第13話
自分の所為で王位継承権が与えられない。
キャロルは、意味が分からなかった。
ディビッドの一言の意味も分からない。
自分の思い通りに事が進まずイラつくキャロルは、先程までデイビッドに見惚れていた人物とは思えないほど、今は醜悪な表情で睨み付けている。
だがカーネルにはわかっていた。
金と権力にしか興味がないこの女に、例え末端であっても権力を与えてしまえばどうなるのかくらい。
ライラに王位継承権なんて、笑わせる。
貴族令嬢としてのマナーすら未だに身に付く事なく、外に出す事も憚られる愚かな娘。
キャロルに至っては、侯爵夫人としてさえも務まらず、ただ浪費する事しか頭にない癇癪持ち。
我が侯爵家に泥を塗る事しかしない二人なのだ。
もっと早くに手を打っていれば・・・
現実から目を背け、仕事に逃げこんで取り返しのつかない事態までになってしまったのは自分の所為だと言いつつも、相手に対しての怨み言しか出てこない。
自分達の事しか考えられないこの夫婦は、ある意味お似合いなのかもしれない。
そんな二人を変わらず冷めた目で見つめるディビッドは、淡々と事実を述べる。
「他国とはいえ友好国の王族に手を上げた事実は、国際問題となる。ましてや、家を飛び出した娘を探そうともしない。
王族だとか家族だとかの前に、人として問題だ。そんな人間に高貴で責任のある権力を渡すわけがないだろう」
淡々と語る美貌の公爵。その顔には一切の感情もなく、まるで作り物の様に冷たい。
まだ納得できないようなキャロルを尻目に、傍に立つ執事に合図を出す。
少ししてから、執事と共にエドワルドとユスティアが入ってきた。
行方の分からなかった娘の登場に、呆然とするカーネル。
カーネルはユスティアが無事だった事に安堵し、キャロルはユスティアではなくエドワルドに目を奪われていた。
不快な視線に顔を顰めたエドワルドは、わざとユスティアの腰に手をまわし見せつける様にエスコートをし、ディビッドの隣に腰を下ろした。
カーネルはユスティアの姿を見て安堵したと共に、苦しそうに顔を歪めた。
というのも、頭には包帯を巻き、頬には湿布。口の端は薄い紫色の痣が見て取れる。
実の所、頭の包帯は既に必要ないのだが、少し大げさに見せる為に今だけ巻いてきた。
頬の湿布も必要ないのだが、まだ痣が残っている。
本来それを見せれば痛々しさも倍増なのだろうが、エドワルドが反対したのだ。
とにかく、彼等がしてしまった事の重大さをわからせればいいのだから。
そんな事など知らないカーネルは、心配そうな眼差しを向けては来るが、労わりや謝罪の言葉を発することは無い。
そしてキャロルはというと、若く美しいエドワルドに釘付けで、ユスティアの存在を認識しているのかすら怪しい。
目の前の二人の事情など丸っと無視し、ディビッドは変わらず冷たい声色で二人を紹介する。
「私の息子のエドワルドが、暴力を振るわれ逃げてきたユスティア嬢を保護したのだ」
そこで初めて、いたのか・・・と言う顔で、キャロルはユスティアを見た。
そして鬼のような形相でユスティア睨み付けたかと思うと、口汚く罵り始めた。
ここがどこなのかもお構いなし。はたして、自分の立場をわかっているのか。
わかっていないからこそ、何を言っても許されるのだと思っているのだろう。
「お前っ・・・・返ってこないと思ったらこんなところに!これ見よがしに包帯なんて巻いて・・・いい加減私達に迷惑をかけるのは止めなさい!」
ディビッドは、コイツ何を言っているんだ?と無表情のまま考える。
ユスティアは、、いつもの事だとスンとした表情で聞き流す。
エドワルドはただ、ぶっ殺す・・・・と呪文の様に心の中で唱え始める。
カーネルだけは、あぁ・・・終わった・・・と目を閉じた。
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