第255話 気付く二人
「大将同士の戦い、といったところだね」
「? 大将はイシュドじゃなかったのか?」
向き合うクリスティールとステラを見て、これから大将同士の戦いが始まると、内心ワクワクしていたアドレアス。
だが、フィリップは大将はクリスティールではなくイシュドだと認識していた。
「何を言ってるのかしら。クリスティールお姉様が大将に決まってるでしょう」
「いやいや、強さ的には完全にイシュドが大将だろ。なぁ、ガルフ」
「えっ? えっと………………い、イシュドはあまり人を纏めたりするのが得意って訳じゃないと思うから、大将っていうより特攻隊長? みたいな感じじゃないかな」
特攻隊長という言葉に、イシュドが大将だと思っていたフィリップも納得の表情を浮かべる。
「なっはっは!!! それで良いんじゃねぇの? 大将なんざ柄じゃねぇからな」
「……それで、特攻隊長のあなたから視て、今回の戦い……どちらが勝つと思いますの」
「さぁな。クリスティールパイセンの実力はある程度知ってるが、あっちの大将の……ステラ・アスティーウの実力は知らねぇ」
学生にしてはかなり強いということは解ってる。
ただ、本当にそれだけである。
「では、クリスティールお姉様が負ける可能性も、あり得ると」
「あり得るだろうな~~~。俺がさっき戦ったエリヴェラが、俺と似た様な立場だと思うから……あのステラって人が、一応向こうのトップだ。弱い訳がねぇだろうな」
「…………そうですわね」
(ほ~~~ん? クリスティール大好き女子のデカパイにしちゃあ、随分冷静じゃねぇの)
また普段通り「クリスティールお姉様が負ける訳ないでしょう!!!」と吠えると思っていたイシュドだったが、ミシェラが口から零したのは……イシュドの考えを否定しないものだった。
「でもさ、イシュド。クリスティール会長は双剣を使うから、リーチの差ではクリスティール会長が勝ってるよな」
「そうだな」
ステラ・アスティーウは何かしらの得物を手に取ることはなく……素手のまま構えた。
「……堂に入ってる。元からそうなんだろうが……リーチの差は、あんまり意味がなさそうだな」
「素手で戦い慣れてる人の特徴だね」
シドウから視ても、操る武器によって生まれるリーチの差がそこまで戦況に影響するとは思えなかった。
「やっぱり、大和にもある程度素手で戦う人はいるんすね」
「そうだね。まだ技術や戦闘経験が不足してる人ならともかく…………うん、あの子……ステラさん並みに戦える人だと、その差を埋めることは難しくないだろうね」
軽いアップを終えた二人は、開始の合図は……自分たちで決めた。
最初に動いたのは……ステラ・アスティーウ。
双剣という刃に対して一切恐れることなく、突っ込んでいく。
「ッ、ふっ、っと」
対して、クリスティールは自身も同じ領域である接近戦で戦うことはなく、連続で氷刃を放ち、ステラを牽制する。
「ふむ……まずは反応速度を見極めたい、ってところかな」
「そんなところじゃないっすかね。踏み込んだ速度……あの状態であの速さなら、突進力はそこそこありそうっすからね。受け方を間違えたら、一発でがっつり傾く可能性もありそうっすからね」
「イシュド、それはあの方の本気の一撃であれば、という事ですの?」
「そうだよ。だから一々目くじらを立てんなって、あんまり起こり過ぎてっと、いつか憤死すんぞ」
死に方的に、それは……どうなんだ? とツッコミたくなる憤死。
ミシェラも、さすがに私情的過ぎる怒りだと思い、深呼吸をして心を落ち着かせた。
「…………それで、あの方が本気になれば、完全にクリスティールお姉様の防御力を上回るのですわね」
「だろうな。あの感じ……武道家なのは間違いねぇと思うが…………シドウ先生、どう視ます」
「ん~~~……個人的な感想だけど。就いている二次職は武道家ではないと思う」
また別系統の戦闘職に就いている、という訳ではない。
シドウの予想では、一次職の時点で武道家に就いている。
故に、二次職では更に上の職に就いていると予想。
「確かステラさんは、戦う聖女という二つ名で呼ばれてるんだよね」
「みたいっすね」
「…………俺の見立てでは、重拳家、かな」
「マジっすか。同じ予想っすね」
「おっ、本当かい? それなら、確定と思ってよさそうだね」
互いの予想が同じだと解り、嬉しいと思うと同時に……内心、苦さを感じていた。
本当に予想通り……ステラが重拳家であれば、イシュドの言う通り……渾身の拳が突き刺されば大きく傾いてしまう。
「まぁ、クリスティールパイセンはクリスティールパイセンで普通ではねぇし……向こうが何を隠し持ってるかは知らんけど、今のところ五分五分か」
ある程度の反応速度を確認し終えたクリスティールは氷刃を放つのを止め、接近戦を仕掛け……互いに冷静に攻撃を見切りながら刃を、拳を振るっている。
「にしても………………なぁ、フィリップ」
「っ、やっぱり、イシュドも気付いたか?」
「あぁ。フィリップも気付いてたって事は、おそらく確定だな」
「??? 二人は、何に気付いたの?」
ガルフもクリスティールとステラの戦闘を真剣に観察しているが、特におかしな点は見当たらなかった。
「「あの聖女、胸にさらしを巻いてるんだよ」」
「「「「「「…………」」」」」」
綺麗にハモリながらガルフの質問に答えたイシュドとフィリップ。
そして、その答えを聞いたガルフたちは……完全に固まってしまった。
「ふむ、全く気付かなかったな!! しかし、あれでも豊かそうに見えるぞ?」
「だからこそ、ヤバいってことだろ」
「なるほどな!!!」
そんな中、二年生で一人だけ参加したレブト・カルパンはそういう下ネタもいける口であり、乳派でもあるため、二人の会話にあっさりと入った。
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