塵も積もれば山となる①

平世ふゆめ

1,気狂い お題:楽しくて死んでしまうわ

 『魔物を討伐してほしい』という依頼でダンジョンにやって来たラモラックは、今日も元気に戦場を舞っていた。元より戦うことに強烈な快感を覚える、いわゆる戦闘狂と呼ばれる類の人種である彼にとって魔物の掃討作戦などご褒美でしかない。火属性の力を授けるルビーをはめ込んだ槍を振るい、自身が炎となった前提で魔物を突き刺していく。その高揚感と言ったら、麻薬を取り込んだような多幸感にも似て危険なものだ。なのに、全身は震え、槍を持つ腕はまるで翼を持ったかのように容易に動いて、脚は舞うためだけに複雑なステップをこなす。おまけに自身が操る炎のおかげで周辺は蒸し暑く、動いているために汗が止まらない。脱水症状になってもおかしくないのに、それすらも瀬戸際として楽しんでいる節がある。そんな狂人がこの男だ。

「あーあ、楽しくて仕方ねぇわ。明日には死んじまうかもなァ!!」

 あっけなく炎の槍を突き立てられた魔物が見た最期の光景は、一人の少年が獣のような笑いを浮かべている場面だった。地獄だ。

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