第164話 誕生方法

「にしてもイシュド……そいつ、本当に居ると思うか?」


生徒会室から出た後、フィリップは真っ先に依頼書に記されている様な個体がいるのか疑問視した。


「フィリップぅ~~、うちの領地には人語を話すAランクモンスターが三体いて、その三体が群れを率いず三体だけで行動しちまうんだぜ~~~」


「うっ、そういえばそんなモンスターたちもいたな。けど、あれはレグラ家の領地だからじゃねぇのか?」


フィリップがイシュドの考えを否定したくなる気持ちを……ガルフたちは解らなくもなかった。


「はっはっは!!! 悪いが、そこまでは知らん。けどな、イレギュラーっていうクソったれな現象は、いつどこで起こるかなんざ、マジで予想出来ねぇ。手短な例をだすなら、お前らにとって俺が学園に入学してきたのは、イレギュラー過ぎるイレギュラーと思わねぇか?」


イシュドの返しに、イブキも含めてその通りだと頷くしかなかった。


それまで、学園に通う子供たちにとって、レグラ家という存在は……やや幻に近い、得体の知れない存在だった。


「だろだろ。だから、こんな訳解かんねぇモンスターがいたとしても、別におかしくねぇんだよ」


「……ですが、リザードマンとオーガの特徴を併せ持つモンスターとなると…………純粋な身体能力、それだけで既に大きな武器ですわね」


まだそんなモンスターが存在すると確定したわけではない。

しかし、既にミシェラはそういった存在がいると仮定し、頭の中でイメージを膨らませ始めた。


「特徴通り、二体のモンスターの良いとこ取りみたいな体を持ってるな、デカパイの言う通りだな」


Cランクの中でオーガはパワー重視の動けるパワーファイター。

リザードマンは非常にバランスの取れるトータルファイター。


二体の良いところだけを取れた場合、屈強なハイファイターが完成する。


「オーガやリザードマンって、基本的に武器を使う個体が多いよね。やっぱり、そういった面も警戒すべきかな」


ガルフは先日……遥か先にいる強者たちが、怪物たちと戦う光景を観ていた。


(……あの怪物たちに、技術で完全に勝っていたとは、断言出来ない)


身体能力で勝てないのであれば、技術で勝負する。

それは至極当然の考えであり、決して間違っておらず……弱者の考えという訳でもない。


だが、相手が身体能力だけではなく、技術力も持っていれば?


(だからって……諦めて、負けて良い理由には、ならない)


もう下を向く理由はなく、向けれる言い訳もない。

既に……ガルフの闘志は燃え滾っていた。


(あらら~~~。ったく、燃やすのが早過ぎるんじゃねぇの? まぁ……ダチがここまで戦る気出してんだから、俺もちゃんと付き合わねぇとな)


フィリップとしては、調査が調査で終わるに越したことはないと思っている。


とはいえ、戦る機会が巡ってきた場合、だらだらと戦ろうという気は一切ない。


「つか、思ったんだけどよ、マジでそんなモンスターがいたとして、どうやって生まれてきたんだろうな」


「「「「………………」」」」


フィリップが何気なく口にした質問に対し、イシュドも含めて……直ぐにそれらしい考察を思い付かなかった。


(そういえ、ば………………リザードマンって、ドラゴンだけど爬虫類に分類される……分類されるんだよな? 爬虫類の交尾って………………そういえば、あいつらってチ〇コ付いてたっけ?)


強い相手と対峙した時、ただ単純作業として倒すとき……時に相手のイチモツなどは気にしない。


ゴブリンやオークが一切隠す気もなくぶら下げているところを見た時は少々笑ったものの、それ以降……特にそこを気にすることはなく、ただただぶっ殺し続けてきた。


(オーガは……付いてた気が、しなくもない)


一旦リザードマンのイチモツについて考えるのを止め、オーガのイチモツに考えを移行。


ちなみに、ミシェラとイブキは初心であるため、自分から考え始めたものの、速攻で顔が赤くなり、リタイア。


(そういえば、前世じゃあライオンとトラのハーフ、なんて存在がいたんだったか? でも、あれって確か遺伝子をどうたらこうたらした存在、だったか? ……どっちにしろ、オーガとリザードマンがやってる光景なんて、全くイメージ出来ないな)


やれないのであれば、どうすればミラクルな存在が生まれるのか……考えられる頭はあっても、専門的な知識を持ってないイシュドでは、それらしい結果を思い付くことが出来なかった。


「わっっっっかんねぇな」


「おっ、イシュドでもそれらしい考えが浮かばないなんてあるんだな」


「政治的な件であれこれの事言ってんのか? それなら、ただ俺が思うことを言っただけだ。別に俺に特別考える力があるからとか、実はこっそり裏で政治の勉強したりしてる訳じゃねぇ」


「それもそうか。イシュドが裏でこっそり政治の勉強なんてしてたら、明日は槍の雨でも降るのかって思っちまうぜ」


「もしかしたら、天変地異が起きる前触れかもな」


自分が政治の事に関して学ぶというもしもに対し、フィリップの絶対にあり得ないと考えを否定する気はサラサラない。


「けど、リザードマンとオーガの特徴を併せ持つモンスター……それは、生物学的な知識とかねぇと、一切説明出来ねぇだろ」


「……それもそうか」


「第一、オーガとリザードマンがやってるところなんて想像出来るか?」


「「っ!!!!」」


ストレートな表現に、二名の女子生徒が更に赤くなる。


「い、イシュド!!! あ、あなたねぇ!!!!!」


「んだよ。生命の誕生の話すんなら、そこは避けては通れない話題だろ。別にき……あぁ~~、そうだったな。生娘で箱入り娘だったな。悪ぃ悪ぃ」


戦闘に関する処女は捨ててるのに、性的な意味での処女を捨ててないってどういう事だ? と思いはしたものの、寧ろ戦闘に関わろうとしている者であれば、特に珍しくないという事を思い出し、ギリギリに飲み込むことに成功。


「けど、別に間違った話題つーか、話の内容じゃねぇだろ」


「そ、それはそうだけれど……でも、リザードマンにそういった機能はないのではなくて?」


「あっ、やっぱりか。つか、リザードマンやオーガが生物的に別の個体とやって、生まれた個体が無事かってのがそもそもの疑問だけどな」


遺伝子…………遺伝という言葉は存在すれど、遺伝子という明確な言葉、存在を知っているイシュドからすれば、まずそこが大きな疑問点だった。

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