第316話 繋がって、る?

(さてさて、何を話すっかね~~~)


ステラたちが女子会でキャッキャウフフ? 話している間、イシュドたちも聖都を観光するのではなく、質の高いカフェで紅茶と軽食を頼みながら女子会ならぬ男子会を開いていた。


「イシュド、本当に案内は良かったのかい?」


「直ぐにバトレアに帰るってわけじゃねぇからな」


イシュドの意見に、ガルフたちも概ね賛成であった。


「つっても、野郎だけで集まって何を話すっかね~~…………そういえばよ、こっちの野郎どもヨセフみたいに堅い連中ばっかなのか?」


「「ッ!!!!」


いきなりの下ネタに、紅茶を飲んでいたヨセフとパオロは吹き出しかけた。


「ごほっ、ごほっ! い、イシュドよ。そういう話は」


「野郎だけなんだし、別に恥ずかしがる必要はねぇだろ。なっ、フィリップ」


「まっ、そうだな」


そこら辺の感覚が同じであるフィリップは、同じく特に恥ずかしがる素振りは一切ない。


ヨセフは助けを求めるように王族であるアドレアスに視線を向ける。

だが……その希望は、あっさりと打ち砕かれてしまった。


「偶にはそういう話も良いかな」


「おっ、解ってんじゃねぇかアドレアス」


「二人共、そんなにあれこれ思い、深く考えることはない。イシュド風に言うなら、生きていく上で当然の様に湧いてくる欲だからこそ、恥ずかしがるだけ無駄……ってところかな」


「なっはっは!!!! そうそう、そういうこった」


自分の考えを本当に割と理解しているアドレアスに、イシュドは良い意味でニヤニヤとした笑みを浮かべた。


ちなみに、ガルフはこういう話に関しては未だに気恥ずかしさはあるものの、多少は慣れていた。


「そ、そうなのですか…………しかし、なぁ」


「うむ、そうだな」


ヨセフとパオロはそういった面を重んじるタイプの貴族令息であるため、本当に派手に遊んだことがなかった。


「……そういう面が、強さに繋がることも、あるのか?」


ネタがない。

ただ、ヨセフとしては気になるところもあった。


実際に手合わせして、イシュドは強い……半端なく強いと、嫌というほど解かった。

加えて、先日からメインの武器を使ってないとはいえ、フィリップとも何度も戦っている。


勝率は……基本的にフィリップの方が上であり、その際になんどもおちょくられる様な負け方をすることがあり、その度に苛立ちを感じるヨセフではあるが、今はそれがある意味自分とフィリップとの差だと認めていた。


だからこそ、もしかしたらそこに強さに繋がる何かがあるのかと考えた。


「いや、別にそれは関係な…………あぁ~~~~、どうなんだろうな。俺はそういうの好きだから、ある意味動力源になってる感じはあるな」


イシュドはまだ二十を越えていないが、前世の知識を活用して得た金。

単純にモンスターを討伐し、素材を売り捌いて得た金など、大金を持っているので娼館に何度も通っていた。


年頃の男子らしく、前世で遊び慣れているタイプではなかったこともあり、そっちの面は結構はっちゃけている。


「それは……生きて帰る為の、動力源になっているのか?」


「そんな感じかもな。あと、俺は刺激的な戦いをした後はムラムラが湧き上がるタイプでもあるからな」


「そ、そうなのか」


ヨセフはあまり解らなかったが、そういうタイプの人間もいるのだろうと思い、一蹴することはなかった。


「あれじゃねぇの。強さに繋がるかは解らねぇけど、色々と発散できれば、万が一こう……何かあっても、変な方向に進まずに済むんじゃねぇの」


思い付いた内容を、フィリップは一応神の存在を信じる信仰者たちの前ということもあり、それなりに言葉を選んで伝えた。


「むっ…………そういう見方も、出来るのか」


「なるほど……一理ある、と思えなくもないな」


「ですね」


三人とも貴族出身の令息ということもあり、元は信仰者であった者が道を外れ、大罪を犯してしまったという話を聞いたことがある。


どういった理由で道を外れてしまったのか、ある程度のところまでは知れても、本人ではないため、細かな心情や理由までは解らない。


「ほ~~~ん。そういう考え方もあんのか」


「イシュド的には、そういう意味もあって話してたんじゃねぇの?」


「いや、そこまでは考えてなかった。だって、性欲なんて人間の三大欲求だぜ。求めすぎて変な方向にいって、道を外れちまうのはアウトだろうけど、求めて当たり前の欲求だぜ? だからこそ、娼館っていう店が、商売が成り立ってるんだからよ」


まだ完全には受け入れられてないヨセフたちにとって、あまり好意的には受け取れない店、娼館。


しかし、そういった店が、商売が……何故成り立っているのか、潰れないのか。

それを改めてイシュドが伝えられると、ほんの少し……良い意味でヨセフたちの

頭に良い衝撃が与えられた。


「それによ、禁欲の果てに辿り着く境地なんて、たかが知れてるらしいぜ」


初めて聞く言葉である。


誰が言ったのかは解らない。

口ぶりからして、イシュドが考えた言葉……考えではない事は解る。


しかし……どこか、並々ならぬ説得力感じるヨセフたち。

この言葉に関して、フィリップたちも初めて聞くため、三人とも大なり小なり差はあれど、一応納得した顔を浮かべていた。


「なるほど…………その考えには、イシュドも納得してるのかい?」


「納得してるな。まずよ、我慢は体に良くねぇって言うだろ」


「そうだね。概ねその通りだと思う」


「人生、我慢して我慢しての人生を送るなんて、ぶっちゃけ辛いだけで、体に毒じゃん」


「「「「…………」」」


エリヴェラたちはそういった部分が生活の一部ということもあり、「確かにそうだな」とは頷き辛かった。


ただ、そんな中で唯一……クルトだけはあっさりとその通りだと頷いていた。


「別にあれだぜ、人の為に生きる人生ってのが、悪ぃとかクソ無駄とか思ってねぇぜ。そういった奴らのお陰で救われる人間がいるのも事実だからな。でもな……そういった生活を送ってても、てめぇの人生なのに他人の為ばっか動いてたら、どっかで限界がくるだろ」


「……何故、そう断言出来る」


強さとはまた別の部分に関する話ということもあり、ヨセフは今回に関してはそう簡単に納得出来なかった。


「世の中、努力出来るのも才能だってクソくだらねぇ事ほざく奴、いねぇか」


レグラ家にはそういった人物はおらず、イシュドがこれまで出会って来た人物の中にもそういった者はいなかったため、一応ただの予想ではあった。


だが、イシュドの言葉に関して、多少差はあれど全員が反応を示した。

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