第4話 牛のモンスターに襲われました!?
ステラは真昼の質問に答えてくれた。
まず真昼が今いる世界はステラ達モンスターの世界。
仮称としてリンクルワールドと呼んだ。
リンクルワールドには五つの大陸が存在していた。
大陸にはそれぞれ色と呼ばれる属性が与えられていて、場所ごとに特色も気候も全然違うそうだ。
各大陸にはそれぞれの大陸の環境に適したモンスターが存在していた。
そしてアイテムや魔法なんかがあるそうだ。
これだけ聞くと良くある異世界転移なのだが、ここで気になるのはステラの姿だった。
どうしてカードの姿なのか、ステラ曰くこれには訳があるらしかった。
「私ね、星の導きを見ることができるんだ。そのおかげかな? 実はね異世界への扉が開いたんだよ」
「い、異世界?」
「うん。それでも行ってみようって思ったんだ。そうしたらね、気が付いた時にはカードになってたの。多分世界を移動するときに特殊な力が働いて、特異点的な存在になっちゃったのかな?」
ステラにもよく分かっていなかったが、一応の仮説を立てていた。
つまりパッションだけじゃなくて、しっかりと頭が使える子だと真昼は安心した。
ちなみにここまでの話、真昼はほとんど理解していなかった。理由は単純で、異世界転移ものが何か、何となくでしか理解していないからだ。
「どう、分かった?」
「うーん、何となく?」
真昼は首を捻ってしまった。
頬に手を当てて完全にはてな状態だった。
「うーん。でもどうしてカードになっちゃったのかな? カードに慣れるのは、私みたいなある程度力がある子だけなんだけど……うーん、防衛本能が働いたわけでもないのにどうして?」
ステラは一人悩み始めた。
カードのイラストがコロコロと表情を変えて面白かったけど、何となく真昼は答えられた。
「あっ、それなら分かるかも」
「えっ、ほんと!?」
「うん。私の居た世界、ステラみたいなカード? リンクル☆マジカルって言うTCGがあるんだけど、すっごく流行ってるんだ。だから何だけどね、多分そのせいだと思うんだよ」
「なーるほど。つまり私たちがモデルのカードゲームがあるから私たちもカードの姿になってたんだね。納得納得」
頭が凄く切れると思った。真昼は羨ましいと思ったけれど、ステラはにこっと笑みを浮かべた。
「でも良かった。真昼みたいな良い人に拾って貰えて」
「拾ってって……元には戻れないの?」
流石にこのままは不憫で仕方なかった。
本来ならこの世界の住人として、外の世界を自由奔放に動き回れるはずなのに、これじゃあ縛り付けているみたいで嫌だった。
真昼の表情が自然と落ち込んでいた。
「あー、落ち込まないで。私なら大丈夫だよ! ほら見ててね……あれ?」
「ステラ?」
ステラは困惑していた。汗を掻き始めていた。
真昼はちょっぴり怖くなった。
「も、もう一回! ……だ、駄目だ」
「す、ステラ!?」
「ご、ごめん。ちょっと自力じゃ戻れないっぽい……えーっと、コールって言って貰っても良いかな?」
ステラが訳の分からないことを言って、真昼のことを宥め始めた。
しかし真昼は焦ってしまって、ステラの声が上手く届かなかった。
「ど、どうしよう……な、何をしたらいいの?」
「落ち着いて真昼。まずは深呼吸しよ」
「し、深呼吸……そうだよね、すぅーはぁーすぅーはぁー……良し。いつもの私!」
真昼はほぼ自力で戻った。
考えすぎて苦しくなっても、落ち込んで自分を見失うのは自分らしくないと、真昼は思い出していた。
そのおかげでステラの声がちゃんと耳に入った。
「えっと、叫べばいいんだよね?」
「そうそう。それじゃあお願い」
「うん。えーっと、コー……ん?」
「真昼、ちょっと静かにして。何か来る?」
ステラが不穏なことを口走った。
真昼の口が閉じて耳を澄ませると、何処からともなく足音が怒号となって聞こえてきた。
「な、何か来る? 何が来るの?」
「うーん、この気配的にモンスターかな?」
「も、モンスター? い、いきなり来るの。こう言うのって、普通スライムからじゃないの? ほら、私は良く知らないけど、RPGのテンプレ的にスライムが……って何か来たぁ!?」
草原の奥の方に影が見えた。もの凄く大きかった。
真昼は足がガクブルになってしまった。
百パーセント、真昼よりも大きかった。
「う、牛かな? 角生えてるよ?」
「アレはレイジブルだね。ちょっと危険なモンスターかな。ちなみに時速は八十キロ出るよ」
「そんな悠長に説明しないでよ。ど、どうしたら良いの?」
「どうしたらって……あっ、来た」
ステラは終始余裕そうだった。
真昼はパニックになってしまい、レイジブルから逃げるように全速力で走った。
こう見えて走るのは嫌いじゃないし、そこまで遅くなかった。だけど流石に八十キロ無理だと、この時点で危機を感じていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
面白いと思っていただければ幸いです。
感想やブックマーク登録、星を付けてくれるなどしていただけるとありがたいです。
明日も二十三時と何時に投稿しますか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます