慶華高等学校 新体操部
第1話 夢
私、
当時、母から何かしらの習い事に通うことを求められていた私は、その日もサッカーの体験教室やら、ピアノ教室やらと連れ回されていた。
そしてその日の最後に行ったのが、新体操レッスンの見学だった。
体育館の重たいドアを開けると、汗と熱のこもった空気がドッと押し寄せた。
この時期はちょうど試合が近いときで、中学生くらいのお姉さんたちはみんな、ストーンでキラキラに飾り付けられた衣装を着て舞っていた。
お姫様みたいなヒラヒラした可愛らしいデザインや、大きなストーンやシルバーの模様で飾られた、思わず見とれてしまうような美しい衣装。
そして宝玉のように輝くピンクや水色のボール、ヒラヒラなびく赤とオレンジ色の綺麗なグラデーションをしたリボン。
私はすぐに新体操に引き込まれて、夢中でお姉さん達の演技を見ていた。
彼女たちがターンやジャンプをするたびに大きな拍手を送って、衣装のストーンが輝く様子、リボンが美しくなびく様子を必死に目に焼き付けた。
演技を見続けていると、1人のお姉さんが私のところにやって来た。
その人は周りより一際上手に踊っていた人で、さっきのコーチの指導も聞いていたら難しいことばかりだった。
「ねえ、どう?新体操は。」
「えっ」
そんな人に話しかけられてびっくりした。
「手具も衣装もお姉さんも、みんなキレイでしょ〜?」
「は、はい!ぜんぶ、キラキラしてて、すごかったです!ジャンプも、きれいだったし、たくさんまわってたのも、ボールなげたり、リボンをクルクルしてたのも、すごかったです!」
小学1年生なりに必死に頑張って感想を伝えた。
結局、すごいしか言えてなかったけど。
「今はこうして輝いているけど、それまでみんな沢山の努力を重ねてるんだよ。失敗と成功を繰り返して、体にあざをいっぱい作って、泣いて、悩んで、苦しんで、たまに喜んで、また頑張って、頑張って...そうやってきてるんだよ。って、見学しに来てる君の前で言うことじゃなかったね、ごめんよ。」
「じゃあ、わたしも、たくさんがんばったら、おねえさんみたいになれるんだ。」
「おっ、そうだよ。新体操嫌いになったかも、なんて君には要らない心配だったね。」
「わたし、こんなふうにキラキラのいしょうをきて、すごいわざもたくさんやって、リボンをクルクルまわして、きれいにおどれるせんしゅになること...が、ゆめになりました!ここのレッスンうけたいです!」
「そっかぁ〜!いい夢だね。君みたいにやる気いっぱいの子なら、きっとその夢叶えられるよ!私達とはコースが違うから、一緒に練習出来ないけど、同じ夢に向かって頑張れることを楽しみにしてるよ。」
「はいっ!」
(ぜったいに、あのおねえさんみたいにおどれるようになりたい。)
それから一週間後、高いお団子ヘアの私は再び体育館のドアを開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます