【完結】男を知らないと馬鹿にされたので知り合ったばかりの男と一夜を共にしたら実は相手が王子で求婚されてしまいました

新川ねこ

第1話 未経験

「十九歳にもなって男性経験ないなんてお姉ちゃんどうかしてるよ」


 小柄で華奢な体に小さい顔、誰もが羨むような美貌を持つキャサリンはその綺麗な大きな瞳に姉のマリーを映しながらそう言った。


「だってキャサリン、それって普通結婚してからするものでしょ?」


 妹の奔放な発言に困惑しながらマリーは反論した。


「そんなことないよ。みんなしてるよ。でしょ?」


 キャサリンは皆に同意を求めた。マリーとその友人たちのお茶会にキャサリンは半ば強引に参加している立場のはずが、気付いたらもう会話の主導権を握っている。


「当たり前じゃん。それに関してはマリーが遅すぎ。性に厳しい聖王教会の信徒でもないくせに」


「私たちの東聖教会は食と性に関してだけはゆるいもんね」


 マリーの友人たちは次々にキャサリンの言うことに同意をし、マリーを困らせている。


 良く言えば『いじられ役』、悪く言えば『いじめられっこ』のマリーは妹の乱入でいつも以上に居心地の悪さを感じていた。


「でも……やっぱり私はまだしなくてもいいかな。せめて好きな人が出来てから」


 マリーは再度妹の発言に反発した。


「まぁ、お姉ちゃんの場合はしないんじゃなくても出来ないんだろうけどね。お姉ちゃんに好きな人が出来ても向こうが手を出して来ないと思う。顔は私と姉妹なだけあって多少可愛いけどお姉ちゃんみたいにつまらない人には男が寄り付かないよ」


「マリーは許嫁がいるわけでもないし十年先も男出来なさそう。そもそもマリーは貴族っぽくないのがねー。服も地味だしパーティもいつも参加しないし、参加しても端っこにいるだけだもん」


「そうよ。しかも平民街が好きなんていう変な趣味まであるなんて男は近寄りたくないわよ」


 結局お茶会の大半はこの話題で盛り上がった。もちろんマリーを除いて。マリーは友人と妹から次々と浴びせられるアドバイスを装った誹謗中傷と馬鹿にした笑い声にうんざりしていた。


(私だって興味がないわけじゃない……でも好きな人なんていないんだもの)



◇◇◇



 一年が経ちマリーは二十歳になっていた。皆が言うことが正しいかのようにこの一年男との浮いた話は皆無だった。その間もマリーは友人や妹に馬鹿にされ続けていた。

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