第225話 思考力の差
「よぅ、お前ら!!! ちゃんと生きてたか!!!!」
依頼から戻って来たガルフたちが無事なのを確認し、イシュドは笑みを浮かべながら喜んだ。
そんなイシュドの周りでは……息絶え絶えのミシェラとルドラ、ヘレナの三人が転がっていた。
「なんとかね」
「……? ガルフ、お前ちょっと変わったか」
「そ、そうかな。別に変ったところはないと思うけど」
見た目の話ではなく、イシュドはガルフの纏う雰囲気に、僅かな変化を感じ取った。
「あれじゃねぇか。護身剛気を会得したからじゃねぇの?」
「っ!!!!???? マジか、ガルフ!!! 本当にあれを会得したのか!!」
「う、うん。夢中で動いただけだったんだけど、なんか……気付いたら、使えるようになってたみたい」
「はっはっは!!!!!!! そうかそうか、良かったじゃねぇか!!!! いやぁ~~~~……それだったんだな」
ガルフが護身剛気を会得したことを、我が事の様に喜ぶイシュド。
自分がガルフに感じていた何かが解ったこともあり、すっきりした表情を浮かべる。
「あっ、やっぱイシュドは知ってたんだな」
「いや、別に知ってたつーか、解ってた訳じゃねぇぞ。なんとなく……ガルフにその予兆? みてぇなもんを感じててな」
「ほへ~~~……よくそんなの感じ取れるな」
「偶々だ偶々。んじゃあ、どんな旅をしてきたのか聞かせてくれよ」
休憩時間には丁度良いということもあり、ミシェラたちも息を整えてガルフたちが依頼を達成するまでの話を聞き始めた。
「……といった感じで、なんとか討伐出来たんだよ」
「はっはっはっは!!!!! 良いじゃん良いじゃん。中々な死闘を越えてきたじゃねぇか」
文字通り死闘であり、最悪の場合イブキが戦死していた。
それはイシュドも解っているが、まずは四人がその死闘を乗り越えたことを賞賛した。
「あなたねぇ……中々笑えませんわよ」
「んでだよ。まさにザ・死闘乗り越えたんだぜ。全員が十割越えの力を引き出して
勝ったんだ……滅多に体験できるもんじゃねぇぜ」
「……このバカな考えは置いとくとして、勿論イブキたちが死闘を越えたことは素晴らしい結果なのですけど、遭遇した時点でミノタウロスが傷を負っていたことに関しては気になりますわね」
「それに関しては、フィリップがミノタウロスは気に入ったモンスターを従えていたのですが、反逆された際に負った傷だと予想し、私たちもその可能性は十分にあり得ると思いました」
「ミノタウロスが、他のモンスターたちを従えた、ですの?」
あり得ない、と言いたげな表情を浮かべるミシェラだが、直ぐに追加でアドレアスが討伐したミノタウロスは主の咆哮というスキルを有していたことを伝えた。
「へぇ~~~~、ミノタウロスが主の咆哮を持ってんのか。そいつは珍しいな」
「やっぱりイシュドから見ても珍しいんだね」
「そうだな~~。これまでミノタウロスとは何度も戦ってきたけど、主の咆哮を持ってた個体は一体もいなかったな。まっ、強ぇモンスターが同種族じゃねぇモンスターを従えることはそこまで珍しくねぇからな」
「「「「「「「え?」」」」」」」
「あん?」
久しぶりにザ・常識の違いが現れた。
「……まっ、あれだ。目ん玉が飛び出るほど驚くようなことじゃねぇってこった。けどまぁ……主の咆哮を使ったミノタウロスの怒号となれば、お前らが動けなくなっちまったのも納得だな」
「おっ、その口ぶりだと、イシュドも経験があるって感じだな」
「おぅ、あるぜ。ありゃあ…………アサルトウェアウルフだったか? そいつが珍しく仲間を引き連れるタイプで主の咆哮を持ってたんだけどよ、マジで心臓を鷲掴みにされたかと思ったぜ。なっはっは!!!!!」
フィリップたちはどこに笑える要素があるのか、全く理解出来なかった……ただ、イシュドにとっては良き経験の一つという認識だった。
「超笑い事じゃねぇぜ、イシュド。んで、今こうして生きてるってことは、なんとか切り抜けられたんだよな」
「おぅよ。体は動かなかったけど、魔力操作はなんとかで出来たから、体から魔力を伸ばして無理矢理移動して、とりあえずぶった斬られずに済んだんだ」
「…………あなた、本当に良く解らない体してますわね」
ミシェラもこれまでの人生で、似た様な体験をしたことは何度かある。
そうなった時、イブキたちが語る様に、本当に体を動かそうとしても動かなくなってしまう。
だからこそ、イシュドが身に纏う魔力を利用して敵の攻撃を回避したという内容が全くもって理解出来なかった。
「体を動かそうって考えてばっかで、魔力なら動かせるんじゃないかって考えられたから考えられなかったかの違いだろ。これだから乳にしか栄養がいってないデカパイは」
「なんですって!!!!????」
当然の様に怒るミシェラ。
ただ、今回の発言は同時にイブキも殴っているのだが、そもそも魔力を動かそうという考えに至っていなかったから……その考えを聞いて、確かにとイブキだけではなくアドレアスやフィリップも納得しており、特に気にする素振りを見せなかった。
「でもあれだな。俺みたいに魔力を利用して何とかしたんじゃなくて、ガルフはがっつり動いてイブキの元まで動いて雷斧をガードしたんだよな。ってことは、主の咆哮を使用した怒号以上の圧や恐怖を思い出したんだろ。どんな事を思い出したんだ?」
「え、えっと…………アレックスさんに、色々と教わってた時に」
「あ、あぁ~~~~~~……そ、そっか。なるほどな」
当時を思い出すと、未だに手が震えるガルフを見て、それ以上語らなくて大丈夫だと、納得出来たと返すイシュド。
(夏休み、ガルフたちがうちの実家にいる時だよなぁ…………あん時感じた違和感は、それだったか。そりゃあ、確かにミノタウロス如きが放つ圧よりアレックス兄さんのガチプレッシャーの方がおっかないよな)
当時、アレックスは諸々のプレッシャーがガルフだけに向くように、感じられるようにコントロールしていたが、イシュドも含めて勘の良い何人かは感じ取っていた。
「んじゃあ、今度は俺らの話をすっか」
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