スキルAIを獲得したけど、なんだか様子がおかしい
井の中の水
第1話 朝食を食べながら
朝、朝食を食べながら寝ぼけた頭でボーっとしていると一つのニュースが流れた。
『天心百花がまたしてもダンジョンを攻略しました!』
「ん?」
聞き覚えのあるクラン名が聞こえたのでニュースの方を見てみると、これまた見覚えのある人物がそこには映っていた。
『今回の攻略を指揮した千鶴さんにお話しを聞きたいと思います!』
「お、
黒髪ロングで少しキツイ目をした美人、俺の幼馴染でもある杠葉千鶴である。
大手のクランに所属している事は聞いていたが、まさか今回の攻略を指揮してるとは思ってなかった。
随分と出世してるな~と眺める。
『まずはおめでとうございます。今回の攻略はどうでしたか?』
『ありがとうございます。そうですね、チームに優秀な人が多く割と簡単な攻略でした』
『流石天心百花の皆さんです!』
「凄いな~」
俺も昔はダンジョンを攻略する探索者を目指していたが、残念ながらスキルを授かることが出来なかったのでその夢は閉ざされてしまった。
その代わりと言ってはなんだが千鶴はかなり強力なスキルをゲットしたらしく、あれよあれよという間にトップクランに所属していた。
当時はかなり羨ましいと言った気持ちがあったが貰えなかったものは仕方がないので家業を手伝うことにした思い出がある。
『次のダンジョン攻略の予定などは立っているのでしょうか?』
『簡単な攻略とは言いましたが、疲労も溜まっているので私たちはしばらくはゆっくりするつもりです。まぁ他のチームが攻略に行くかも知れませんが』
『そうなんですね!これからも天心百花の活躍に期待しています!』
『ありがとうございます』
千鶴がそう言った所でインタビューが終了した。
そんなニュースを眺めながらみそ汁を飲んでいると父さんが話しかけてきた。
「なぁ
「ん~、千鶴も忙しそうにしてるしボチボチかな?」
「そうだよな~お前と違って千鶴ちゃんは忙しそうだもんな~」
「うぐっ、まぁ俺も道場で忙しいし...」
昔は道場を手伝ってほしいとよく言っていた父であるが、手伝いだした途端これだ。
実際千鶴に比べれば俺の忙しさなんてたかが知れてるのであまり強く言い返すことも出来ない。
こういう時はさっさと朝食を食べて道場に避難するに限るので手早く食べていく。
「ごちそうさま、じゃあ俺は道場に行ってるから」
「おう、今日もよろしくな」
うちは代々舞鎖流という武術を教える道場を開いている。
門下生もそこそこの数が居るので食べるのには困らない程度の収入を得ていた。
俺も幼い頃から舞鎖流を学んでおり、探索者になる夢が敗れてからはこの道場の師範代として門下生に教えていた。
胴着に着替えた後、道場へ向かうと既に何人かの門下生の姿があった。
「あ、おはようございます師範代!」
「あぁ、おはよう」
「今日のダンジョンニュース見ましたか?」
「見たぞ、千鶴が映ってたからビックリしたよ」
「そうなんですよ!凄いですよね千鶴さん」
門下生から挨拶されたのでそれに返すと、ニュースの話題になった。
どうやら彼らもちょうど見ていたらしく、少しその話題で盛り上がる。
千鶴はたまにこの道場に顔を出すので門下生の間でも顔を知られていた。
「お前らは探索者にはならないのか?」
「僕は高校を卒業したらダンジョンに行ってみようと思ってます!」
「俺もです!」
「そっか、まぁ気を付けてな」
この世界にダンジョンが現れて五十年、ダンジョンは既にどの産業にも欠かせない存在になっている。
ダンジョンからは色々な素材が取れるので、様々な分野で活用されている。
そのため、ダンジョンに潜る事が許可されている探索者は人気な職業だ。
小学校のなりたい職業ランキングでも毎年一位になっている。
探索者になるための条件だが、これは結構緩くてスキルを持っているか持っていないかで区別される。
まぁ潜る前に講習とか色々あるのだが、スキルを持っていれば誰でもその講習を受けることが出来る。
そう、スキルを持っていれば...。
俺たち人類はダンジョンに入ることで一つだけスキルを獲得することが出来る。
この時獲得できるスキルは人によってバラバラで、何が基準になっているのかなど未だに解明されていない。
俺も千鶴と探索者になろうという話しをして二人でダンジョンに潜ったのだが、俺だけ何故かスキルを獲得することが出来なかった。
これは極稀に起きる現象らしくて、世界でも数は少ないがスキルを獲得できなかった例が報告されている。
あの時はかなりショックを受けたし、千鶴も悲しそうな顔をしていた。
千鶴も最初は俺が探索者にならないなら自分もならないと言っていたのだが、そこは俺が説得をして千鶴は探索者になり今に至る。
いや~、あの時の説得は本当に大変だった。
「お、そろそろ時間か。じゃあ今日の稽古を始めるぞ~」
「「よろしくお願いします!」」
そんな昔の事を思い出してるといい時間になっていたので稽古を始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます