私の天使

リアン

ある日の日常(朝・昼)

私には今年で6歳になる愛娘の詩織しおりがいる。私達には子宝に恵まれず何年も子がやって来てくれなかった。そんな中私たちのところに来てくれたのが詩織だった。


長年求め続けていた我が子を私達はとびっきりの愛情を込めて、周りから見れば過剰なくらいには過保護になって詩織を育てて来た。その影響もあってか………………………


「おかーさん!!!」


「どうしたの〜しーちゃん」


「だいすき!」


詩織はとびっきりの甘えん坊に育ってくれたのだ。詩織の甘えん坊は他の子よりも飛び抜けていて毎日の幼稚園の送り迎えが控えめに言って地獄であるくらいには…………ね。


◇ ◇ ◇


「…………………しーちゃん幼稚園行くよ〜」


今日もいつも通り詩織を幼稚園に送る為に車の準備をし終えて、テレビアニメを見ている詩織の所に向かう。


「やぁあああああああああああ!!!!!おかーさんとずっと一緒にいるのー!!!!!!!」


ふふふ…………………今日も詩織は元気ねぇ、良いことだわ。ただ、もう少し聞き分け良く幼稚園に行ってくれるとお母さん嬉しいんだけどね〜。


「しーちゃん行くよ〜むつみ先生もしーちゃんのこと待ってるよ〜?」


「やぁああああああああああ!!!!!」


「ほら行くよ〜」


暴れ、逃げ回る詩織をなんとか捕まえて車に乗り込んでチャイルドシートに座らせる。ここまでくると流石の詩織も諦めて大人しくなる。


「しーちゃんも半年後には小学生のお姉さんになるねぇ〜」


私は自分のお腹を優しくそっと撫でる。


「……………やだ」


「どうして〜?ずっとお姉さんになりたいって言ってたでしょ?」


「おねーさんになったらおかーさんと離れないといけないじゃん」


今は運転中で後ろが見えないけどきっと詩織は悲しそうな顔をしているのだろう。


「大丈夫だよ、しーちゃんはどんなに大きくなってもお母さんとお父さんの子供だから」


「…………」


「ほら着いたよ。行こっか」


幼稚園に着いたから詩織を抱っこして園舎に向かう。

園舎の入り口に近づくといつも通りむつみ先生が出迎えてくれていた。


「おはようございます、むつみ先生」


「香織さんおはようございます。しーちゃんもおはよう♪」


いつも逃げる詩織を捕まえるため登園時間のギリギリに来る。だからほとんどの場合でむつみ先生にお出迎えをされる。


「…………おはよう……………ございます……………」


詩織……………むつみ先生とはもう2年半の付き合いなんだからもう少し心を開いてあげてもいいんじゃないかなぁ?先生もかわいそうだよ?


そして詩織は相変わらず私の手を握って後ろに隠れている。


「ほら行っておいで」


「しーちゃんみんな待ってるよ、行こ?」


「……………」


これもいつも通りの光景。そして


「はぁ〜い行こうねぇ〜」


「あっ………」


「今日も楽しんできてねぇ〜」


そしてむつみ先生に抱っこされて教室に運ばれるのもいつも通りの光景。抱っこで連れていかれる詩織に手を振って車に戻る。


「さてと〜仕事家事しますかぁ〜」


◇ ◇ ◇


私のお腹には今2人目の子供がいて、お腹の子も女の子で出産予定日は4月。ちょうど詩織が小学校に入学する時だね。


流石の2人目なのもあって初めて詩織の時よりもいくらかは余裕がある。


「あっいけない!そろそろお迎えの時間!!」


時計を見ると5時前を指していた。

急いで車に乗って幼稚園に向かう。詩織がぐずってなければいいんだけど…………


〜〜〜移動中〜〜〜


「すみませ〜ん!遅れました〜」


急いで入り口に向かうと


「大丈夫ですよ〜ちょうど今眠っちゃったところですから」


中から詩織を抱っこしたむつみ先生が出て来た。むつみ先生の腕の中で眠る詩織の目の周りが赤くなっていて泣いていたのがわかった。


「さっきまで詩織ちゃん泣いちゃってて、ちょうど泣き疲れて寝ちゃったところなんですよ」


「ほんっとにすみません!!」


むつみ先生から詩織を受け取って抱っこし直す。


「いえいえ、これが仕事ですから」


むつみ先生にお礼を言って車に戻る。

詩織をチャイルドシートに乗せて車を発進させる。詩織は一回寝ちゃうと熟睡モードに入ってよっぽどじゃない限りは起きないから母親としては非常にありがたい。まぁ、生まれてすぐの頃はそのせいですごく焦ったこともあったけどね。


車を駐車場に停めて寝ている詩織を抱っこして家に入る。

そのまま詩織の手をウェットティッシュで拭いて寝室に運ぶ。詩織はまだ幼稚園生、夜はまだ私たちと一緒の部屋で寝てる。一応詩織の部屋はあるっちゃあるんだけど…………………一回そっちで1人で寝た時に運悪く怖い夢を見ちゃってそれ以降1人で寝ようとしないんだよね。


詩織を布団に寝かせて少し詩織を観察する。

何か夢を見てるのか詩織は小さい手をにぎにぎ動かしていた。試しにそこに自分の手を入れてみると


「……………ママ……………」


ふふっちっちゃい頃の夢でもみてるのかな?

私の呼び方が小さい頃(今も充分小さいけどね)のものに戻っていた。


詩織を起こさないようにそっと手を外して


「おやすみ、私の宝物」


優しく詩織の頭を撫でて部屋を出る。

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