第374話 イレギュラー、参上

「ステラ、どうす、るッ!!!!!」


レオナはゴブリンの喉を搔っ捌き、ウルフ系モンスターの飛ぶを蹴り砕きながら親友に可愛い後輩の援護に行くか否かを尋ねる。


「……ッ…………レオナ。どうやら私たちには私たちの仕事があるようです」


「う、わぁ~~~~……そう、みたいね」


ウルフ系モンスターたちのトップであるブランネスウルフだけではなく、ゴブリンたちのトップであるキングも出陣したことで……最後の一体も本格的に戦場に姿を現した。


(偶~~~~にあぁいう個体が生まれるって話は、聞いたことがあるけど……見たのは初めてね。にしても…………ぶっさいくね~~~~)


今回の討伐戦で、間違いなくイレギュラーと呼べる存在であり、ステラたちだけで対応しなければならない相手……ゴブリンの女王、ゴブリンクイーン。


「ステラさん、レオナさん」


「……クリスティールさんは、エリヴェラを助けてもらっても良いですか!!!」


三人で挑めば間違いなく倒せる。そう思ってクリスティールが声を掛けるも、ステラはこっちにそこまで戦力を回してはならないと返した。


「…………分かりました。ご武運を」


それだけ伝え、ローザたちの現場がまだ機能している事を確認し、ゴブリンキングと戦うエリヴェラの元へ向かった。


「ふぅーーーーー……ステラ、こっちはこっちで結構な感じよ」


オークの様に太った体型のゴブリンクイーンを守る様に、三体のゴブリンライダーが二人の前に立ちふさがる。


(Cランクの上位種……彼等を乗せるウルフも、全てブラックウルフ……女王を守る、近衛騎士といったところね)


ゴブリンに対して騎士と付けるのは如何なものではあるが、女王を守るライダーの眼はまさに騎士のそれ。


「だからといって、これ以上こちらに戦力は割けないよ」


「だね~~~……んじゃ、後輩たちはちゃんと仕事してるわけだし、うちら先輩もちゃんと仕事しなきゃ、ねッ!!!!!!」


ゴブリンクイーンが後方から放ったファイヤーランスを、レオナはドンピシャで横から蹴り飛ばした。


その隙を狙って三体のゴブリンライダーが襲いかかるも、そうは戦う聖女が許さない。


「「「ッ!?」」」


「そんな攻撃じゃあ、私を傷付けられないよ」


ステラにしては、珍しく敵を煽る。

だが、ライダーたちは決して実力だけでクイーンの護衛には選ばれておらず、一体だけがほんの少しだけステラの相手をし……その間、クイーンを狙おうとする不届き者に残り二体が迫る。


「っ!! ちっ、そう簡単には、当てさせてくれない、か!!」


距離が離れているとはいえ、斬撃波などの攻撃で少しでもクイーンにダメージを負わせたい。

しかし、そうはさせんと疾走し、得物を振るうライダー。


(あの魔力量……ぶっちゃけ、エリヴェラ並みに多い……もしかしたらそれ以上? だから、さっさと削りたいんだけど、ね!!!!)


本丸を削れないのであれば、周りから削れば良い……という簡単な話でもない。


ゴブリンクイーンを守る三体のライダーは強さだけではなく経験も豊富であり、中々二人の攻撃がクリーンヒットしない。


加えて、隙を見せればゴブリンクイーンの遠距離攻撃が飛んでくるため、そちらだけにじっくりと腰を据えることも出来ない。


(良いじゃん、良いじゃん…………どうにかしてやろうじゃんッ!!!!!!!!)


(これぐらいの脅威……突破できなければ、先には進めない!!!!!!!!)


三年生二人の闘志は進めない壁を相手に萎えることはなく、寧ろ更に燃え上がり、得物を……拳を強く握りしめた。






(うげっ!!!! あの、キモイのが……なんとなく、感じてた、イレギュラー、か)


チラッと視界に映った第三の脅威に対し、フィリップは思いっきり表情をしかめながらも、自身の仕事を遂行し続ける。


(ゴブリンキングの、方にはクリスティールパイセンが向かったし、とりあえず、大丈夫だとは思う……けど、やっぱ……さっさとこっちを、どうにかしてぇ、なッ!!!!!)


ブランネスウルフにはガルフとミシェラ。

ゴブリンキングにはエリヴェラとクリスティール。

ゴブリンクイーンと三体のライダーにはステラとレオナ……といった具合で、戦力の分配は悪くない。


しかし、全ての試合に今のところ強い勝機は見出せていない。


(やっぱ、ガルフたちの方が、一番心配だし、な)


友人の心配をしながら雷投げナイフを放ち、ゴブリンライダーが避ける方向を調整。

その意図を感じ取り、ヨセフの突きがウルフ系モンスターの頭部を貫く。


(なんとか、減らせてきては、いるけど!!! まだ、思ったよりキツイんだよな!!!!)


ブランネスウルフ、ゴブリンキング、ゴブリンクイーン……群れのスリートップがそれぞれ別れて戦うとなると、他のライダーたちは邪魔になる。


これまでの経験からそれを察知しているのか、三体の戦いの邪魔をしないように……残っているローザたちに戦力を集中させる。


それもあって、良い感じにライダーの数を減らすことが出来ていたものの、現在Bランクモンスターと戦っていない面々を除くと……合計で六人。

対して、まだライダーの数は二十体近くいるため、仕事量的には全く減っていない。


(どうにか、して……イブキをガルフとミシェラの方に、送りてぇけど……今のままじゃ、数が減るか、どうか……ッ、んなクソ!!!!!)


間一髪で爪撃を躱し、無理矢理短剣でカウンターを叩き込むも……後数センチ足りず、致命傷には至らない。


(いや、イブキじゃなくても、レブトパイセンを向こうに……いや、どっちゃにしろ、数が減らせねぇ!!!!!)


現状、ローザの護衛にヨセフとパオロ、レブトの三人を使用している。


三人はさすがに多いのでは? と思われるかもしれないが、二人の場合……片方が突破されれば、その攻撃力によっては防御壁を貫通し、ローザが戦線離脱を余儀なくされてしまう可能性がある。


(何か……何か良い手は、ねぇのかッ!!!!!!)


頭をフル回転させながらも、止めない。

めんどくささなど遠に掻き消えており、フィリップは同級生の為に、友人の為に……決して弱音を口には出さず、動き続ける。

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