影の漏洩
さかた けん
第1話 プロローグ
冬のはじめを告げる十一月の朝、銀座の街並みはすこし肌寒い。ベージュやグレーのコートをまとい、両腕をポケットに忍ばせている会社員が足早に行き交っている。
地下鉄の駅の改札から階段を昇り銀座の街に出ると、喫茶店のなかに入ってコーヒーを注文した。脱いだコートを反対側の
四十六歳の時、新田は銀座にある準大手の広告会社に転職した。正社員ではなく半年ごとに更新する契約社員である。配属部署は経理局で、主に売掛金管理を担当することになっていた。
前任者は、新田が入社したその日から有給消化で不在であった。上役と何かトラブルがあったのではないかと直感して、新田は
ちょっとした、簿記の知識があれば誰でも出来るような単純な業務であったが、営業社員一人ひとりの売上金と売掛金を、項目ごとに一致させなければならないので、それが面倒でならなかった。
広告会社であるためか、職場の雰囲気は華やかであった。同僚も
―なにか、もくろみがあるのかもしれない―
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