第189話 貢献はしていた
(はぁ~~~~……クソつまんね~~~~)
学園からの依頼を受け、達成して戻って来たイシュド。
既に学園関係の研究者に素材を渡し終え、完全に仕事を終えた。
そうなると、当然ながらこれまで通り授業を受けなければならない。
座学は基本的にイシュドの興味が惹かれるものではなく、戦闘訓練に関してもバイロンやシドウと模擬戦が行えるのであればまだしも……タイマン勝負以外の戦い方を学ぶ戦闘訓練の時間もある。
(また依頼を受けてぇな~~。そう簡単にあの鬼竜・尖みてぇなモンスターとは遭遇出来ねぇだろうけど、こうして授業を受けてるよりは…………って、今度はあれか。ガルフたちだけで倒しちまうか)
鬼竜・尖との戦いで、ガルフたちは鬼竜・尖が鼓動のコントロール方法を会得する前までは、十分に討伐出来るチャンスがあった。
(うちの領地に生息してるBランクモンスターじゃなければ、十分可能性もあるもんな)
座学の授業中、一応眠らずに受け切り……楽しい楽しい昼食タイム。
「ねぇ、次はいつ依頼を受けようかな」
フィリップ、ミシェラ、イブキ。
いつもの面子が集まったところで、ガルフはいたって真面目な表情でフィリップたちに尋ねた。
「おいおいガルフ~、ちゃんと休んでるか~? この前依頼を受けて帰ってきたばっかりだろ」
「ちゃんと休んでるし、寝てるよ」
夕食後もがっつり訓練を行っているため、ベッドにダイブすれば直ぐに夢への中へと沈んでいるガルフ。
「でも、次の依頼は……イシュドに頼らず達成したくて、こう……」
「うずうずしてるって感じか、ガルフ」
「う、うん。そんな感じかな」
生意気な事を言ってるかもしれない。
そんな気持ちがあったからか、少し照れた表情を浮かべるも、イシュドはそんなガルフの思いを気に入っていた。
「良いんじゃねぇか。前の戦いでは、別にお前たちがあれぐらいの強さを持つモンスターと戦っても、足りない部分が多過ぎるって訳じゃなかったんだしよ」
そもそもな話、先日受けた依頼は討伐依頼ではなく、生態系調査の依頼。
そのため、仮にイシュドが真っ先に鬼竜・尖と戦っていれば……高い学習能力、肉体の内側の部分をコントロールする力が優れている……といった内容を把握することは出来ずに倒してしまっていた可能性が高い。
詳細を振り返れば、ガルフたち四人はしっかりと依頼達成に貢献していたと言える。
「イシュド、あまり座学を疎かにし過ぎるのは良くないのではなくて?」
「座学ね~~~~……俺にとっちゃクソどうでも良いし、デカパイとかフィリップは既に中等部である程度経験してんだろ? デカパイに関しちゃあ、良い成績取ってたらしいじゃん。なら、別に高等部でもそこまで必死こいて頑張る必要はねぇだろ」
「っ、それは………………」
バカにされたわけではない。寧ろ褒められた。
しかし……ミシェラの中には、常識として好成績を残すという考えある。
ただ、目指す先が騎士である以上、座学がどれほど役に立つのか……イシュドという規格外に出会い、レグラ家で何度も何度も実戦を繰り返し……先日、今度はモンスターの中の規格外である鬼竜・尖と遭遇した。
この短期間で、これまでミシェラの中にあった常識がかなり崩されてきていた。
「領地経営をする訳でもねぇんだ。デカパイが必要な知識なんざ、せいぜい指揮官としての判断とかそこら辺なんじゃねぇの?」
「…………とにかく、私としてはまた依頼を受ける事に関しては賛成ですが、あまり座学を軽視しないようにしたいですわ」
「私も、一応ミシェラの意見に賛成です」
(あらら、イブキがデカパイの意見に賛成派か…………そういえば、文武両道ってことわざがあったな。イブキが良いところの生まれってのを考えれば、そっちを大切にするのは別におかしくねぇか)
二人の意見を完全否定しようとは思わない。
ただ……イシュドは自分たちが特別扱いされていることを思い出し、後で知人とちょっと話をしようと思った。
「まぁでもよ、とりあえずまた依頼を受ける事には賛成なんだろ? んじゃ、今のうちにどういう依頼を受けるか決めとくか?」
「僕は討伐系の依頼が良いかな」
「前回調査系の依頼だったくせに、結局ガチバトルに発展したからな~~~……俺は超変な依頼とかじゃなかったらなんでも良いや」
「…………ガルフと同じく、討伐系の依頼ですわね」
「私もですね」
鬼竜・尖との戦いで悔いが残っていた二人は、ガルフと同じく討伐系の依頼を熱望していた。
「んじゃ、また生徒会室に行くか」
今後の予定が決定。
五人は別の話題について喋りながら食事を続けるが……ここは学園の食堂。
一年生だけではなく、二年生や三年生たちもいる中で、既に依頼について堂々と話している五人に……注目が集まらない訳がない。
(にしても、ガルフの奴……根性が付いてきたってのは違うか。肝が据わってきたって感じか? こんだけ同級生や上級生から視線を向けられてるのに、全くおろおろしてねぇ)
在校生であれば、多くの者たちがガルフ、フィリップ、ミシェラ……そしてイシュドの戦いっぷりを観ていた。
イブキはともかく、四人が強いという事実は証明されている。
ただ……立場的には一年生。
年齢だけしかマウントが取れない輩たちの如く、一年のくせにっ……と、苛立ちを覚えている者もそれなりにいる。
しかし、そんな中でもガルフは特に表情を変えることなく過ごしていた。
「イシュド君、少し残ってもらって良いかしら」
「? はいよ」
放課後、生徒会室受けられる依頼を見せてもらい、数十分ほど悩むも、どの依頼を受けるかは一旦持ち帰りとなった。
そんな時、偶々生徒会室にいたバイロンとクリスティールに呼び留められた。
「何か俺に用っすか? 二年生とか三年生の指導とか嫌っすよ」
「先日、教えてくれたあの言葉、考えだけで十分だ…………いや、とはいえ安心してくれとも言えないな」
バイロンの言葉に不穏を感じたイシュド。
ただ、一先ず遮ることなく、二人の要件を聞き…………盛大にため息を吐き、天を仰いだ。
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