第2話 悪気はない?
「はい、遠慮せずにいっぱい食べていってね」
焼き立てのクッキーをテーブルに置いて、ヤツのママが部屋を出ていきました。
僕のうちでは見たことも無いようなバターの匂いがかおる、お菓子。
絵にかいたような裕福な家庭。
別に僕のうちも。
それほど、貧乏ではないけど。
手作りクッキーを焼いてくれるほどの。
リッチな環境ではありませんでした。
「ありがとう、ママ・・・」
天使の微笑みでヤツは見送ります。
そして。
悪魔の笑みを浮かべて振り返るのです。
「お前は食べるな・・・」
そして。
モブキャラ2と3にだけ。
分けるのです。
流石に。
細かい記憶は薄れていますけど。
当時は。
毎日のように。
逃げようにも。
7歳の思考では、逃げようがないのです。
半世紀以上前のことなのに。
切なく。
覚えているのでした。
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