第11話 隠し部屋
「そう言えば、帰ってきてから真由の所には言ったのか?」
「いや、この後行こうかと思っていた」
「なるほどね」
真由っていうのは俺たちのもう一人の幼馴染だ。
ある理由によって幼少期からずっと入院生活を続けている。
俺も暇を見て顔を出しに行ってるが、千鶴は最近ダンジョンに潜ってたので会ってないはずだ。
「久しぶりに二人で行くか?」
「お、いいね。久々に三人で話そうか」
俺たちが小学生の頃は、よく三人で遊んだものだ。
真由に引っ張られる形で俺と千鶴が振り回されていた記憶がある。
あの頃の千鶴はまだ大人しい性格で、可愛かったのを覚えている。
本当にいつの間にこんな男前になってしまったのか...。
そんなことを考えながら歩いていたら銀点付近に到着した。
「うん?確かこの辺なんだけど...」
「何もないな?」
銀点付近に到着したはいいものの、特に何もなくただの通路が広がっている。
あれ?おかしいな、確かに銀点はここにあるんだけど。
銀点がある場所を見てみても壁があるだけだ。
「そこに印があるのか?」
「うん、そのはずなんだけどただの壁何だよな」
「ふむ、もしかしたらだが......隠し部屋かもしれん」
「隠し部屋?あぁ!なるほど」
聞いたことがある。
ダンジョンには普通では入れない部屋が存在していて、その中にアイテムや装備が落ちている部屋のことを隠し部屋と呼んでいるらしい。
確かにこの銀点が隠し部屋なら、マップに映っている奥の空間も説明できる。
ただ隠し部屋に入るためには確か仕掛けを解かなきゃいけないんだよな。
「じゃあどこかに仕掛けがあるのか?」
「そのはずだ、少し探してみるか」
「了解!」
ワクワクしてきた、探索でも隠し部屋は中々見つからないと有名だ。
ん?待てよ、もしこれが本当に隠し部屋のマークだとしたらヤバくないか?
だってこの一階層だけでもまだ3個くらい銀点あるぞ?
もしこれが全て隠し部屋だとしたら...こりゃいよいよ人に言えないスキルになってきたな。
千鶴と二人で壁の周りを調べてみたのだが、特に仕掛けが見つからない。
俺が見たことある記事だと、壁の一か所だけ色が違ってそこを押すと壁がスライドして開いたり、壁に鍵を指す場所があってモンスターからドロップした鍵を差し込むことで開いたりする仕掛けは記事で見たことがある。
でもこの壁にはそれらしいものが見当たらなかった。
「う~ん、何もないな」
「もしかしたらこれは、特に仕掛けが無い壁かもしれない」
「それ、どうやって開けるんだ?」
「このタイプは簡単に開けることが出来るはずだ。慧、少し下がっててくれ」
「ん?分かった」
仕掛けが無い壁とかあるんだな、流石千鶴だ。
でもどうやって開けるんだろう?
後ろに下がりながら疑問に思っていると、千鶴が壁の前で拳を構えた。
え?まさか...。
「ふっ!」
少し力を溜めた千鶴が勢いよく壁を殴りつけた。
振られた拳の速度が早すぎて俺の目には見えず、気が付いたらドゴォと物凄い音がして壁が崩れ落ちていた。
「な?簡単だろ?」
「いやいや、普通無理だから」
あり得ないだろ、なんで殴っただけで壁が壊れるんだ?
普通拳の方が壊れるはずなのに、これが最上位探索者か...。
てか仕掛けの無い壁って毎回こんな感じで壊さなきゃいけないのか?
壊せる未来が見えないんだけど。
不思議なことに千鶴が壁を破壊すると散らばったはずの破片がすべて消えており、壁にぽっかりと綺麗な穴が空いていた。
「ほら、入れるぞ慧」
「うん、じゃあ見てみますか」
二人で穴の中に入ると、中には宝箱が一つ鎮座していた。
おぉ、マジで宝箱じゃん、テンション上がってきた!
「まさか本当に隠し部屋だったとは」
「リアル宝箱、マジで宝箱だな」
「何言ってるんだ?」
テンションが上がり過ぎて少し口調がおかしかったようだ。
だから千鶴、そんな珍妙なものを見る目で俺を見ないで欲しい。
「さっそく開けてみるか」
「まて、もしかしたら罠があるかもしれん、本当は罠解除系のスキルを持っている奴が欲しいところだが今は居ないから慧より頑丈な私が開けよう」
女の子に自分より頑丈だからとか言われると少しへこむな。
それにしても罠か、確かに宝箱には罠が仕掛けられてることがあるって見たことあるな。
これにも罠があるんだろうか?
《回答・・・宝物ランクF・防衛機構は存在しません》
そんなことを考えていたらまたスキルさんが答えてくれた。
防衛機構?つまり罠は無いってこと?
《肯定》
「千鶴、罠無いらしいよ」
「ん?何故分かった?」
「スキルさんが教えてくれた」
「そんなことも分かるのか...、まぁ安全なら慧が開けるか?」
「あぁ!開けてみたい!」
「ふふ、そうか」
何か生暖かい目で見られている気がするが、今は気にしない。
何故なら目の前に宝箱があるからだ。
宝箱はロマンの塊だ、男の子なら誰しも一度は憧れたことがあるだろう。
俺はゆっくりと宝箱に近づきながらそっと開けてみた。
すると中に一つの瓶が入っていた、中には赤色の液体が入っている。
これは、まさか...。
「なぁ千鶴、こんなのが入ってたんだけど」
「ん?それは、ポーションか?」
「やっぱりそう思う?」
「あぁ、その瓶にその色の液体、間違いなく体力回復ポーションだろう」
やっぱりポーションかこれ、俺も写真で見たことあったからなんとなくそうじゃないかとは思っていた。
後は確かポーションにもランクがあるらしいから、これがどのランクかが気になるな。
《鑑定・・・宝物名:回復促進薬
促進箇所:体力
ランク:F》
おふ、またスキルさんの鑑定が発動した。
そうか、これFランクの回復ポーションなのか。
確かFランクでも擦り傷や打撲、軽度の火傷の回復は出来たはずだ。
それも飲んだ瞬間瞬時に回復するので、Fランクポーションであっても数万で取引されてたはずだ。
ヤバいな俺のスキル...。
「千鶴、これFランクの回復ポーションだってさ」
「それもスキルが教えてくれたのか?」
「あぁ」
「そうか...」
そう答えると、千鶴は何かを考えるような顔をしていた。
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