第289話 先生たちなら?
「んじゃ、行くか」
高級宿の高級朝食を食べたイシュドたちは、到着した迎えの馬車に乗ってアンジェーロ学園へと向かっていた。
「いや~~~、朝食もマジで美味かったな」
「だね。正直、ちょっと食べ過ぎちゃったよ」
宿代は既にアンジェーロ学園が支払っており、朝食などに関しても、イシュドたちが食べた分は自動的にアンジェーロ学園に請求されるため、イシュドたちは特に懐を気にすることなく宿の料理を食べることが出来る。
イシュドたちは……基本的に全員がそこそこ飯を食べるが、中でもイシュドは大飯食らい。
そして、割とガルフも他人が払ってくれるとなれば、そこそこ遠慮せずに食べてしまう。
宿の朝食が美味しかったという感想は本音でり、ミシェラたちも普段より少し多めに食べてしまっていた。
「んで、ヒツギ先生、アリンダ先生。今日からは基本的にエリヴェラたちと合同訓練を行うって感じなんすよね」
「そうだね。合同訓練とは言うけど、イシュドたちが普段行ってる訓練に、エリヴェラ君たちが入ってくるだけだね」
特に難しい事はせず、互いに基礎練習を行い、気付いた部分を伝えあい、模擬戦などを行って修正していく。
「イシュド君にとっては少し退屈だとは思うけど……どうせなら、後でエリヴェラ君とステラさん、後はレオナさんの三人と同時に戦ってみたらどうかな」
「それは……ふっふっふ。ありっすね」
シドウは、イシュドが激闘祭トーナメントのエキシビションマッチにて、フィリップとダスティン、クリスティールの三人を相手に一人で戦ったという話を知っている。
当時の三人と比べれば、エリヴェラとステラ、レオナの三人の方が実力は上。
しかし、シドウはイシュドがそんな変則試合を行ったとしても、負けるとは全く思っていなかった。
「ちょっと前に向こうの連中全員と戦ってみようかと思ってたけど、それは止めといた方が良さそうだな」
「…………イシュド、控えめに言って鬼だな、お前」
「んなの今更だろ、フィリップ」
「まっ、それもそうか。んで、なんでそれを止めようと思ったんだ? 力の差を解らせるには、それが手っ取り早いと思うけど」
フィリップは、現在自分たちの面子にダスティンとディムナを加えたとしてもイシュドには敵わないと理解している為、ハッキリとエリヴェラたちが束になっても敵わないと断言出来る。
「それはそうだと思うが、多分あいつらは七人ぐらいで一人の人間を潰す様な訓練は行ってないだろうからな……自身の戦闘力を百パーセント発揮できるのは、精々タッグが三人組ぐらいじゃねぇと無理だろ」
巨体を持つモンスターが相手であれば話は変るが、巨人族ではない……サイズ的には十分人族であるイシュドを相手に、大人数で挑むとなると、相当連携が取れるメンバーでなければ同士討ちする可能性が高い。
前衛が三人というバランスは如何なものか。
その疑問に関しては、学生レベルの魔術師がいたところで、結果が変わらないという結論から解決? 出来る。
「イシュドの言う通りですわね。あの三人の連携度がどれほどのものかは解りませんけど、三人ぐらいの方が、即席の連携も上手くいきそうですわ」
「それはそうだろうけど、ぶっちゃけ俺からすれば、あの三人が同時に襲い掛かってくる方が怖ぇけどな」
フィリップは試合の中で結果的にレオナに降参させることに成功したが、フィリップは……途中まで戦っていたガルフも当然、レオナに勝ったとは欠片も思っていない。
「……ですね。おそらく、教師であってもあのお三方を同時に相手するのは難しいのではないでしょうか」
「同感ですね。実際のところ、アリンダ先生やシドウ先生であればどうでしょうか」
「私はご免ね~~~。お金を積まれたとしても……後衛職の私じゃあ、厳しいだろうからね~」
アリンダは三次職に転職を果たしており、一般的な生徒が相手であれば、一対三という状況であっても戦い……勝利することが出来る。
しかし、先日の学生たちの試合を、アリンダはただボ~と観戦していた訳ではない。
現在は教師として活動しているものの、元は国に属する魔導士として活動していた。
そのため、自然と自分ならどう戦うか……といったイメージを浮かべてしまう。
(一人一人な勝てる……というか、当然勝たなきゃいけないんだけど~~~。もし三人同時に戦うってなったら、多分無理よね~~~)
全く勝機がない訳ではない。
あぁすれば勝てるかもしれない、こうすれば勝機が増すかな~~といったアイデア自体は浮かぶ。
ただ、絶対に勝てるというアイデア、イメージは浮かばない。
「俺は……そうだね~~~…………脚か腕を一本、もしくは二本ぐらい斬り飛ばして良いなら、絶対勝てると言えるかな。それはダメだと言われると、それなりに難しい戦いになる……負ける可能性もあるかな」
アリンダよりは負けず嫌いな部分があるシドウではあるが、それでもエリヴェラたちの戦闘力を冷静に分析し、特に見栄を張ることなく答えた。
「へぇ~~~、シドウ先生でも負ける可能性はあるんっすね。そしたらイシュドでも
……腕を切断したりしたらダメとかってルール付きなら、ワンチャンあるってことか?」
「腕や脚の切断の代わりに、内臓破壊しても良いなら、特に問題無いと思うぜ」
「「「「「「「…………」」」」」」」
フィリップたちは揃って心の中でツッコんだ。
それはそれで問題ありだろ、と。
「おいおい、そんなドン引くなっての。ぶっちゃけ、一対三の状況で戦うなら、ある程度リングから落ちたら負けとか、そういうルールを作っとかねぇと、とりあえず一人を戦闘不能にするにはそういうのが一番手っ取り早いんだよ。じゃないと、別方向から攻撃が飛んでくるわけだしな」
イシュドの説明は……仮に本当に一対三という状況で戦うのであれば、正しい戦闘方法ではある。
ただ、即座に腕や脚の切断の代わりに、内臓破壊を思い付くあたり……やっぱりこの人はバーサーカーなんだと思い知らされ、大なり小なり引いてしまった。
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