良いなんて思ったことはない。


何もせずともなぜか高得点を叩き出すような、いわゆる「センスがある」人たちとは全くタイプが違うのだ。

やった分の結果しか返ってこない、いわゆる努力型の人間。

勉強に限らず俺はその傾向にある。


下手すると人の倍くらいの時間と労力かけてる時もあるし、本当にノー勉の時は成績があまり良くないクラスメイトよりも低い点数を取ってしまうこともある。


学内では成績はいい方で、全国的にも平均以上ではあるのは事実なのだが、

それはただ真面目に勉強してきた積み重ねの結果であって、センスがある人が本腰入れて勉強したら俺の成績なんてすぐ抜いてしまうだろうし、ましてや進学校の生徒たちと比べたら話にならない程度の学力なんだよな、と、俺はすぐ人と比べて自己評価を下げてしまう。


ご察しの通り、俺はかなり面倒な部類の人間なのだ。


友人関係に関してもそこまで広い交友関係があるわけではない。


同じ中学校出身の友人5人程度だったため、

高校では友達がほとんど0の状態からスタート。


最初の頃はノリが中学と違うから、という変な意地のせいであまり積極的に輪に入ろうとしなかったものの、次第に打ち解けていき、今ではクラスの男子とはだいたい誰とでも話せるくらいにはなっている。

合わない人たちとは積極的に関わろうとしていないが。


ちなみに今までの話は同性の友人関係に関しての話なので、当然ながら女友達はもちろんいない。


俺以外にもたまに見かけるが、同性とはそこまで不自由なくコミュニケーションが取れるものの、異性になった瞬間まったく喋れなくなるような人間なのだ。


また、自分のクラス以外の知り合いは基本部活のチームメイトしかいない。


なぜか他のクラスの人たちとも仲が良い人をチラホラ見かけるが、あれはなぜなんだろう。

しかも入学前からSNSでグループができてたりしてたみたいだし。


俺は別に暗いわけでは無い(多分)し、クラスメイトと騒いだりすることもできるが、自分の根っこの部分は陰なので、コミュ力高くて交友関係が広い陽キャを見ると「違う人種だな」と感じる。


そういう自分には無いものを持ってる人たちを見ると、羨ましさに近い感情を抱くことだってある。

おそらく俺はコンプレックスを人よりも抱えやすいのかもしれないな、と自負している。


ざっと俺についての説明はこんなところ。


人によっては、今の俺を見て「お前は恵まれている」と思う人もいるかもしれない。


よく学生モノの漫画や小説で目にする主人公は、友達ゼロの陰キャ非モテ男子。 


俺はそれとは少し違う。

家族もいるし、友達もいる。

運動も勉強もそれなりにこなしている。 


客観的に見たら確かに恵まれているのかもしれない。

でも、当の俺は恵まれているなんて思ったことは一度もないし、むしろ内には大きな大きな劣等感を抱えながら生きている。


全てにおいて特別なものを持ち合わせていない俺には何の価値があるのだろう。


別に楽しいことが何もないわけではない。


でも、俺はこのままうだつの上がらない日々を過ごしていくだけなのだろうか。


そんなことを考えながら、今日も俺は学校へ向かう。


これは、そんな俺が、思春期ならではのちっぽけな劣等感を抱えながら、

一歩ずつ前に踏み出していく成長の記録である。

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