オオカミ副隊長は番いを口説きたい

すず

第1話 プロローグ

 エルトーラ王国──周囲を大国に囲まれた小さな国。面積は小さくとも、青々とした緑に美しい花々が咲き誇る自然豊かな国であった。


 そんなエルトーラ王国には、獣人族という種族が存在している。


 高い身体能力を有し、祖である動物への獣化じゅうか能力を持つ種族だ。犬や猫、鳥やウサギなど、祖によってその特性は大きく異なる。聴覚に優れていたり、夜目が利いたり、腕力や脚力が秀でていたり──いずれにせよ、人族ひとぞくにはない卓越した能力を持っていた。


 そして、このエルトーラ王国には、獣人族だけで構成される特務隊という国家機関がある。この国の建国当初からある歴史ある隊だ。その圧倒的な強さは、創設当時から周囲の国々に名を馳せるほどであった。彼らがいてくれたからこそ、小国のエルトーラ王国が他国の侵略から生き延びてこれたとも言える。


 強く麗しい獣人族。そんな彼らとの恋を夢見るものは数多くいる。


 獣人族との恋愛──それは、決して甘く蕩けるようなものだけではない。「番い」以外を愛さない獣人族の愛は、とてつもなく一途で重いのだ。


 後に彼女はこう語る。


「彼らは狙った獲物は決して逃さない。辞退など意味がない」と。

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