口笛
藤間伊織
第1話
真夜中の学校。電気は全て消え、月明かりも雲に邪魔されて弱々しい。
私の目の前には真っ暗な廊下が伸びている。この先は物置になっている教室しかない。
元々子供が少ない上、少子化が進んだこの辺りは学校がここしかない。全校生徒学年関係なく友達で、それなりに楽しい生活を送っていた。そんな私もいよいよ卒業を迎えようとしていた頃、クラスで学校の怪談についての話が出た。
私の学校は非常に古い。言葉を選ばないとすれば、ボロい。それはそれはボロっちい。この6年間、台風を乗り切れたのは奇跡だと思わなかった年はない。
そんな我が校では七不思議がまことしやかに伝えられている。実を言うと、誰が増やしすぎたのか七不思議に収まりきらなかった怪談もある。それらも不思議と減ることなく、むしろ増えながら後輩に受け継がれていく。
その中でも一つ、異質な話があった。
「誰々の兄弟が巻き込まれた」
「何年上の何何という名前の人が消えた」
子供の少ないこの辺りでは簡単にバレるであろう話がくっついているのだ。しかしながら、それが嘘だと明確に実証されたことは一度もなかった。
その子供の好奇心を刺激する話はいつでも怪談の最後に語られた。今回もそうだった。
だが、いつもと違いそれを確かめようと言うやつがいた。私は反対した。怖かったのもあるし、妙なリアリティをその話から感じていた。だが、一度盛り上がった雰囲気を鎮めることは出来なかった。
その結果がこれだ。私が学校にいる。
こういう卒業前のイベントは普通幼なじみ全員で挑むものだと思っているが、今私のそばには誰もいない。一クラス40人50人とかじゃあないんだから、クラス全員、つまり、学年全員(一ケタ)で来てもよかったろうに!
何故私が一人で学校にいるのか?理由はシンプルである。
――じゃんけんで負けた。
ただの負けではない。一人負けである。私の「パー」があれほど虚しく開いていたことはなかった。示し合わせたわけではないのにあの結果。ひどいものだ。
それに、みんなは恐らく私をとっちめてやろう、まで行かずともちょっぴり脅かしてやりたかったはずだ。
私は友達より少々大人びた子供、まあ可愛げのない子供であった。ただ、言うことはよく聞くし、面倒事も起こさない私は大人たちからは割と信頼を置かれていた。それが幼なじみとはいえみんな面白くなかったのだろう。
そういうわけで、私は今真夜中の学校にいる。
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