今宵月は人を殺す 〜殺人鬼の「殺人」を止めたい俺は能力を上手く使えなくても抗っている〜
みちづきシモン
第1話
この世界には超能力なんて存在しない、そう思って生きてきた。少なくともあの人に出会うまでは。
いつもニコニコ笑うその殺人鬼は、平気な顔して悪人を斬り捨てる。俺は人殺しに命を救われた。
そして思うんだ。その人の人柄を知れば知るほど、なんでこの人は人殺しなんてしてるんだ、と。
───────
「本当に例の島に行くんですか? 優さん」
月満優(つくまゆう)さんは、問いかける俺に振り向きながら笑った。
「詳細はわからないけど、行くだけ行ってみるつもりさ。君も来るかい? 新太君」
宇月新太(うづきあらた)というのが俺の名前。俺はそこに行く目的から、臆していたが心配もある。
優さんは殺し屋という稼業をしている。
俺は幾多もの面接に落ち、頼れる人もいない中だったので、家も追い出され借金取りに追われていたところを、彼に命を救われた。
事情を聞いた優さんは、どうせなら一緒に来ないかと誘われ今に至る。
こんなどうしようもない俺を拾った理由が、俺の中に「ある能力」があるからだと彼は言った。
そうして、既に彼と同棲していた三人の女性のいる大きな屋敷に連れらてこられた。
そして、そこで殺し屋というモノの、この世界での意味を知った。
優さんに付いていき、様々な殺し屋の生き様を見ていく中で、一人の少女と出会って匿ったりもした(その話は追々していこう)。
今は男二人、女四人のこの屋敷の生活にも慣れた頃、島の話が出た。
ある島に懸賞金一億をかけている殺し屋がいて、そいつを殺してほしいとの依頼が来たらしいのだ。
ちなみに声がけは、優さん以外にもしているらしく、殺し屋が集まるとの事。
俺は殺し屋じゃないから、足でまといにしかならない。それでもいいのだろうか、というのはもう既に無粋な問いである。
俺は、自衛のためにもらった、刀を手に言った。
「行きます。今回も付いていかせてください!」
「そうか、なら助かるよ。君と姫ちゃんだけで家に置いてくのは流石に心苦しいからね」
俺はびっくりしてしまった。
「晴子と美雨、雪絵も連れていくつもりだったからね」
「そんな! 危険じゃないですか!」
本名は知らないが、晴子さんと美雨さん、雪絵さんは殺し屋ではない。
晴子さんは家事全般を、美雨さんはお金の管理資産運用など、雪絵さんは主にハッキングクラッキングのプロで情報収集も兼ねて、優さんのサポートをしている。
そんな三人を殺し屋の集まる島に連れていくなんてどうかしてる。僕とだけならともかく!
「とにかく全員で行くよ、運転はよろしくね新太君」
ミニバンのキーを渡してくる優さん。ちなみに運転免許を持ってるのは俺と晴子さんだけ。俺が行かなかったら晴子さんに運転させるつもりだったのだろうか。
俺は姫ちゃんにも確認を取ろうとすると真後ろに姫ちゃんが立っていた。
「大丈夫。私も行くよ」
姫ちゃん自体は俺より心配ない。だけど、「約束」がある。俺と交わした約束。それを守ってる彼女もまた足でまといになる可能性はある。
とにかく、行くならばしっかり覚悟は必要だ。命を賭ける覚悟。
全員乗ってシートベルトをしたのを確認した俺は、車を走らせる。
死地に向かうかのような俺たち六人の会話は軽快で今日の晩御飯はどうするかなどを話し合っていた。
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