第3話 決意のために始めること
家族が去り、一人になった部屋で俺は前世の姉達の話を思い出していた。
この世界はやはり前世の姉達がプレイしていた乙女ゲームのようだ。
というのも、俺がカーディナル王国の第二王子のヴァーミリオン・エクリュ・カーディナルで、顔も聞いていたというかゲーム画面で見たヴァーミリオンがそのまま小さくなった顔をしていたからだ。髪の色も紅色だった。少し違うのが目の色がゲームでは両目とも銀色だったのが、鏡を見ると右目が金色、左目が銀色になっていることくらいだが。
他にも兄のセヴィリアン・フェズ・カーディナルもゲームに出てくる。ゲームでは国王になっているが、先程見た兄の容姿もそのまま小さくなったセヴィリアンだった。
ゲーム内ではヴァーミリオンは十五歳から十八歳を魔法学園で過ごす。
その間にヒロインとヴァーミリオン含む攻略対象キャラが恋愛をしたり、国の危機とかを救ったりするらしい。俺がプレイした訳ではないので、前世の姉達の話だとだ。
「……ということは、前世の姉弟、最推しのウィステリアちゃんにも今後出会う……?」
言葉に出して、ドキドキしてきた。前世の姉弟のアイドルで天使のウィステリアちゃんと出会うなら、ヒロインになんて目もくれない。
何より婚約者はヴァーミリオン。つまり、今の俺。
むしろ、ウィステリアちゃんを一生推すというか、俺が幸せにする。
一瞬で俺の今世の人生での目標が決まる。
そのためにはどうするか、俺は考え、閃いた。
「決意したことのために、まずレベル上げをしよう」
レベルを上げることで、悲劇が食い止められる。
その最初の悲劇が、国王夫妻襲撃事件。
ゲームでは過去の出来事として語られるだけだが、ヴァーミリオンとセヴィリアンにとって、衝撃的でその後の人生を狂わす最初の悲劇。
襲撃事件で国王夫妻は八歳のヴァーミリオンの目の前で命を落とした。宰相を含む他の重要な役職の貴族達も。
犯人は実行犯のみしか捕らえられず、黒幕はその時は見つからなかった。後々、ヒロインと共に証拠を掴んで黒幕を見つけるのだが。
王家はセヴィリアンとヴァーミリオンのみとなり、国王は当時十六歳だったセヴィリアンが継ぐ。
その悲劇のせいで、セヴィリアンはヴァーミリオンに両親を目の前で死なせてしまったこと、自分はもらえたが、弟がもらえるはずだった両親の愛情を八歳で止めてしまった負い目を感じ、何でも許すようになった。何でも許す、猫かわいがりをしてくる兄のおかげでヴァーミリオンはワガママ放題になった。そして、そのワガママでヒロインと一緒にウィステリアちゃんを断罪する。
ウィステリアちゃんを断罪させないためにも、今世の両親を襲撃事件から救い、そのまま国王のままでいて欲しい。
襲撃事件に巻き込まれた人の中に、ウィステリアちゃんのお父さんも命を落としているのだから。
「俺が今三歳で、ヴァーミリオンが八歳の時に起きたことだから、あと五年」
五年あるとはいえ、時間は有限。
出来ることは何でも始めて、全て収めておきたい。
前世の時の俺と違って、今世は動けるのだから。
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