というわけで、暇です
物価がじわじわ上がり続けています。嫌です。
しかし、全部が全部値上がりしているわけではないので、そこまで酷いことにはならないでしょうが。とは言え、行きつけの酒場のメニューから二、三品消えるくらいは覚悟した方がいいでしょうねえ。
物価高騰の理由は、例によって戦争の余波です。
魔物が活発化すれば、大きな街道も安全が保障できません。
もちろん、兵隊さんたちが道の要所要所、警備にあたってくれているそうです。それでもやはり、危険を恐れ、移動を見送る商売人は多い。そのうえ、道の通行にも制限がかかっている状態です。
こればかりはもう、自然が元通りに落ち着くのを待つほかありません。いや、冒険者としては、その元通りのために手を貸す必要があるのですが。ギルドから特別な指令でもない限りは、家計の心配で手一杯ですよ。
魔術師ギルドの方はと言うと、相変わらず気の抜けた空気。ですがまだまだ、やらねばならないことが次々に湧いてきている状態です。
そのような中、私は今ジメジメとした屋根裏で、お酒を片手に原稿を書いています。周りが忙しいのにお前は何を怠けているのだ、という声が聞こえてきそうですが、もちろんちゃんと理由があるのです。
現在、魔術師ギルドは仕事だらけ、その中でも特に多い仕事は、やはり悪魔討伐です。ギルドも余裕があるわけではないので、できるだけ多くの魔術師に、悪魔討伐を求めています。
さて、そんな中で平常通りに「私は悪魔討伐になんか行きません」という態度をとっていると、どうなるか。「この忙しい中、あいつだけ悪魔討伐に行ってない」と後ろ指をさされかねないわけです。
最近になって、あの人たちはようやくそれに気が付いたようで。普段は外になんて出たがらない魔術師たちが、こぞって悪魔討伐の依頼書を剝がして行っている、というのが現状です。
このようなときに、私たちが普段通りに悪魔討伐を引き受けると、引きこもりさんたちの面子が立たない、というわけですね。面倒くさいでしょう?
余談になりますが、この手のお上品な魔術師って、冒険者を見下す人が結構いるのです。しかも、討伐までの道のりに慣れていないものですから、護衛にあたる冒険者とのいざこざの、多いこと多いこと。
そういったトラブルが絶えなかったのか、近頃は「魔術師ギルド公認冒険者」という枠ができたぐらいです。丁寧で、ある程度礼節をわきまえた冒険者が選ばれるそう。
「公認」だなんて、何を上から目線で認めているのか、と私も初めて聞いたときは憤ったものです。ですが、友人から「公認冒険者は、本当に汚い人はいないから安心できる」と聞いて、なるほどと納得しました。
冒険者の中には、さすがの私も擁護できないくらい、色々と「なっていない」人もいます。私は慣れているけれど、これを嫌だと言う魔術師の気持ちも、まあ理解できる。
無用なトラブルが避けられるのならば、多少の上から目線は見逃すべきかもしれませんね。
さて、私が魔術師としての仕事をできない理由は、だいたいこんな感じです。
もちろん、魔術師の役割は悪魔討伐に限らないのですが、荒事以外の話は「お前は何もするな」と言われて、申し出ても追い出されてしまいます。
では冒険者ギルドの方は、という話なのですが、この忙しい中、友人たちは軒並み出払っていて、同行してくれる人がいません。
ならばと一人で受けられそうな依頼も探したのですが、見当たらず。
もういっそ誰かと酒でも飲みに行こうと思いつきましたが、皆さん忙しくって、私と飲んだくれている余裕はない様子でした。
結果、私は一人寂しく酒を飲みながら原稿に手を付けている、というわけです。ああ、いい感じに酔いが回ってきました。酒で原稿を濡らす前に、ここらで締めておきましょう。
(エスメラ)
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